2019/01/26 平行軸の定理

本日のお題

下の図のような厚さと密度が一様で質量が \(M\) の板がある。この板の重心周りの慣性モーメントを求めよ。

このような課題が出ました。どのように解けば良いでしょうか?

\(a\)

\(2a\)

\(2a\)

\(2a\)

\(\frac{1}{2}a\)

\(\frac{1}{2}a\)

\(a\)

\(a\)

これは,工業力学の課題のようですね。この図形はよ~く見ると・・・

辺の長さが \(2a \times a\) の長方形が2個組み合わされたものです。したがって,それぞれの長方形の慣性モーメントを求めて,それらを加えれば全体の慣性モーメントを求めることができます。

問題は,求めるべき慣性モーメントが長方形の重心周りのものでないということです。重心以外の点を回転の中心にした慣性モーメントを求めるためには 平行軸の定理 を使います。

平行軸の定理

質量 \(M\),重心の周りの慣性モーメントが \(I_G\) である剛体について,重心から \(d\) だけ外れた点の周りの慣性モーメントを \(I\) とすると\[I = I_G + Md^2\]が成り立つ。

これはとても便利な定理で,ある物体の質量と重心周りの慣性モーメントが分かっていれば,重心以外の点の周りの慣性モーメントも,回転の中心が重心からどれだけ離れているかで求められるというものです。

それでは,平行軸の定理が成り立つことを長方形板の場合について確認しましょう。

\(x\)

\(y\)

\(x\)

\(\Delta x\)

\(y\)

\(\Delta y\)

\(\sqrt{(x - x_d)^2 + (y - y_d)^2}\)

\(\displaystyle \frac{a}{2}\)

\(\displaystyle -\frac{a}{2}\)

\(\displaystyle \frac{b}{2}\)

\(\displaystyle -\frac{b}{2}\)

\(\mbox{P}\left(x_d,\ y_d\right)\)

前々回,長方形板の重心周りの慣性モーメントを求めたことを思い出しましょう。

上の図のように回転の中心を点 \(\mbox{P}\left(x_d,\ y_d\right)\) であるとすると,長方形板の重心は原点 \(\mbox{O}\) ですから,重心と回転の中心の距離 \(d\) は次のようになります。\[d = \sqrt{x_d\!^2 + y_d\!^2} \tag{1}\]長方形の単位面積当たりの質量を \(\rho\) として,点 \(\mbox{P}\) の周りの慣性モーメント \(I\) を積分の計算で求めましょう。\[\begin{eqnarray} I &=& \int_{-\frac{b}{2}}^{\frac{b}{2}} \int_{-\frac{a}{2}}^{\frac{a}{2}} \rho\left\{(x - x_d)^2 + (y - y_d)^2\right\}\,dxdy \\ &=& \rho\int_{-\frac{b}{2}}^{\frac{b}{a}} \int_{-\frac{a}{2}}^{\frac{a}{2}} \left\{(x^2 + y^2) + (x_d\!^2 + y_d\!^2) - 2(x_d x + y_d y)\right\}\,dxdy\\ &=& \rho\int_{-\frac{b}{2}}^{\frac{b}{2}} \int_{-\frac{a}{2}}^{\frac{a}{2}} \left(x^2 + y^2\right)\,dxdy + \rho\left(x_d\!^2 + y_d\!^2\right) \int_{-\frac{b}{2}}^{\frac{b}{2}} \int_{-\frac{a}{2}}^{\frac{a}{2}}dxdy \\ &=& I_G + \rho ab (x_d\!^2 + y_d\!^2) \\ &=& I_G + Md^2 \end{eqnarray}\]

見かけほど難しい計算ではありません。ポイントは\[\int \!\!\! \int x\,dxdy\ \mbox{,}\ \int\!\!\!\int y\,dxdy\]がいずれも \(0\) になるというところです。上の計算では,\(x\)\(y\) が奇関数だからという理由で \(0\) になると考えられますが,長方形の場合ででなくとも ― 積分範囲が \(\displaystyle -\frac{a}{2} \leqq x \leqq \frac{a}{2}\)\(\displaystyle -\frac{b}{2} \leqq y \leqq \frac{b}{2}\) でなくとも ― 重心を原点としているので図形の対称性から \(0\) になることが分かります。

したがって,上で説明したことはどのような形状の剛体に対しても成り立ちます。

それでは,ご質問の問いを解いていきましょう。

まず,回転の中心 ― つまり,この剛体の重心 ― を求めます。下の図で黒色の点は2つの長方形の重心です。2つの長方形は同じ質量ですから,この剛体の重心は2つの黒点の中点(図中の赤色点)にあります。

\(2a\)

\(a\)

\(\displaystyle \frac{3}{2}a\)

\(\displaystyle \frac{3}{4}a\)

\(\displaystyle \frac{3}{4}a\)

2つの黒点の距離は \(\displaystyle \frac{3}{2}a\) ですから,2つの長方形の重心と回転の中心との距離は \(\displaystyle \frac{3}{4}a\) です。

ところで,辺の長さが \(a \times b\) の長方形の重心周りの慣性モーメントは \(\displaystyle \frac{1}{12}M(a^2 + b^2)\) でしたから,1つの長方形について長方形の重心周りの慣性モーメントは \[\frac{1}{12}M\{a^2 + (2a)^2)\} = \frac{5}{12}Ma^2\] です。平行軸の定理を使えば,題意の剛体の慣性モーメントは\[I = \left(\frac{5}{12}Ma^2 + \frac{9}{16}Ma^2 \right) \times 2 = \frac{47}{24}Ma^2 \]

Last modified: Friday, 5 March 2021, 5:28 PM