14 関数のグラフ(増減・凹凸)
本時の目標
- 1次導関数の符号と関数の増減の関係を,平均値の定理を用いて説明することができる。
- 2次導関数の符号とグラフの凹凸との関係を理解する。
- 1次導関数,2次導関数の符号から,関数の増減,極値,凹凸,変曲点を調べ,グラフを描くことができる。
基礎数学の第21回と第22回で3次関数・4次関数を扱い,その中で,導関数の符号と関数の増減の関係,増減表の書き方,グラフの描き方などを学びました。ここでは,関数の特徴を更に調べ,様々な関数のグラフを描きます。
関数の増減
導関数の符号と関数の増減の関係について,基礎数学では,3次関数のグラフと接線を描いて接点を移動させながら視覚的に捉えました。すでに平均値の定理を学んでいますので,ここでは,平均値の定理を用いて,導関数の符号と関数の増減の間に次の関係があることを,式の上で証明することを試みます。
\(f'(x) > 0\) となる区間で \(f(x)\) は増加し(グラフは右上がり),\(f'(x) < 0\) となる区間で \(f(x)\) は減少する(グラフは右下がり)。
平均値の定理による証明
関数 \(f(x)\) ついて,\(a < x < b\) で \(f'(x) > 0\) であるとします。この区間で \(f(x)\) が増加であるとは
\(a \leqq x_1 < x_2 \leqq b\ \Rightarrow \ f(x_1) < f(x_2)\tag{1}\)
が成り立つということです。平均値の定理を用いると
\(\displaystyle \frac{f(x_2) - f(x_1)}{x_2 - x_1} = f'(c)\quad (x_1 < c < x_2) \tag{♪}\)
を満たす \(c\) が存在し,\(a < c < b\) ですから \(f'(c) > 0\) です。したがって \((1)\) が成り立ちます。
次に \(a < x < b\) で \(f'(x) < 0\) であるとします。この区間で \(f(x)\) が減少であるとは
\(a \leqq x_1 < x_2 \leqq b\ \Rightarrow \ f(x_1) > f(x_2) \tag{2}\)
が成り立つということです。上と同様に平均値の定理を用いると \((♪)\)を満たす \(c\) が存在し,今度は \(f'(c) < 0\) です。したがって \((2)\) が成り立ちます。
課題1
復習を兼ねて3次関数のグラフを1つ描いておきましょう。
\(f(x) = x^3 - 3x^2\)
グラフの凹凸
3次関数 \(f(x) = x^3 - 3x^2\) のグラフを見ると,\(x < 0\) と \(2 < x\) の範囲で増加しています。ところが,2つの区間を見比べると,ともに増加ではあるのですが増加の仕方が異なっています。何が異なっているのでしょうか?
\(x\)
\(y\)
\(y = x^3 - 3x^2\)
同様に,指数関数 \(f(x) = e^x\) と対数関数 \(f(x) = \log x\) とを比較しても,ともに増加関数でありながら増加の仕方が異なっています。
\(x\)
\(y\)
\(y = e^x\)
\(y = \log x\)
このような違いをどのように言い表せばよろしいでしょうか?
