2020/05/17 導関数・不定積分等のラプラス変換

本日のお題

ラプラス変換について教えてください
制御工学 の授業(ビデオ配信)で,導関数,不定積分,単位インパルス関数のラプラス変換が出てきたのですが,ビデオを見ていてもよく分かりませんでした
これらについて,分かりやすく説明してください

承知しました

コロナの影響で,現在,本学ではオンライン授業を実施しています
基本は,ビデオ配信です
ネットワークの状態が悪くなったとき授業を視聴できない学生さんがいるといけないということで,Live 配信ではなくオンデマンドで配信をしています
ところが,何につけても人とは違うことをやりたい私は,web会議(Microsoft Teams)を使ってリアルタイム授業をやっております
使用教材は,このサイトのページを使いますから,聞き逃してもいつでも学習できます

とまぁ,そのようなことはどうでもイイことですね
要は,全国の大学生の皆さんが,苦労して勉強をしているということです
早速,この学生さんの質問にお答えしましょう

部分積分の復習

できるだけ丁寧に説明しますね,ここからイキマス

部分積分の公式は次のとおりでした \[ \int u'(t)\,v(t)\,dt = u(t)\,v(t) - \int\,u(t)\,v'(t)\,dt \\ \int_a^b u'(t)\,v(t)\,dt = \Big[\,u(t)\,v(t)\,\Big]_a^b - \int_a^b \,u(t)\,v'(t)\,dt \\ \]

どのようなときに用いたか? というと・・・

\[\begin{eqnarray} \int x \,\sin x \, dx &=& \int x\,\left(-\cos x\right)'\,dx \\ &=& -x \,\cos x - \int (x)'\, \left(-\cos x\right) \, dx \\ &=& -x \, \cos x + \int \cos x \, dx \\ &=& -x \, \cos x + \sin x + C \end{eqnarray}\]

この例で,思い出していただけたでしょうか? \(-\!\!\!-\!\!\!-\) って,いくら何でも,ここから復習することもないのですが,対面での説明ではないので,途中の変形に何を用いているかが分からなくなるといけないと思い,念のために書いておきました
部分積分がそこら中に出てきますからね

ラプラス変換の定義

\[\mathcal{L}\left[\,f(t)\,\right](s) = \int_0^{\infty}\,f(t) \, e^{-st} \, dt \tag{1}\]

実際にラプラス変換を使うときには,ラプラス変換表を用います(といっても,やっている内に代表的な関数については覚えてしまうのですが・・・)ので,この計算を行うことはほとんどありません
ただし,今回の質問では,この計算を施す必要がありますから,これも例を一つだけ計算しておきましょう \[\begin{eqnarray} \mathcal{L}\big[\,e^{\omega t}\,\big](s) &=& \int_0^{\infty}\,e^{\omega t}\,e^{-st} \, dt \\ &=& \int e^{(\omega - s)t}\,dt \\ &=& \left[\,\frac{1}{\omega - s} \, e^{(\omega - s)t}\,\right]_0^{\infty} \\ \end{eqnarray}\] さて,この広義積分ですが,常に収束する訳ではありません
都合よく,収束する部分だけを用いる … と考えておいて,工学に利用するときには,問題ありません
したがって,上の例では,\(s > \omega\) の場合だけを考えておけば良いのです
すると \(\displaystyle \mathcal{L}\big[e^{\omega t}\big](s) = \frac{1}{s - \omega}\) となります

導関数のラプラス変換

さぁ,それではご質問の本題に入りましょう
最初は,導関数のラプラス変換です

\[\mathcal{L}\left[\,\frac{d}{dt}f(t)\,\right](s) = s\,F(s) - f(0) \tag{2}\]

部分積分を使うので,\(\displaystyle \frac{d}{dt}f(t)\)\(f'(t)\) と書いた方が分かりやすいと思いますから,\(f'(t)\) を用いることとします
また,式 \((2)\) の中で現れる \(F(s)\)\(\mathcal{L}\big[\,f(t)\,\big](s)\) のことです

