本時の目標

  1. 媒介変数を用いることにより,曲線を表せることを理解する。
  2. だ円,アステロイド,カージオイドなど,媒介変数表示により表される代表的な曲線について,式と概形とを結びつけることができる。
  3. 媒介変数表示された関数について,導関数を媒介変数により表すことができる。

媒介変数表示

例題1

\(\theta\)\(0 \leqq \theta < 2\pi\) の値をとるとき,点 \(\mbox{P}\left(3\cos\theta\mbox{,}3\sin\theta\right)\) はどのような図形の上を動くでしょうか?

解 答

\(x\)

\(y\)

\(\left(x_0\mbox{,}y_0\right)\)

\(\theta\)

\(\cos\theta\)\(\sin\theta\) は原点を中心とする半径 \(r\) の円周上を動く点の座標を \(\left(x_0\mbox{,}y_0\right)\) とすると \[\begin{array}{c} \displaystyle \cos\theta = \frac{x_0}{r}\mbox{,}\sin\theta = \frac{y_0}{r} \\ \mbox{∴}\quad x_0 = r\cos\theta\mbox{,}y_0 = r\sin\theta\end{array}\]でした。したがって,点 \(\mbox{P}\left(3\cos\theta\mbox{,}3\sin\theta\right)\)\(r = 3\) の場合ですから,原点を中心として半径 \(3\) の円周上を動きます。

例題1では,点 \(\mbox{P}\)\(x\) 座標と \(y\) 座標がそれぞれ\[x = 3\cos\theta\mbox{,}y = 3\sin\theta\]と表されていて,\(\theta\) の値が変化するとその値に応じて \(x\) 座標と \(y\) 座標が決まり,その結果として点 \(\mbox{P}\) が原点を中心として半径 \(3\) の円周を描きました。

このように,点の \(x\) 座標と \(y\) 座標とが,\(x \cdot y\) 以外の変数(媒介変数という)で表されていて,媒介変数の値を与えるごとに点が曲線上を動くとき,この表し方を曲線の 媒介変数表示(または パラメータ表示)といいます。

媒介変数表示の例

次に,媒介変数表示された曲線の例を幾つか見ていきます。
いずれも,図の下にスライダーがついていて,\(\theta\) の値を \(0\) から \(2\pi\) まで変えることができます。スライダーを動かして,点 \(\mbox{P}\) が動く様子を観察しましょう。

だ円の例

\(x = 3\cos\theta\mbox{,}y = 2\sin\theta\)

円を表わす式と似ていますが,\(\cos\)\(\sin\) の係数が異なります。

\(x\)

\(y\)

アステロイドの例

\(x = \cos^3\theta\mbox{,}y = \sin^3\theta\)

\(x\)

\(y\)

カージオイドの例

\(\left\{\begin{array}{l} \displaystyle x = \frac{1}{2}(1 + \cos\theta)\cos\theta \\ \displaystyle y = \frac{1}{2}(1 + \cos\theta)\sin\theta \end{array}\right.\)

\(x\)

\(y\)

リサージュの例

\(x = \sin 4\theta\mbox{,}y = \sin 5\theta\)

\(x\)

\(y\)

物理における運動の例

例題2

ある地点(点 \(\mbox{O}\) とします)から,水平方向となす角 \(\displaystyle \frac{\pi}{4}\),初速 \(v_0\) で打ち上げられた物体(質量を \(m\) とします)は,どのような運動をするでしょうか?その軌跡を描いてください。

単位がないので,物理の問いとしてはおかしいのですが・・・。固いことは言わないことにしましょう f^^;

解 答

物理では \(\displaystyle \frac{dx}{dt}\)\(\dot{x \mathstrut}\)\(\displaystyle \frac{d^2 x}{dt^2} = \ddot{x \mathstrut}\) と書くので,ここでは物理に倣います。

水平方向に \(x\) 軸,鉛直上方向に \(y\) 軸をとります。すると,物体にかかる力は重力のみですから \(x\) 軸・\(y\) 軸の方向にそれぞれ\[m\ddot{x \mathstrut} = 0\mbox{,}m\ddot{y \mathstrut} = -mg\]という運動方程式が成り立ちます。これより

\(\begin{array}{lcl} \ddot{x \mathstrut} = 0 && \ddot{y \mathstrut} = -g \\ \displaystyle \dot{x \mathstrut} = \frac{\sqrt{2}}{2}v_0 && \displaystyle \dot{y \mathstrut} = -gt + \frac{\sqrt{2}}{2}v_0 \\ \displaystyle x = \frac{\sqrt{2}}{2}v_0 t && \displaystyle y = -\frac{1}{2}gt^2 + \frac{\sqrt{2}}{2}v_0 t \end{array}\)

最後の2式から \(t\) を消去すると,この物体が描く放物線の式が得られます。\[y = -\frac{g}{v_0\!^2}x^2 + x\]

