本日のお題

例えば雨滴のように,速さに比例する抵抗を受けながら落下する物体の運動について,どのように考えたらよいか? 教えてください。

雨が降っているとき,地上付近での雨滴の振る舞いはどのようになっているでしょうか?

等速運動です。

へっ? 等速? 雨滴にも重力がかかるでしょ? だったら,加速度のある運動でしょう!! と考えても無理のないところです。

物体の重い軽いに関係なく落下速度は同じ・・・というのは空気などの抵抗を無視できる場合のお話しです。

雨滴のように軽くしかも上空高くから落ちてくる場合には,空気抵抗が無視することのできない影響を与えます。そして,その影響 ― つまり抵抗の大きさ ― は雨滴の速度に比例することが分かっています。この比例定数を \(-k\) で表し,落下中の雨滴にかかる力を図示します。ただし,風などのその他の影響はないものとします。

落下しはじめは,雨滴の下向きの速度が大きくなく空気抵抗も小さいので,重力が勝って雨滴はどんどん加速していきます。ところが,速度が上がっていくと,あるところで重力と空気抵抗が釣り合って,双方が打ち消し合う状態,つまり等速になります。等速になった速度を 終端速度 といいます。それでは・・・

雨滴の終端速度を求めましょう!!

上の図より,雨滴の運動方程式は\[m\ddot{x} = mg - k\dot{x}\tag{1}\]となります。この微分方程式を解けば,雨滴の運動を求めることができます。

解くべき微分方程式は線形2階の方程式ですが,これから求めたいのものが終端速度なので,速度 \(v\) の微分方程式に書き換えましょう。\[\ddot{x} = \dot{v}\mbox{,}\dot{x} = v\]を微分方程式 (1) に代入すると,次の式が得られます。\[\dot{v} = g - \frac{k}{m}v\tag{2}\]この式は,微分方程式を解き慣れている方ならば,積分因子を用いる方法を思い浮かべるかも知れませんが,\(g\) が定数なので変数の置き換えで済みます。

\(\displaystyle u = v - \frac{mg}{k}\) とすると,両辺を時刻 \(t\) で微分して \(\dot{u} = \dot{v}\) となります。これら2つの式を (2) に代入して\[\begin{array}{c} \displaystyle \dot{u} = g - \frac{k}{m}\left(u + \frac{mg}{k}\right) \\ \displaystyle \dot{u} = g - \frac{k}{m}\,u + g \\ \displaystyle \dot{u} = -\frac{k}{m}\,u \\ \displaystyle \mbox{∴}\quad \frac{\dot{u}}{u} = -\frac{k}{m} \end{array}\]これで,両辺が積分できる形になりました。\(t\) で積分しましょう。\[\begin{array}[t]{c} \displaystyle \int \frac{\dot{u}}{u}\,dt = -\int \frac{k}{m}\,dt \\ \displaystyle \log |\,u\,| = -\frac{k}{m}\,t + C \\ \displaystyle |\,u\,| = e^{-\frac{k}{m}\,t + C} = e^C \cdot e^{-\frac{k}{m}\,t} \\ \mbox{∴}\quad u = \pm e^{C} \cdot e^{-\frac{k}{m}\,t} \end{array}\]ここで \(\pm e^C\) を改めて \(C\) と書いて,さらに \(u\)\(\displaystyle v - \frac{mg}{k}\) に戻せば\[\begin{array}[t]{c} \displaystyle v - \frac{mg}{k} = Ce^{-\frac{k}{m}\,t} \\ \displaystyle \mbox{∴} \quad v = \frac{mg}{k} + Ce^{-\frac{k}{m}\,t} \end{array}\]初期条件を \(t = 0\)\(v = 0\) と考えれば \(\displaystyle C = -\frac{mg}{k}\) ですから\[v = \frac{mg}{k}\left(1 - e^{-\frac{k}{m}\,t}\right)\]これで \(v\) の式を求めることができました。ここで \(t \to \infty\) のときの \(v\) の極限をとりましょう。\[\lim_{t \to \infty} v = \lim_{t \to \infty} \frac{mg}{k}\left(1 - e^{-\frac{k}{m}\,t}\right) = \frac{mg}{k}\]以上から,雨滴の終端速度は,雨滴の質量 \(m\) と空気抵抗の比例定数 \(k\) を用いて \(\displaystyle \frac{mg}{k}\) と表されることが分かりました。

最終更新日時: 2022年 05月 10日(火曜日) 18:29