\((1)\) の定義(緑色で書きます)から計算をしていきます
途中,部分積分を用いますが,その部分は朱書しておきます \[\begin{eqnarray} \mathcal{L}\left[\,\frac{d}{dt}f(t)\,\right](s) &=& \mathcal{L}\left[\,f'(t)\,\right](s) \\ &=& \textcolor{#00C000}{\int_0^{\infty} f'(t) \, e^{-st}\,dt} \\ &=& \textcolor{red}{\Big[\,f(t)\,e^{-st}\,\Big]_0^{\infty} - \int_0^{\infty}f(t)\,\left(e^{-st}\right)'\,dt} \\ &=& f(\infty)\cdot e^{-\infty} - f(0)\cdot e^0 - \int_0^{\infty}f(t) \cdot \left(-s\cdot e^{-st}\right)\,dt \end{eqnarray}\] ここで,いい加減な処理をします \(-\!\!\!-\!\!\!-\) とか何とか言っちゃって,この書き方自体が数学の教員としてはあるまじきもの(笑)
指数関数は最強の関数,つまり,\(\infty\) に発散する \(f(\infty) \to \infty\) であるような関数をもってきても,その発散のスピードは大抵の場合 \(e^{-\infty} \to 0\) が収束するスピードに敵わないのです
だから \(f(\infty)\) が頑張って大きくなろうとしても,\(e^{-\infty}\) はそのようなことにお構いなしに \(0\) に近づいてしまって,\(f(\infty)\cdot e^{-\infty} \to 0\) になっちゃうのです
具体的な関数を扱う場合は,微積分学で学んだロピタルの定理でほとんど示すことができます
\[\begin{eqnarray} \mathcal{L}\left[\,\frac{d}{dt}f(t)\,\right](s) &=& -f(0)\cdot 1 + s\textcolor{#00C000}{\int_0^{\infty}f(t)\,e^{-st}\,dt} \\ &=& -f(0) + s\,\mathcal{L}\big[\,f(t)\,\big](s) \\ &=& s\,F(s) - f(0) \end{eqnarray}\] 例えば,\(f(t) = \sin t\) とすると \(f'(t) = \cos t\)\[\mathcal{L}\big[\,\sin t\,\big](s) = \frac{1}{s^2 + 1}\ ,\quad \mathcal{L}\big[\,\cos t\,\big](s) = \frac{s}{s^2 + 1}\] であることは,ラプラス変換表から分かります \[\begin{eqnarray} \mathcal{L}\big[\,\cos t\,\big](s) &=& \mathcal{L}\big[\,\left(\sin t\right)'\,\big](s) \\ &=& \textcolor{blue}{s\mathcal{L}\big[\,\sin t\,\big] - \sin 0} \\ &=& s\cdot\frac{1}{s^2 + 1} - 0 \\ &=& \frac{s}{s^2 + 1}\ \textcolor{gray}{\left( = \mathcal{L}\big[\,\cos t\,\big](s)\right)} \end{eqnarray}\] となりますね
ブルーの部分\((2)\) を使いました,納得できましたか?

不定積分のラプラス変換

次は,不定積分 \(\displaystyle \int_0^t f(t)\,dt\) のラプラス変換です

\[\mathcal{L}\left[\,\int_0^t f(t)\,dt\,\right](s) = \frac{1}{s}\,F(s) \tag{3}\]

この説明には,微積分学の基本定理 \[\frac{d}{dt}\int_0^t f(t)\,dt = \left(\int_0^t f(t)\,dt\right)' = f(t)\] を用いますが,これは,積分したものを微分すれば元の関数に戻っちゃうでしょ・・・というものです
一見当たり前のようですが,連続関数についてだけ成り立つものです
もう一つ,ここでもやはり部分積分を使いますよ \[\begin{eqnarray} \mathcal{L}\left[\,\int_0^t f(t)\,dt\,\right](s) &=& \int_0^{\infty}\left(\int_0^t f(t)\,dt\right)\cdot e^{-st}\,dt \\ &=& \int_0^{\infty}\left(\int_0^t f(t)\,dt\right)\cdot \textcolor{red}{\left(\frac{1}{-s}\cdot e^{-st}\right)'}\,dt \\ &=& \textcolor{red}{-\frac{1}{s}\left[\,\left(\int_0^t f(t)\,dt\right)\cdot e^{-st}\,\right]_0^{\infty}}\\ && \hspace{2em} \textcolor{red}{+ \frac{1}{s}\int_0^{\infty}\left(\int_0^t f(t)\,dt\right)'\cdot e^{-st}\,dt} \\ &=& -\frac{1}{s}\left\{\left(\int_0^{\infty} f(t)\,dt\right)\cdot e^{-\infty} - 0 \right\}\\ && \hspace{2em} + \frac{1}{s}\,\textcolor{#00C000}{\int_0^{\infty} f(t)\,e^{-st}\,dt} \\ &=& -\frac{1}{s}\left(0 - 0\right) + \frac{1}{s}\,\mathcal{L}\big[\,f(t)\,\big](s) \\ &=& \frac{1}{s}F(s) \end{eqnarray}\] これも \(\mathcal{L}\big[\cos t\big](s)\) で確認してみましょう \[\begin{eqnarray} \mathcal{L}\big[\,\cos t\,\big](s) &=& \mathcal{L}\left[\,\int_0^t \left(-\sin t\right)\,dt + 1\,\right](s) \\ &=& \mathcal{L}\left[\,\int_0^t \left(-\sin t\right)\,dt\,\right](s) + \mathcal{L}\big[\,1\,\big](s) \\ &=& \textcolor{blue}{\frac{1}{s}\mathcal{L}\big[-\sin t\big] + \frac{1}{s}} \\ &=& -\frac{1}{s}\cdot \frac{1}{s^2 + 1} + \frac{1}{s}\\ &=& \frac{-1 + (s^2 + 1)}{s(s^2 + 1)} \\ &=& \frac{s}{s^2 + 1}\ \textcolor{gray}{\left( = \mathcal{L}\big[\,\cos t\,\big](s)\right)} \end{eqnarray}\] 宜しいですか?

