02 関数の連続
本時の目標
- 関数の連続性を理解し,具体的な関数に対してある点で連続であるか・不連続であるかを示すことができる。
- 連続関数の性質として,中間値の定理を理解する。
- 中間値の定理を応用して,方程式の実数解の存在を示すことができる。
- 中間値の定理を応用して,方程式の実数解の値を概算することができる。
関数がある点で連続であるとは
関数の連続・不連続と言われても,???と感じる方が多いでしょう。これまで,不連続点のある関数はほとんど扱っていませんから。関数が連続であるとは,誤解を恐れずに分かりやすく大雑把に言ってしまうと「グラフがつながっている」ということです。これまで扱ってきた関数はどれもグラフが一つながりになっています。
グラフが切れている関数というと・・・\(\displaystyle y = \frac{1}{x}\) や \(\displaystyle y = \tan x\) を思い浮かべる方がいるかもしれません。しかし,これらの関数は,定義されていない点でグラフが切れているに過ぎません。定義されていないのですから,グラフはつながっているはずがありません。定義されていない点で連続・不連続を考えるのはナンセンスなことですね。\(\displaystyle y = \frac{1}{x}\) も \(y = \tan x\) も定義域全体で連続な関数です。
それでは,定義域内でグラフが切れている関数なんてあるのでしょうか?1つ例を挙げます。
次のように定義される関数 \(\mbox{sgn}\,x\) は 符号関数 とよばれるものです。
\[\mbox{sgn}\,x = \left\{\begin{array}{cc} -1 & (x < 0) \\ 0 & (x = 0) \\ 1 & (x > 0) \end{array}\right.\]
\(x\) の値が正であれば \(1\) を,\(x\) の値が負であれば \(-1\) を,\(x\) の値が \(0\) であれば \(0\) をそれぞれ返す関数です。だから符号関数とよばれます。グラフを描いておきましょう。
\(x\)
\(y\)
グラフは,\(x = 0\) でものの見事に分断されています。したがって,\(\mbox{sgn}\,x\) は \(x \ne 0\) で不連続であり,その他の点では連続である・・・となります。よろしいでしょうか?
一目瞭然で,とても分かりやすい話しなのですが,どのような関数についてもグラフを簡単に描けるとは限りませんし,実際には,連続・不連続が分かっているからグラフを正確に描くことができるとも言えます。そうなると,関数の連続・不連続はグラフを使えば分かる・・・というわけにいかなくなります。関数の連続についてしっかり定義する必要が出てきました。
実は,関数 \(f(x)\) が \(x = a\) で連続であるとは,次のように定義されます。
関数の連続性
関数 \(f(x)\) が \(x = a\) で定義されていて\[\displaystyle \lim_{x \to a - 0} f(x) = \lim_{x \to a + 0} f(x) = f(a)\]を満たすとき,関数 \(f(x)\) は \(x = a\) で連続であるといいます。
この定義を使えば,\(\mbox{sgn}\,x\) については,\(x = 0\) における左側極限値と右側極限値が一致しないので,\(x = 0\) で連続ではないと結論付けられます。
連続関数の実数倍・和・積・商
2つの関数 \(f(x)\) と \(g(x)\) が \(x = a\) で連続ならば,次の関数も \(x = a\) で連続です。
\[kf(x),\ f(x) + g(x),\ f(x)\cdot g(x),\ \displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}\quad (k\ は任意の実数)\]
例えば,和 \(f(x) + g(x)\) について成り立つことを示しましょう。
\(f(x)\) と \(g(x)\) が \(x = a\) で連続ならば
\[\left\{\begin{array}{l} \displaystyle \lim_{x \to a - 0} f(x) = \lim_{x \to a + 0} f(x) = f(a) \\ \displaystyle \lim_{x \to a - 0} g(x) = \lim_{x \to a - 0} g(x) = g(a) \end{array}\right.\tag{♪}\]
が成り立ちます。当然,\(f(x) + g(x)\) も \(x = a\) で定義されて,その値は \(f(a) + g(a)\) です。
\((♪)\) が成り立つので,次の2つも成り立ちます。
\[\begin{array}{l} \displaystyle \lim_{x \to a - 0} \left\{f(x) + g(x)\right\} \\ \displaystyle = \lim_{x \to a - 0} f(x) + \lim_{x \to a - 0} g(x) \\ = f(a) + g(a) \\[4mm] \displaystyle \lim_{x \to a + 0} \left\{f(x) + g(x)\right\} \\ \displaystyle = \lim_{x \to a + 0} f(x) + \lim_{x \to a + 0} g(x) \\ = f(a) + g(a) \end{array}\]
これより,関数 \(f(x) + g(x)\) もまた \(x = a\) で連続であると言えます。
残り3つの証明は,皆さんにお任せし,課題といたします。
課題1
2つの関数 \(f(x)\) と \(g(x)\) が \(x = a\) で連続であるとき,次の関数も \(x = a\) で連続であることを示しましょう。
\[kf(x),\quad f(x)\cdot g(x),\quad \displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}\quad (k\ は任意の実数)\]
連続・不連続を調べる
次のように定義された関数 \(f(x)\) を考えましょう。
\[f(x) = \left\{\begin{array}{cc} \displaystyle x\sin \frac{1}{x} & (x \ne 0) \\[8px] 0 & (x = 0) \end{array}\right.\]
\(x \ne 0\) と \(x = 0\) とで場合に分けて定義していますから,\(x = 0\) での連続性が怪しく感じられますねぇ。調べてみましょう。
