2020/02/24 回転座標系

本日のお題

運動方程式が下記の式 \((1)\) で与えられるような回転座標系で,\(x' = a\)\(y' = bt\) の等速度運動をさせるためには,どのような力を与えてやらなければならないか導け。また,\(t = 0\) のときに,その力が \(0\) となるための,\(a\)\(b\) の関係を導け。

\[\left\{\begin{array}{l} m\ddot{x}' = F_{x'} + 2m\omega\dot{y}' + m\omega^2 x' \\ m\ddot{y}' = F_{y'} - 2m\omega\dot{x}' + m\omega^2 y' \end{array}\right.\ \tag{1}\]

この問いの考え方を教えてください。

はい,かしこまりました。と言いつつ,これも又はどこまでどのように答えるべきか? よく分かりません。分からないのですが,実は,私にとってとっても懐かしさを感じる問題です。

教員になった年のこと,地理を担当していた先輩(私より四歳年上で,年齢が近いこともあり親しくしていただきました)が偏西風や貿易風が吹く理由に関して,物理の先生にコリオリの力について質問したことがありました。それを横で聞いていた23歳の私,コリオリの力? となると調べずにいられません。力学関連の本を読んでみると,地球は自転をしているために,地球上のどの地点もその点を中心とした回転運動をしていると考えられる … とか何とか書いてあり,更に???であったという想い出があるのです。
正にその問題ですよね,これって!! 多分 f^^;

問題自体は,書いてあるとおりに立式すれば,三角関数の変形の問題になります。しかし,問いの意味をしっかり理解していただきたいと思いますので,式 \((1)\) について,まずは説明したいと思います。問いの解答は,それからということにいたしましょう。

\(x\)-\(y\) の固定座標系に対して,\(x'\)-\(y'\) という角速度 \(\omega\) で等速回転する回転座標系を考えます。\((x',\ y')\) から \((x,\ y)\) への座標変換は次の行列(線形変換)で表されます。

\[\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\omega t & -\sin\omega t \\ \sin\omega t & \cos\omega t \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix}\]

この式から \(\dot{x}\)\(\dot{y}\)\(\ddot{x}\)\(\ddot{y}\) を求めます。すると, \[\begin{eqnarray} \dot{x} &=& \dot{x'}\cos\omega t - x'\omega\sin\omega t - \dot{y'}\sin\omega t - y'\omega\cos\omega t \\ &=& (\dot{x'} - y'\omega)\cos\omega t - (x'\omega + \dot{y'})\sin\omega t \\[4px] \dot{y} &=& \dot{x'}\sin\omega t + x'\omega\cos\omega t + \dot{y'}\cos\omega t - y'\omega\sin\omega t \\ &=& (\dot{x'} - y'\omega)\sin\omega t + (x'\omega + \dot{y'})\cos\omega t \\[4px] \ddot{x} &=& (\ddot{x'} - \dot{y'}\omega)\cos\omega t - (\dot{x'} - y'\omega)\omega\sin\omega t \\ && \hspace{5em} - (\dot{x'} + \ddot{y'})\sin\omega t - (x'\omega + \dot{y'})\omega\cos\omega t \\ &=& (\ddot{x'} - 2\dot{y'}\omega - x'\omega^2)\cos\omega t - (\ddot{y'} + 2\dot{x'}\omega - y'\omega^2)\sin\omega t\\[4px] \ddot{y} &=& (\ddot{x'} - \dot{y'}\omega)\sin\omega t + (\dot{x'} - y'\omega)\omega\cos\omega t \\ && \hspace{5em} + (\dot{x'} + \ddot{y'})\cos\omega t - (x'\omega + \dot{y'})\omega\sin\omega t \\ &=& (\ddot{x'} - 2\dot{y'}\omega - x'\omega^2)\sin\omega t + (\ddot{y'} + 2\dot{x'}\omega - y'\omega^2)\cos\omega t\\[4px] \end{eqnarray}\] したがって,次の式が成り立ちます。 \[\begin{pmatrix} \ddot{x} \\ \ddot{y} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\omega t & -\sin\omega t \\ \sin\omega t & \cos\omega t \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \ddot{x'} - 2\dot{y'}\omega - x'\omega^2 \\ \ddot{y'} + 2\dot{x'}\omega - y'\omega^2 \end{pmatrix}\] ここで,固定座標系で質点にかかる力を \(\left(F_x,\ F_y\right)\),回転座標系で質点にかかる力を \(\left(F_{x'},\ F_{y'}\right)\) と書けば

\[F_x = m\ddot{x},\quad F_y = m \ddot{y},\quad F_{x'} = m\ddot{x'},\quad F_{y'} = m\ddot{y'}\]

