01 関数の極限

本時の目標

  1. 関数の極限について,その意味を理解する。
  2. 不定形 \(\displaystyle\frac{0}{0}\)\(\displaystyle\frac{\infty}{\infty}\)\(0 \times \infty\)\(\infty - \infty\) の極限値を求めることができる。
  3. 片側極限値について理解し,関数の右側極限値と左側極限値を求めることができる。

関数の極限値

関数の極限値については,基礎数学 第18回「微分係数と導関数」で扱いました。

関数の極限値

関数 \(f(x)\) について,\(x\)\(a\) と異なる値をとりながら \(a\) に限りなく近づくとき,\(f(x)\) の値がある一定値 \(\alpha\) に近づくならば

\[\displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = \alpha\]

と書いて,\(\alpha\)\(x \to a\) のときの \(f(x)\) の極限値 といいました。

また,同じ状況を表すために,関数 \(f(x)\)\(x \to a\) のとき \(\alpha\) に収束する という言い方もあります。

さらに,上の枠内の説明にあるように「\(f(x)\) の値がある一定値に近づくならば・・・」ですから,そのようにならない(つまり,収束しない)こともあります。そのときは,発散する といいます。

それでは,次に収束・発散の例を見てみましょう。

例えば,\(\displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin{x}}{x} = 1\) が成り立ちます。ただし,\(x\) は弧度法です。

  • 関数 \(\displaystyle f(x) = \frac{\sin{x}}{x}\)\(x \ne 0\) で定義された関数です。
  • したがって,\(f(0)\) を考えることはできません。
  • しかし,\(x\) の値を限りなく \(0\) に近づけることはできます。
  • そして,そのとき \(1\) に限りなく近づく(収束する)ということです。
\(x = \)
\(\displaystyle \frac{\sin{x}}{x} = \)

ボタン × 0.1 をクリックすると,\(x\) の値が \(1\) から \(0.1\) 倍ずつ減少して(\(0\) に近づいて)いきます。それに伴って \(\displaystyle \frac{\sin{x}}{x}\) の値が \(1\) に近づく様子を見ることができます。途中で \(\displaystyle \frac{\sin{x}}{x} = 1\) となって,それ以上進まなくなってしまいますが,実際には,\(x\) がどれほど \(0\) に近づいても \(\displaystyle \frac{\sin{x}}{x}\) の値が \(1\) になることはありません。コンピュータの内部で計算しきれなくなって(所謂「桁落ち」が起こって),\(1\) という値を表示しているだけなのです。しかし,それだけ,\(1\) に近づいているということは分かりますね。

次に発散の例として,\(\displaystyle \lim_{x \to 0} |\,x\,|\cdot 2^{\frac{1}{|\,x\,|}}\) を考えましょう。

最初の例と同様に,\(x\) の値を \(0\) に近づけたとき,\(|\,x\,|\cdot 2^{\frac{1}{|\,x\,|}}\) の値がどのように変化するかを実際に計算します。

\(x = \)
\(|\,x\,|\cdot 2^{\frac{1}{|\,x\,|}} = \)

「〇〇〇 e+□□」と表記されるのは,\(〇〇〇 \times 10^{□□}\) を意味します。この関数は,\(x\)\(0\) に近づくとき,猛烈な勢いで増加してあっという間にコンピュータの計算能力の限界を超えてしまいます ― Infinity とは無限大という意味です。
このような場合,関数 \(|\,x\,|\cdot 2^{\frac{1}{|\,x\,|}}\) は,\(x \to 0\) のとき無限大(\(+\infty\))に発散するといい \(\displaystyle \lim_{x \to 0}|\,x\,|\cdot 2^{\frac{1}{|\,x\,|}} = \infty\) と表します。

ただし,上の2つの説明は不十分なところがあります。その点については,後ほど説明します。

不定形

上の説明では,関数の極限 \(\displaystyle \lim_{x \to a}f(x)\) を考えるために,実際に \(x\) の値を \(a\) に近づけて計算するという方法をとりました。それでは,関数の極限は,コンピュータや電卓の力を借りなければ求められないかというと,必ずしも,そうではありません。例えば

\[\displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{x^2 - 3x + 2}{x - 1} \tag{1}\]

は簡単に求めることができます。\(x \to 0\) のとき
 分子は \(2\) に近づき
 分母は \(-1\) に近づきます。
したがって,その比は \(\displaystyle\frac{2}{-1} = -2\) に近づきます。もっと簡単に考えて

\[\begin{array}{l} \displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{x^2 - 3x + 2}{x - 1} \\ \displaystyle = \frac{0^2 - 3\cdot 0 + 2}{0 - 1} \\ = -2 \end{array}\]

早い話しが,\(x\)\(0\) を代入してお終いです。ねっ!簡単に求められるでしょ?