\(\displaystyle \lim_{x \to 0} x\sin\frac{1}{x}\) を考えなければなりませんが,これは前回の課題1の17. に出題したものです。
\[\begin{array}{l} \displaystyle -1 \leqq \sin \frac{1}{x} \leqq 1 \quad {だから} \\ \displaystyle -|\,x\,| \leqq x\sin\frac{1}{x} \leqq |\,x\,| \quad {が成り立ち} \\ \displaystyle \lim_{x \to 0} (-|\,x\,|) = \lim_{x \to 0} |\,x\,| = 0 \quad {なので} \\ \displaystyle \lim_{x \to -0} x\sin\frac{1}{x} = \lim_{x \to +0} x\sin\frac{1}{x} = 0 \quad {となります。} \end{array}\]
ん~ん,ということは ― 予想に反して ― 関数 \(f(x)\) は \(x = 0\) で連続でした。
試しに,GeoGebra で \(\displaystyle y = x\sin\frac{1}{x}\) のグラフを描いてみましょう。\(-1 \leqq x \leqq 1\) の範囲で下図のようなグラフが描かれるはずです。
\(x\)
\(y\)
このグラフは,\(x = 0\) のとき \(f(0) = 0\) であることを考慮して描かれたものではありません。あくまでも,\(x \ne 0\) で定義された \(\displaystyle x\sin\frac{1}{x}\) を描いたものです。\(x = 0\) の近くでは複雑に変化しています。何となく \(x \to 0\) で \(0\) に収束しているようには見えますが,確かなことは分かりませんね。やはり,極限値をしっかり調べなければならないようです。
課題2
\([\,x\,]\) はガウス記号といい,\(x\) を超えない最大の整数を表します。例えば,
\[[\,\pi\,] = 3\ ,\ [\,0.5\,] = 0\ ,\ [\,-2.1\,] = -3\]
です。\(f(x) = [\,x\,]\) は床関数とよばれる関数ですが,この関数が \(x = \sqrt{2}\) において連続かどうか? \(x = -1\) において連続かどうか?を調べましょう。
\(x\)
\(y\)
\(-1\)
\(\sqrt{2}\)
連続関数の性質
\(a \leqq x \leqq b\) において連続な関数について,重要な定理を2つ紹介します。
中間値の定理
関数 \(f(x)\) は \(a \leqq x \leqq b\) において連続であって,\(f(a) \ne f(b)\) が成り立っているとします。このとき,\(f(a)\) と \(f(b)\) の間の任意の数 \(k\) に対して
\[f(c) = k \quad (a < c < b)\]
を満たす数 \(c\) が少なくとも1つ存在します。
最大値・最小値の定理
関数 \(f(x)\) が \(a \leqq x \leqq b\) において連続ならば,\(f(x)\) は \(a \leqq x \leqq b\) において最大値と最小値をもちます。
課題3
上の2つの定理が成り立つことをグラフを描いて確認しましょう。
この2つの定理は,証明なしで用いることにします。図を描けば当たり前のように感じられるので,まぁそれで良しとしましょう。(数学的には,それではいけないのですけれど・・・少々難しくなるので
中間値の定理の応用
3次関数 \(y = x^3 - 2x + 2\) を考えましょう。グラフは下図のようになります。
\(f(x) = \ \)
\(x\)
\(y\)
グラフを見ると,3次方程式 \(x^3 - 2x + 2 = 0\) には実数解が1つだけあることが分かります。それでは,その実数解の値は幾つくらいなのでしょうか?中間値の定理を用いて,実数解のおおよその値を求めてみましょう。
start: step:
\(x\) | \(f(x)\) |
上の表は,デフォルトで \(-10\) から \(1\) 刻みで関数の値を表示しています。この表を見ると
\[f(-2) = -2 < 0 , f(-1) = 3 > 0\]
ですから,中間地の定理により \(f(c) = 0\) となる \(c\) が \(-2 < c < -1\) の範囲にあることが分かります。つまり,\(-2 < x < -1\) の範囲に \(f(x) = 0\) の実数解があるということです。
それでは次に,start値を \(-2\),step値を \(0.1\) として 計算 ボタンをクリックしてください。\(x = -2\) から \(0.1\) 刻みで関数の値を表示します。すると,\(f(x) = 0\) の解の範囲を更に狭い範囲に限定できます。
課題4
上の表を用いて,\(x^3 - 2x + 2 = 0\) の実数解を少数第3位(少数第4位を四捨五入)まで求めましょう。
例題1
方程式 \(x - \cos x = 0\) が \(0\) と \(\displaystyle \frac{\pi}{2}\) の間に解をもつことを示しましょう。
解 答
\(f(x) = x - \cos x\) とおくと,関数 \(f(x)\) は \(0 \leqq x \leqq \displaystyle \frac{\pi}{2}\) で連続です。また,
\[f(0) = -1 < 0 , \displaystyle f\left(\frac{\pi}{2}\right) = \frac{\pi}{2}\]
となりますから,中間値の定理を用いると
\[\displaystyle f(c) = 0\quad \left(0 < c < \frac{\pi}{2}\right)\]
を満たす実数 \(c\) が存在します。よって,\(0\) と \(\displaystyle \frac{\pi}{2}\) の間に解をもつことが示されました。
課題5
中間値の定理を用いて,次の問いに答えましょう
- 4次方程式 \(x^4 - x^3 + 3x - 9 = 0\) は,\(1\) と \(2\) の間に実数解をもつことを示しましょう。
- 方程式 \(x - \sin x - 1 = 0\) は \(0\) と \(\pi\) の間に実数解をもつことを示しましょう。
【参考図書】数学辞典(朝倉書店)/理工系入門 微分積分(裳華房)