テキスト(恒等式と部分分数)

本時の目標

  1. 恒等式について理解し,未定係数を含む等式を恒等式にすることができる。
  2. 分数式を部分分数に分解することができる。

方程式と恒等式

等式には 方程式 と 恒等式 の2種類があります。方程式

\(x^2 - 3x + 2 = 0\)

のように,ある特定の \(x\) の値でのみ成り立つ等式です。上の等式は \(x = 1\)\(x ~= 2\) でのみ成り立ち,\(x\) にその他の値を代入しても成り立ちません。それに対して

\((x + 1)^3 = x^3 + 3x^2 + 3x + 1\)

は,\(x\) にどのような値を代入しても,必ず成り立ちます。このような等式を 恒等式 といいます。

例題1-1

\((x - 2)(x + 3) = ax^2 + bx + c\)

\(x\) の恒等式になるように,定数 \(a\)\(b\)\(c\) の値を定めましょう。

与式の左辺を展開すると

\(x^2 + x - 6 = ax^2 + bx + c\)

となります。ここで,両辺の各項の係数を比較します。恒等式になるためには,左辺と右辺がまったく同じ式になっているということです。したがって,それぞれの係数を比較して

\(a = 1\)\(b = 1\)\(c = -6\)

となります。

次に,もう少し複雑な式を考えましょう。

例題1-2

\(x^2 = a(x - 1)^2 + b(x - 1) + c\)

\(x\) の恒等式になるように,定数 \(a\)\(b\)\(c\) の値を定めましょう。

右辺を展開して,\(x\) について整理します。

\(\begin{array}{l} x^2 = a(x^2 - 2x + 1) + b(x - 1) + c \\ x^2 = ax^2 + (-2a + b)x + (a - b + c) \end{array}\)

両辺の各項の係数を比較すると

\(\left\{\begin{array}{lcc} 1 = a & \cdots & {\small (1.1)} \\ 0 = -2a + b & \cdots & {\small (1.2)} \\ 0 = a - b + c & \cdots & {\small (1.3)} \end{array}\right.\)

となります。これを \(a\)\(b\)\(c\) について解くと

\(a = 1\)\(b = 2\)\(c = 1\)

課題1

次の等式が \(x\) の恒等式になるように,定数 \(a\)\(b\) の値を定めましょう。

  1. \((ax - b)(x + 1) = 2x^2 - x - 3\)
  2. \(x^2 + 5x + 8 = (x + 1)^2 + a(x + 1) + b\)

解答

部分分数分解

次は,分数式で上と同様のことをおこないます。

例題2

次の等式を満たす定数 \(A\)\(B\) を求めましょう。

\(\displaystyle \frac{2x - 3}{(x - 1)(x -2)} = \frac{A}{x - 1} + \frac{B}{x - 2}\)

まず,両辺に \((x - 1)(x - 2)\) を掛けて分母を払います。

\(\begin{array}{l} 2x - 3 = A(x - 2) + B(x - 1) \ \cdots\ {\small (2.1)} \\ 2x - 3 = (A + B)x - (2A + B) \end{array}\)

両辺の各項の係数を比較して

\(\begin{array}{c} 2 = A + B,\quad 3 = 2A + B \\ \mbox{∴}\quad A = B = 1 \end{array}\)

実は,この形の式では,\((2.1)\)式に \(x = 1\)\(x = 2\) を代入することにより \(A\)\(B\) の値を決定することができ,こちらの方が簡単に計算ができます。

\((2.1)\)\(x = 1\) を代入すると,\(-1 = -A\) となり,\(A = 1\)

\((2.1)\)\(x = 2\) を代入すると,\(1 = B\) となり,\(B = 1\)

以上のように,\(A\)\(B\) を決定できます。この手順は十分性を示しておらず数学的に言えば不十分ですが,「基礎数学」と「微分積分/演習」での扱う計算では不具合は生じません。そこで,少々目を瞑って,この求め方を良しとします。

さて,\(A\)\(B\) が求められたことにより

\(\displaystyle \frac{2x - 3}{(x - 1)(x - 2)} = \frac{1}{x - 1} + \frac{1}{x - 2}\)

が成り立つことが分かりました。この変形を 部分分数分解 といいます。

部分分数分解

分数式を分母の因数を分母にする幾つかの分数の和に変形すること。

有理関数の積分で用いられるために,積分可能な関数の和にする。この点については,微分積分/演習 で学ぶ。

部分分数分解の計算は,GeoGebra を用いて行うことができます。

PartialFractions

  • 書式:PartialFractions(分数式)
  • 命令:分数式を部分分数分解する。
  • 例 :\(\displaystyle \mbox{PartialFractions}\left(\frac{x^2}{x^2 + 2x + 1}\right)\)
  • 出力:\(\displaystyle 1 + \frac{1}{(x - 1)^2} + \frac{2}{x - 1}\)

課題2

次の等式を満たす定数 \(A\)\(B\)\(C\) をそれぞれ求めることにより,与式を部分分数分解しましょう。

1. \(\displaystyle \frac{2}{x^2 - 1} = \frac{A}{x - 1} + \frac{B}{x + 1}\) 解答 隠す

2. \(\displaystyle \frac{3x + 1}{x^2 + 4x + 3} = \frac{A}{x + 1} + \frac{B}{x + 3}\) 解答 隠す

3. \(\displaystyle \frac{x^2 + x + 2}{x(x - 1)(x - 2)} = \frac{A}{x} + \frac{B}{x - 1} + \frac{C}{x - 2}\) 解答 隠す

分母に2乗を含む分数式の部分分数分解

例題3

\(\displaystyle \frac{1}{x^2(x + 1)}\)

のように,分母に2乗を含む分数式の部分分数分解は,もう少し厄介になります。どのようにおくかというと・・・

\(\displaystyle \frac{1}{x^2(x + 1)} = \frac{A}{x^2} + \frac{B}{x} + \frac{C}{x + 1}\)

とします。この後は,上と同様に分母を払って係数を決めていきます。

\(1 = A(x + 1) + Bx(x + 1) + Cx^2\ \cdots\ {\small (3.1)}\)

ここで,\(x = 0\) を代入すると,\(A = 1\) が得られます。

次に,\(x = -1\) を代入すると,\(C = 1\) が得られます。

ところが,\(B\) の値を直接求められるような \(x\) の値がありません。仕方がないので,適当な値を \(x\) に代入します。 \(x = 1\) を代入しましょう。 \[\begin{eqnarray} && 1 = 2A + 2B + C \\[2px] && 1 = 2\cdot 1 + 2B + 1 \\[2px] ∴\quad && B = -1 \\[2px] ∴\quad && \frac{1}{x^2(x + 1)} = \frac{1}{x^2} - \frac{1}{x} + \frac{1}{x + 1} \end{eqnarray}\]

と部分分数分解することができます。

課題3

次の式を満たす定数 \(A\)\(B\)\(C\) を求めることにより,与式を部分分数分解しましょう。

1. \(\displaystyle \frac{5x^2 + 3x + 1}{x^2(x + 1)} = \frac{A}{x^2} + \frac{B}{x} + \frac{C}{x + 1}\) 解答 隠す

2. \(\displaystyle \frac{x}{(x - 1)^2(x - 2)} = \frac{A}{(x - 1)^2} + \frac{B}{x - 1} + \frac{C}{x - 2}\) 解答 隠す

3. \(\displaystyle \frac{x^2}{(x + 1)^3} = \frac{A}{(x + 1)^3} + \frac{B}{(x + 1)^2} + \frac{C}{x + 1}\) 解答 隠す

Last modified: Thursday, 15 April 2021, 10:25 AM