話しがここで終わればメデタシメデタシです。ところが,同じような式でも

\[\displaystyle \lim_{x \to 1}\frac{x^2 - 3x + 2}{x - 1} \tag{2}\]

となると,状況がガラリと変わります。\(x\)\(1\) を代入すると

\[\begin{array}{l} \displaystyle \lim_{x \to 1}\frac{x^2 - 3x + 2}{x - 1} \\ \displaystyle = \frac{1^2 - 3\cdot 1 + 2}{1 - 1} \\ \displaystyle = \frac{0}{0}\cdots\mbox{?} \end{array}\]

となって,これでは極限値を求めることができません。工夫が必要です。\(x = 1\) を代入して値が \(0\) になる式は,因数定理から \(x - 1\) で割り切れることが分かります。実際

\[x^2 - 3x + 2 = (x - 1)(x - 2)\]

となります。そうすると \((2)\) の極限値は 約分することにより 以下のように求めることができます。

\[\begin{array}{l} \displaystyle \lim_{x \to 1}\frac{x^2 - 3x + 2}{x - 1} \\ \displaystyle = \lim_{x \to 1}\frac{(x - 1)(x - 2)}{x - 1} \\ \displaystyle = \lim_{x \to 1}\frac{\cancel{(x - 1)}(x - 2)}{\cancel{(x - 1)}} \\ \displaystyle = \lim_{x \to 1}(x - 2) \\ = 1 - 2 \\ = -1 \end{array} \tag{3}\]

最初の例 \(\displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin{x}}{x}\) と \(\displaystyle \lim_{x \to 0}|\,x\,|\cdot 2^{\frac{1}{|\,x\,|}}\) を見てみましょう。 \(x \to 0\) のとき

\[\left\{\begin{array}{ccc} \sin{x} & \rightarrow & 0 \\ 2^{\frac{1}{|\,x\,|}} & \rightarrow & \infty \end{array}\right.\]

となるので,それぞれ \(\displaystyle \frac{0}{0}\)\(0 \times \infty\) という形をしています。ん~ん,極限値がどのようになるのか,さっぱり分かりません。

不定形

ある関数の極限値を考えようとしたとき,\(\displaystyle \frac{0}{0}\)\(\displaystyle \frac{\infty}{\infty}\)\(\displaystyle 0\times \infty\)\(\displaystyle \infty - \infty\) となるものを 不定形 といいます。

不定形の極限値を求めるためには,工夫が必要です。そこで,次に幾つかの不定形の極限値について,その求め方を見ていきましょう。

関数の極限値の求め方

例題1 次の極限値を求めましょう。

  1. \(\displaystyle \lim_{x \to 1}\frac{x - 1}{\sqrt{x} - 1}\)
  2. \(\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{4x^2 + 5x - 3}{3x^2 + x + 1}\)
  3. \(\displaystyle \lim_{x \to \infty} \left( \sqrt{x^2 + 1} - x \right) \)

解 答

1. は \(\displaystyle \frac{0}{0}\) の不定形です。根号が含まれているときには,有理化をします。

\[\begin{array}{ll} \displaystyle \lim_{x \to 1}\frac{x - 1}{\sqrt{x} - 1} & \\ \displaystyle = \lim_{x \to 1} \frac{(x - 1)(\sqrt{x} + 1)}{(\sqrt{x} - 1)(\sqrt{x} + 1)} & {\small (有理化)}\\ \displaystyle = \lim_{x \to 1} \frac{(x - 1)(\sqrt{x} + 1)}{(\sqrt{x})^2 - 1^2} & \\ \displaystyle = \lim_{x \to 1} \frac{(x - 1)(\sqrt{x} + 1)}{x - 1} & \\ \displaystyle = \lim_{x \to 1} \frac{\cancel{(x - 1)}(\sqrt{x} + 1)}{\cancel{(x - 1)}} & {\small (約分)} \\ \displaystyle = \lim_{x \to 1} (\sqrt{x} + 1) & \\ = 2 & \end{array}\]