単位インパルス関数のラプラス変換

最後は,単位インパルス関数ですね
単位インパルス関数は,別名「ディラックのデルタ関数」とも言います
この関数について知らなければ話しになりませんので,ここから説明します \[\delta(t) = \left\{\begin{array}{cc} \infty & (x = 0) \\ 0 & (x \ne 0) \end{array}\right.\quad,\quad \int_{-\infty}^{\infty}\delta(t)\,dt = 1\] を満たす関数 \(\delta(t)\) です \(-\!\!\!-\!\!\!-\) と言っても,ナンジャそれは? ですね

まず,このような関数 \(f(t)\) を考えます \[f(t) = \left\{\begin{array}{cc} \displaystyle \frac{1}{\epsilon} & (0 \leqq t \leqq \epsilon) \\[8px] 0 & (\mbox{otherwise}) \end{array}\right.\] 関数 \(f(t)\) のグラフは次のようになります

\(t\)

\(y\)

\(\epsilon\)

\(\displaystyle \frac{1}{\epsilon}\)

青く塗られた部分の面積は \(\displaystyle \epsilon \times \frac{1}{\epsilon} = 1\) です
つまり \(\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty}\delta(t)\,dt = 1\) になるということです
ここで,\(\epsilon \to 0\) の極限をとったときに出来上がる関数が \(\delta(t)\) です

それでは,単位インパルス関数のラプラス変換を求めましょう

注意することは,\(0 \leqq t \leqq \epsilon\) 以外の部分では,関数の値が \(0\) であるということです
ラプラス変換を計算するに当って,\(0 \leqq t \leqq \epsilon\) の範囲だけ \(\displaystyle f(t) = \frac{1}{\epsilon}\) を積分すれば良い・・・ということなんですね \[\begin{eqnarray} \mathcal{L}\big[\,\delta(x)\,\big](s) &=& \int_0^{\infty}\delta(t)\,e^{-st}\,dt \\ &=& \lim_{\epsilon \to +0} \int_0^{\epsilon} \frac{1}{\epsilon}\cdot e^{-st} \, dt \\ &=& \lim_{\epsilon \to +0} \left(\frac{1}{\epsilon}\int_0^{\epsilon}e^{-st}\,dt \right) \\ &=& \lim_{\epsilon \to +0} \left(\frac{1}{\epsilon}\left[\,\frac{1}{-s}\,e^{-st}\,\right]_0^{\epsilon}\right) \\ &=& -\frac{1}{s} \textcolor{orange}{\lim_{\epsilon \to 0}\frac{e^{-s\epsilon} - e^0}{\epsilon}} \\ &=& -\frac{1}{s}\cdot(-s) \\ &=& 1 \end{eqnarray}\] オレンジ色の極限の計算は,微分係数の定義を用いても,ロピタルの定理を用いても(本質的には同じですね)イイでしょう

お分かりいただけたでしょうか?

以上で,ミッション完了で~す

Last modified: Tuesday, 11 August 2020, 3:21 PM