2020/02/22 保存力

本日のお題

場所の関数として与えられている力(力の場)の3成分を\(F_x\)\(F_y\)\(F_z\)とする。次の問いに答えよ。

1 この力が保存力ならば \[\displaystyle \frac{\partial{F_z}}{\partial{y}} = \frac{\partial{F_y}}{\partial{z}}\ ,\ \frac{\partial{F_x}}{\partial{z}} = \frac{\partial{F_z}}{\partial{x}}\ ,\ \frac{\partial{F_y}}{\partial{x}} = \frac{\partial{F_x}}{\partial{y}} \tag{1}\] が成り立つことを示せ。

2 1では必要条件のみ示したが,\((1)\)\(\boldsymbol{F} = \left(F_x,\ F_y,\ F_z\right)\) が保存力であるための十分条件でもある。このことを用いて,\(r = \sqrt{x^2 + y^2 + z^2}\) とするとき \[F_x = xf(r)\ ,\ F_y = yf(r)\ ,\ F_z = zf(r)\] で与えられる力は保存力かどうか説明せよ。

3 \(\displaystyle U = \frac{C}{r}\)\(C\) は定数)のとき,\(\boldsymbol{F}\) はどのような力か,説明せよ。

この問いについて説明してください。

承知しました。この質問は,一昨日書いた 惑星の運動 と同時にいただいたものです。これ又,ベクトル解析を学んだ方ならば特段の疑問をもつこともないのでしょうが,対象が1年生であったため問いの意味を理解することが難しかったかも知れません。
それにしても,後期は,数学の科目が少ないのでこのような質問をいただくことが多くなります。最近,自分が何の教科の教員かが分からなくなってきます(笑)

それでは1から行きましょう。まず 保存力 について説明します。物を持ち上げるときのことを考えてください。中学校の理科(第1分野)ですでに仕事について学びます。そのとき,ある荷物を上に持ち上げる場合,そのまま持ち上げても,例えば斜面を使ったり滑車を使ったりしても,荷物に及ぼす仕事は変わらないことを学びました。これは,重力場での仕事は,経路によらず荷物があった最初の位置と荷物を運んだ最終的な位置で決まるということです。このように,仕事が経路に寄らないとき,その力を 保存力 といいます。ご質問の皆さんが使っている教科書では,次の式で説明されていました。

保存力

空間の地点 \(\mbox{A}(x_1,\ y_1,\ z_1)\) から \(\mbox{B}(x_2,\ y_2,\ z_2)\) まで行う仕事が,経路に寄らず

\(\displaystyle \boldsymbol{W} = \int_A^B \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r} = U(x_1,\ y_1,\ z_1) - U(x_2,\ y_2,\ z_2) \tag{2}\)

と表されるとき,\(\boldsymbol{F}\) を保存力という。

\((2)\) を使って,\((1)\) を示しましょう。式 \((2)\)\(\boldsymbol{F}\)\(d\boldsymbol{r}\) の間にある「 \(\cdot\) 」,皆さんは気づいていますか? これ,ベクトルの内積なんですね。仕事って内積なんですよ。数学でベクトルを勉強していて,内積って何だろう? と疑問を抱いたことはありませんか? 物理で,仕事は内積で表される量の一例になっています。覚えておいてくださいね。もう一つ付け加えると,この式の \(U\) がポテンシャルです。