2. は,有理関数の \(\displaystyle \frac{\infty}{\infty}\) の不定形です。分母の最高次数(この場合は \(x^2\))で,分母と分子を同時に割ってしまいます。その上で,\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{1}{x} = 0\)\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{1}{x^2} = 0\) であることを使います。

\[\begin{array}{l} \displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{4x^2 + 5x - 3}{3x^2 + x + 1} \\ \displaystyle = \lim_{x \to \infty} \frac{\displaystyle 4 +\frac{5}{x} - \frac{3}{x^2}}{\displaystyle 3 + \frac{1}{x} + \frac{1}{x^2}} \\ \displaystyle = \frac{4 + 0 + 0}{3 + 0 + 0} \\ \displaystyle = \frac{4}{3} \end{array}\]

3. は \(\infty - \infty\) の形の不定形であり,式には根号が含まれています。このようなときには

\[\displaystyle \sqrt{x^2 + 1} - x = \frac{\sqrt{x^2 + 1} - x}{1}\]

と考えて,分子を有理化します。すると

\[\begin{array}{l} \displaystyle \lim_{x \to \infty} \left( \sqrt{x^2 + 1} - x \right) \\ \displaystyle = \lim_{x \ to \infty}\frac{\sqrt{x^2 + 1} - x}{1} \\ \displaystyle = \lim_{x \to \infty} \frac{\left(\sqrt{x^2 + 1} - x\right)\left(\sqrt{x^2 + 1} + x\right)}{\sqrt{x^2 + 1} + x} \\ \displaystyle = \lim_{x \to \infty} \frac{\left(x^2 + 1\right) - x^2}{\sqrt{x^2 + 1} + x} \\ \displaystyle = \lim_{x \to \infty} \frac{1}{\sqrt{x^2 + 1} + x} \end{array}\]

となりますが,\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} \left(\sqrt{x^2 + 1} + x\right) = \infty\) ですから

\[\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{1}{\sqrt{x^2 + 1} + x} = 0\]

したがって,\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} \left(\sqrt{x^2 + 1} - x\right) = 0\) となります。

アプリを使おう

GeoGebra や Wolfram Alpha などを用いると,関数の極限も簡単に求めることができます。ただし,GeoGebra では,Casビューで計算をしますので,Casビューのない Graphing Calculator では極限の計算をすることができません。

\(\displaystyle \lim_{x \to a} f(x)\) の値を求めたければ,GeoGebra でも Wolfram Alpha でも \(\mbox{Limit}(f(x),\ x,\ a)\) と入力するだけです。\(a\)\(\infty\) の場合は \(\mbox{Infinity}\)\(-\infty\) の場合は \(-\mbox{Infinity}\) です。

\[\displaystyle \lim_{x \to a} f(x)\ \longrightarrow\ \mbox{Limit}(f(x),\ x,\ a)\]

Wolfram Alpha の文法的には正式なものではないのですが,幾つも覚えるのは大変なのでこの式で良しとしましょう。Wolfram Alpha はユーザーフレンドリーなアプリです。適当に入力しても,ユーザーの意図をよく汲み取ってくれます。

例題1 の極限は,次のように求めることができます。

  1. \(\mbox{Limit((x - 1) / (sqrt(x) - 1), x, 1)}\)
  2. \(\mbox{Limit((4*x^2 + 5*x -3) / (3*x^2 + x + 1), x, Infinity)}\)
  3. \(\mbox{Limit(sqrt(x^2 + 1) - x, x, Infinity)}\)

いずれのアプリでも積の記号「*」は省略可です。

片側極限値

さて,\(\displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{\sin{x}}{x}\)\(\displaystyle \lim_{x \to 0} |\,x\,|\cdot 2^{\frac{1}{|\,x\,|}}\) を例にして関数の極限について説明した際に,「説明に不十分なところがある」と書きましたので,次に,そのことに関して説明します。不十分なところは,\(x\)\(0\) に近づくときの近づき方に関する考え方です。

\(x\) の値を \(1\) から \(0\) に向かって \(0\) に近づけました。しかし,近づき方には,\(-1\) の方から \(0\) に近づくという方向もあるはずです。数直線上で考えるならば,右から近づくか?左から近づくか?という違いです。

関数の極限は,右から近づく場合と左から近づく場合に,それらが必ずしも一致するとは限りません。

\[\displaystyle |\,x\,|\cdot 2^{\frac{1}{|\,x\,|}}\]

という関数の形を見たときに,ナゼ絶対値をつけるのかなぁ・・・と感じた方もいるでしょう。これは,正の方向から \(0\) に近づいても,負の方向から \(0\) に近づいても同じ結果になるようにするためです。