GeoGebra による表示

媒介変数表示された曲線を GeoGebra で表示する場合には,「Curve」というコマンドを使います。例えば,原点を中心として半径 \(3\) の円を描画するときは,次のように入力します。\[\mbox{Curve}(3\cos(t)\mbox{,}3\sin(t)\mbox{,}t\mbox{,}0\mbox{,}2\pi)\]

媒介変数表示曲線の表示

\(\mbox{Curve}\)(\(x\) の式,\(y\) の式,媒介変数,開始値,終了値)

また,媒介変数の値に応じて点を表示することもできます。

まず,媒介変数として用いて文字を決めて,\(t = 0\) のように「媒介変数 = 値」という式を入力します(値は適当なもので構いません)。すると,スライダーが作成されます。次に,スライダーのプロパティを開いて,初期値(最小),最終値(最大)及び増分を適切に定めます。

動点の名前を決めて「\(\mbox{P} = (x(t)\mbox{,}y(t))\)」のように媒介変数表示の式を入力すると,点が表示されます。

スライダーを動かすと,媒介変数の値に応じて点が曲線上を動きます。

媒介変数表示された関数の導関数

媒介変数表示された曲線の例として挙げた 円,だ円,アステロイド,カージオイド,リサージュ は,いずれも \(x\) に対してただ1つの \(y\) が定まるという関係になっていないのですが,範囲を限定すると関数として扱うことができます。例えば\[x = 3\cos\theta\mbox{,}y = 3\sin\theta\]であれば\[\left\{\begin{array}{ll} y = \sqrt{9 - x^2} & (0 \leqq \theta < \pi) \\ y = -\sqrt{9 - x^2} & (\pi \leqq \theta < 2\pi) \end{array}\right.\tag{1}\]

となります。カージオイドやリサージュについては,更に複雑な場合分けになります。それぞれについて,\(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) を求めることは面倒な計算になりそうです。ところが,これを媒介変数のまま扱うと計算が簡単になります。導関数は \(\displaystyle \lim_{\Delta x \to 0} \frac{\Delta y}{\Delta x}\) です。\(x\)\(y\)\(\theta\) の関数になっていますから \(\displaystyle \frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{\frac{\Delta y}{\Delta \theta}}{\frac{\Delta x}{\Delta \theta}}\) が成り立ちます。したがって\[\frac{dy}{dx}\begin{array}[t]{l} \displaystyle = \lim_{\Delta x \to 0} \frac{\Delta y}{\Delta x} \\ \displaystyle = \lim_{\Delta \theta \to 0} \frac{\frac{\Delta y}{\Delta \theta}}{\frac{\Delta x}{\Delta \theta}} \\ \displaystyle = \frac{\,\frac{dy}{d\theta}\,}{\frac{dx}{d\theta}} \end{array}\]

媒介変数表示された関数の導関数

\[\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{\displaystyle \,\frac{dy}{dt}\,}{\displaystyle \frac{dx}{dt}}\]

例題3 \(x = 3\cos\theta\mbox{,}y = 3\sin\theta\) \[\displaystyle \frac{dx}{d\theta} = -3\sin\theta\mbox{,}\frac{dy}{d\theta} = 3\cos\theta \\ \displaystyle \mbox{∴}\quad \frac{dy}{dx} = -\frac{\cos\theta}{\sin\theta} \tag{2}\]

\(x\)

\(y\)

\(\theta\)

動径 \(\mbox{OP}\) の傾きは \(\tan\theta\) すなわち \(\displaystyle \frac{\sin\theta}{\cos\theta}\) です。上の \((2)\) が成り立つということは,点 \(\mbox{P}\) における接線の傾きが \(\displaystyle -\frac{\cos\theta}{\sin\theta}\) であり

動径 \(\mbox{OP}\) の傾き \(\times\) 接線の傾き \(= -1\)

が成り立つので,\(\displaystyle \frac{dy}{dx} = -\frac{\cos\theta}{\sin\theta}\) の正しいことが分かります。

しかも,結果は \((1)\) のように場合分けをする必要がなく,\(y \ne 0\) である点で成り立っています。

課題1

次の媒介変数表示された関数の導関数 \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) を求めましょう。

  1. \(x = 2t - 1\)\(y = 3t + 2\) 解答 隠す
  2. \(x = 2\cos t\)\(y = 2\sin t\) 解答 隠す
  3. \(x = a\cos t\)\(y = b\sin t\) 解答 隠す
  4. \(x = \displaystyle\frac{1 - t^2}{1 + t^2}\)\(y = \displaystyle\frac{2t}{1 + t^2}\) 解答 隠す
  5. \(x = \log(\log t)\)\(y = \log t\) 解答 隠す
  6. \(x = t - \sin t\)\(y = 1 - \cos t\) 解答 隠す

【参考図書】数学辞典(朝倉書店)/理工系入門 微分積分(裳華房)

最終更新日時: 2021年 09月 27日(月曜日) 16:07