であり,さらに

\[\begin{pmatrix} F_x \\ F_y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\omega t & -\sin\omega t \\ \sin\omega t & \cos\omega t \end{pmatrix}\begin{pmatrix} F_{x'} \\ F_{y'} \end{pmatrix} \tag{2}\]

ですから

\[\left\{\begin{array}{l} F_{x'} = m(\ddot{x'} - 2\dot{y'}\omega - x'\omega^2) \\ F_{y'} = m(\ddot{y'} + 2\dot{x'}\omega - y'\omega^2) \end{array}\right.\]

となります。以上で,問題文で与えられた

\[\left\{\begin{array}{l} m\ddot{x}' = F_{x'} + 2m\omega\dot{y}' + m\omega^2 x' \\ m\ddot{y}' = F_{y'} - 2m\omega\dot{x}' + m\omega^2 y' \end{array}\right.\ \tag{1}\]

の成り立つことが分かりました。微分の計算が多少面倒ですが,決して難しくはありませんね。

さぁ,それでは,ご質問の問いに取り掛かりましょう。

\(x' = a\) より,\(\dot{x}' = 0\)\(\ddot{x}' = 0\)
\(y' = bt\) より,\(\dot{y}' = b\)\(\ddot{y}' = 0\)

となるので,これを式 \((1)\) に代入すると \[F_{x'} = -m\omega(a\omega + 2b)\ ,\ F_{y'} = -bm\omega^2 t\] これを \((2)\) に代入して固定座標系に戻します。

\[\left\{\begin{array}{l} F_x = -m\omega\left\{(a\omega + 2b)\cos\omega t - b\omega t\sin\omega t\right\} \\ F_y = -m\omega\left\{(a\omega + 2b)\sin\omega t + b\omega t\cos\omega t\right\} \\ \end{array}\right.\]

これでも解答にはなっていますが,どのような力であるかが分かりません。それに,上の式を見ると「三角関数の合成をしてくれぇ」と言っているように,私には感じます。\(F_x\)\(F_y\) をそれぞれ \(\cos\)\(\sin\) で合成します。

\[\left\{\begin{array}{l} F_x = -m\omega\sqrt{(a\omega + 2b)^2 + (b\omega t)^2}\cos(\omega t + \varphi) \\ F_y = -m\omega\sqrt{(a\omega + 2b)^2 + (b\omega t)^2}\sin(\omega t + \varphi) \\ \end{array}\right.\]

ここで,\(\varphi\)

\[\begin{array}{l} \displaystyle \cos\varphi = \frac{a\omega + 2b}{\sqrt{(a\omega + 2b)^2 + (b\omega t)^2}}\\ \displaystyle \sin\varphi = \frac{b\omega t}{\sqrt{(a\omega + 2b)^2 + (b\omega t)^2}}\\ \end{array}\]

を満たす角です。極座標で表すと更に分かりやすくなります。

\[\left\{\begin{array}{l}r = \ -m\omega\sqrt{(a\omega + 2b)^2 + (b\omega t)^2} \\ \theta = \omega t + \varphi \end{array}\right.\]

言葉で言えば,等速で回転しながら,内向きに徐々に大きくなっていく力とでもなるのでしょうが,上の式があれば十分でしょう。

さらに,\(t = 0\)\(r = 0\) となるためには,\(a\omega + 2b = 0\) であることも一目瞭然になっています。

さて,この問いから何が分かるのか? と言うと,地球上で等速直線運動に見える運動も,地球の自転の影響を受けるために力を加え続けないと等速直線運動にはならないということです。地球規模での運動,例えば大気の流れなどを考える際には,自転の影響を考慮しなければなりません。

因みに,\((1)\) の式の第2項が コリオリの力 であり,第3項は 慣性力 だそうです。(教科書を読むと f^^; )

これにて,ミッション完了!!

Last modified: Friday, 5 March 2021, 5:25 PM