ここで,関数 \(\displaystyle f(x) = \frac{1}{x}\) を考えてみましょう。この関数のグラフは下の図になります。

\(x\)

\(y\)

\(\displaystyle y = \frac{1}{x}\)

グラフから分かるように,\(x\) が右から \(0\) に近づいたとき,\(\displaystyle \frac{1}{x}\) の値は限りなく大きくなります。つまり,\(\infty\) に発散します。逆に,\(x\) が左から \(0\) に近づいたとき,\(\displaystyle \frac{1}{x}\) の値は限りなく小さくなり,\(-\infty\) に発散します。

\(x\)\(a\) より小さい方から \(a\) に近づくことを \(x \to a - 0\) と書き,\(a\) より大きい方から \(a\) に近づくことを \(x \to a + 0\) と書く。
特に,\(a = 0\) の場合,\(x \to 0 - 0\)\(x \to 0 + 0\) をそれぞれ単に \(x \to -0\)\(x \to +0\) と書く。

上の \(\displaystyle f(x) = \frac{1}{x}\) の例では

\[\displaystyle \lim_{x \to -0} \frac{1}{x} = -\infty \ ,\quad \lim_{x \to +0} \frac{1}{x} = +\infty\]

と書き表すことができます。このうち,左側を左側極限値,右側を右側極限値とよびます。

片側極限値

\(x \to a - 0\) 及び \(x \to a + 0\) の極限値 \(\displaystyle \lim_{x \to a - 0} f(x)\)\(\displaystyle \lim_{x \to a + 0} f(x)\) を,それぞれ \(x = a\) における 左側極限値右側極限値 といい,合わせて 片側極限値 という。2つの極限値が存在して等しいとき,その値が \(\displaystyle \lim_{x \to a} f(x)\) になる。

したがって,\(\displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{1}{x}\) については 存在しない となります。

問題演習

課題1 次の極限値を求めましょう。

  1. \(\displaystyle \lim_{x \to 2} \frac{x^2 - 5x + 6}{x - 2}\) 解答 隠す
  2. \(\displaystyle \lim_{x \to -1} \frac{2x^2 - 3x - 5}{3x^2 + 4x + 1}\) 解答 隠す
  3. \(\displaystyle \lim_{x \to -2} \frac{x^3 + 8}{x + 2}\) 解答 隠す
  4. \(\displaystyle \lim_{x \to 1} \frac{x^3 + 2x^2 - 2x - 1}{x^2 - 1}\) 解答 隠す
  5. \(\displaystyle \lim_{x \to 3} \frac{x^3 - 6x^2 + 11x - 6}{x^3 - 7x - 6}\) 解答 隠す
  6. \(\displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{\sin^2{x}}{1 - \cos{x}}\) 解答 隠す
  7. \(\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{3x^2 + 2x + 1}{x^2 + 2x + 3}\) 解答 隠す
  8. \(\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{x^3 + 1}{x^2 + 3x + 2}\) 解答 隠す
  9. \(\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{10x^2 + 5x - 3}{x^3 + 3x^2 + 3x + 1}\) 解答 隠す
  10. \(\displaystyle \lim_{x \to -\infty} \frac{x^3 - x + 6}{x^2 + 4x + 2}\) 解答 隠す
  11. \(\displaystyle \lim_{x \to 2} \frac{\sqrt{x + 7} - 3}{x - 2}\) 解答 隠す
  12. \(\displaystyle \lim_{x \to 1} \frac{x - 1}{\sqrt{x} - \sqrt{2 - x}}\) 解答 隠す
  13. \(\displaystyle \lim_{x \to -1} \frac{\sqrt{x + 2} + x}{\sqrt{x + 5} - 2}\) 解答 隠す
  14. \(\displaystyle \lim_{x \to -1 - 0} \frac{1}{x + 1}\) 解答 隠す
  15. \(\displaystyle \lim_{x \to \frac{\pi}{2} + 0} \tan x\) 解答 隠す
  16. \(\displaystyle \lim_{x \to \frac{\pi}{2}} \frac{1}{\tan x}\) 解答 隠す
  17. \(\displaystyle \lim_{x \to 0} x\sin\frac{1}{x}\) 解答 隠す
  18. \(\displaystyle \lim_{x \to \infty} 2^{-x}\sin x\) 解答 隠す

【参考図書】数学辞典(朝倉書店)/理工系入門 微分積分(裳華房)

Last modified: Friday, 5 March 2021, 4:58 PM