さて,式 \((2)\) において,点 \(\mbox{B}\)\((x,\ y,\ z)\) とすると \[\begin{array}{c}\displaystyle \int_A^B \left(F_x,\ F_y,\ F_z\right)\cdot\left(dx,\ dy,\ dz\right) = U(x_1,\ y_1,\ z_1) - U(x,\ y,\ z)\\[2px] \displaystyle \int_A^B\left(F_x\,dx + F_y\,dy + F_z\,dz\right) = U(x_1,\ y_1,\ z_1) - U(x,\ y,\ z) \end{array}\] が成り立ちます。この式を \(x\)\(y\)\(z\) で偏微分します。 \[\displaystyle F_x = -\frac{\partial U}{\partial x},\quad F_y = -\frac{\partial U}{\partial y},\quad F_z = -\frac{\partial U}{\partial z}\] さらに,偏微分を繰り返します。 \[\left\{\begin{array}{lcl} \displaystyle \frac{\partial F_x}{\partial y} = -\frac{\partial^2 U}{\partial x \partial y} &,& \displaystyle \frac{\partial F_x}{\partial z} = -\frac{\partial^2 U}{\partial x \partial z} \\[4px] \displaystyle \frac{\partial F_y}{\partial z} = -\frac{\partial^2 U}{\partial y \partial z} &,& \displaystyle \frac{\partial F_y}{\partial x} = -\frac{\partial^2 U}{\partial y \partial x} \\[4px] \displaystyle \frac{\partial F_z}{\partial x} = -\frac{\partial^2 U}{\partial z \partial x} &,& \displaystyle \frac{\partial F_z}{\partial y} = -\frac{\partial^2 U}{\partial z \partial y} \\[4px] \end{array}\right.\]

力学を教えている先生に確認しました。力は基本的に連続的に変化するものしか扱わないということです。連続関数であれば,偏微分の順序を変えることができます。したがって,次の式が成り立ちます。 \[\left\{\begin{array}{l} \displaystyle \frac{\partial F_z}{\partial y} = \frac{\partial F_y}{\partial z} = -\frac{\partial^2 U}{\partial y \partial z}\\[4px] \displaystyle \frac{\partial F_x}{\partial z} = \frac{\partial F_z}{\partial x} = -\frac{\partial^2 U}{\partial z \partial x}\\[4px] \displaystyle \frac{\partial F_y}{\partial x} = \frac{\partial F_x}{\partial y} = -\frac{\partial^2 U}{\partial x \partial y} \end{array}\right.\]

続いて,2です。これは,\((1)\) が十分条件であると示されていますので,計算をするだけです。 \[\begin{array}{l} \displaystyle \frac{\partial F_z}{\partial y} = zf'(r)\cdot\frac{y}{r} = \frac{yz}{r}f'(r) \\[4px] \displaystyle \frac{\partial F_y}{\partial z} = yf'(r)\cdot\frac{z}{r} = \frac{yz}{r}f'(r) \\[4px] \displaystyle \frac{\partial F_x}{\partial z} = xf'(r)\cdot\frac{z}{r} = \frac{zx}{r}f'(r) \\[4px] \displaystyle \frac{\partial F_z}{\partial x} = zf'(r)\cdot\frac{x}{r} = \frac{zx}{r}f'(r) \\[4px] \displaystyle \frac{\partial F_y}{\partial x} = yf'(r)\cdot\frac{x}{r} = \frac{xy}{r}f'(r) \\[4px] \displaystyle \frac{\partial F_x}{\partial y} = xf'(r)\cdot\frac{y}{r} = \frac{xy}{r}f'(r) \\[4px] \end{array}\] \((1)\) を満たしますので,この力は保存力です。

最後に3です。 \[\displaystyle \frac{\partial U}{\partial x}\begin{array}[t]{l} \displaystyle = -\frac{C}{r^2}\cdot\frac{\partial r}{\partial x}\\[4px] \displaystyle = -\frac{C}{r^2}\cdot\frac{x}{\sqrt{x^2 + y^2 + z^2}}\\[4px] \displaystyle = -\frac{Cx}{r^3} \end{array}\] 同様に \(\displaystyle \frac{\partial U}{\partial y} = -\frac{Cy}{r^3}\)\(\displaystyle \frac{\partial U}{\partial z} = -\frac{Cz}{r^3}\) が成り立つので,\(\displaystyle \boldsymbol{F} = C\left(\frac{x}{r^3},\ \frac{y}{r^3},\ \frac{z}{r^3}\right)\) となって,\(\displaystyle \left|\,\boldsymbol{F}\,\right| = \frac{C}{r^2}\) なので,\(\boldsymbol{F}\) は次のような力になります。

\(C>0\) のとき,原点からの距離の2乗に反比例する斥力
\(C<0\) のとき,原点からの距離の2乗に反比例する引力
\(C=0\) のとき,力は働いていない

以上で,ミッション完了

Last modified: Friday, 5 March 2021, 5:25 PM