実は 凸 という表現を使います。下の図のように,指数関数 \(f(x) = e^x\) のグラフと交わる直線を1本引きます。すると,直線はどのように引いても,2つの交点の間でグラフは直線の下にあります。このような状況を 下に凸 といいます。
\(x\)
\(y\)
他方,対数関数 \(f(x) = \log x\) のグラフと交わる直線を引くと,2交点の間でグラフは直線の上にあります。このような状況を 上に凸 といいます。
3次関数 \(f(x) = x^3 - 3x^2\) の増加の仕方の違いについても,上に凸・下に凸という言葉で表すことができます。さて,それでは,ここで問題です。
課題2
3次関数 \(f(x) = x^3 - 3x^2\) について,グラフが上に凸である区間と下に凸である区間をそれぞれ答えましょう。
グラフの凹凸については,2次導関数 \(f''(x)\) の符号が関係し,次のことが成り立ちます。
\(f''(x) > 0\) となる区間で \(f(x)\) のグラフは下に凸であり,\(f''(x) < 0\) となる区間で \(f(x)\) のグラフは上に凸である。
なお,グラフの凹凸が入れ替わる点を 変曲点 という。
まずは,実際のグラフで,2次導関数の符号と凹凸の関係を見てみましょう。下の図は,3次関数 \(f(x) = x^3 - 3x^2\) のグラフと接線です。←,→ のボタンをクリックすると接点が左・右に移動します。凹凸と接線の傾きの変化の関係を見てください。
\(x\)
\(y\)
\(x = \)
\(f'(x) = \)
\(f''(x) = \)
下に凸の区間では接線の傾きが増加しています。つまり \(f'(x)\) が増加しているので,\(f''(x) > 0\) です。
反対に,上に凸の区間では接線の傾きが減少しています。つまり \(f'(x)\) が減少しているので,\(f''(x) < 0\) です。
2次導関数の符号と凹凸の関係は,上の図で直観的に捉えてもらえれば結構です。ただし,余力のある方は,「\(f''(x) > 0\) の区間でグラフが下に凸になる」証明を下につけておくので頑張りましょう。
平均値の定理による証明
関数 \(f(x)\) について,\(a < x < b\) で \(f''(x) > 0\) であるとします。\(a \leqq x_1 < x_2 \leqq b\) である \(x_1\) と \(x_2\) に対して2点 \(\mbox{A}\left(x_1\mbox{,}f(x_1)\right)\) と \(\mbox{B}\left(x_2\mbox{,}f(x_2)\right)\) を考え,直線 \(\mbox{AB}\) を引きます。\(x_1\) と \(x_2\) の値に関わらず,\(f(x)\) のグラフが直線 \(\mbox{AB}\) の下にあることを示せばよろしいということになります。
直線 \(\mbox{AB}\) の方程式は
\(\begin{array}{l} \displaystyle y - f(x_1) = \frac{f(x_2) - f(x_1)}{x_2 - x_1}(x - x_1) \\ \displaystyle \mbox{∴}\quad y = \frac{f(x_2) - f(x_1)}{x_2 - x_1}(x - x_1) + f(x_1) \end{array}\)
となりますから,\(x_1 < x < x_2\) である \(x\) に対して
\(\displaystyle \frac{f(x_2) - f(x_1)}{x_2 - x_1}(x - x_1) + f(x_1) - f(x) > 0\)
を示します。
平均値の定理から
\(\left\{\begin{array}{l} \displaystyle \frac{f(x) - f(x_1)}{x - x_1} = f'(c) \quad (x_1 < c < x) \\ \displaystyle \frac{f(x_2) - f(x)}{x_2 - x} = f'(d) \quad (x < d < x_2) \end{array}\right.\)
を満たす \(c\) と \(d\) が存在します。さらに \(f''(x) > 0\) の区間では \(f'(x)\) が増加しますから \(f'(c) < f'(d)\) です。ゆえに
\(\begin{array}{l} \displaystyle \frac{f(x) - f(x_1)}{x - x_1} < \frac{f(x_2) - f(x)}{x_2 - x} \\[8px] (x - x_1)\{f(x_2) - f(x)\} \\ \qquad - (x_2 - x)\{f(x) - f(x_1)\} > 0 \\[8px] xf(x_2) - xf(x) - x_1f(x_2) + x_1f(x) \\ \qquad - x_2f(x) + x_2f(x_1) + xf(x) - xf(x_1) > 0 \\[8px] \{f(x_2) - f(x_1)\}x - f(x_2) \cdot x_1 \\ \qquad + f(x_1) \cdot x_2 - f(x)(x_2 - x_1) > 0 \\[8px] \{f(x_2) - f(x_1)\}x - f(x_2) \cdot x_1 + f(x_1) \cdot x_1 \\ \qquad + f(x_1) \cdot x_2 - f(x_1) \cdot x_1 - f(x)(x_2 - x_1) > 0 \\[8px] \{f(x_2) - f(x_1)\}(x - x_1) \\ \qquad + \{f(x_1) - f(x)\}(x_2 - x_1) > 0 \\[8px] \displaystyle \mbox{∴} \quad \frac{f(x_2) - f(x_1)}{x_2 - x_1}(x - x_1) + f(x_1) - f(x) > 0 \end{array}\)
以上で証明終了です。
\(f''(x) < 0\) の区間でグラフが上に凸になることも,同様に示すことができますね。
グラフの描画
これまでのことを踏まえて,関数 \(f(x) = xe^{-x}\) のグラフを描きましょう。グラフを描く際には,増減,極値,凹凸,変曲点及び極限を調べます。
\(f(x) = xe^{-x}\)
\(f'(x) \begin{array}[t]{l} = (x)' \cdot e^{-x} + x \cdot (e^{-x})' \\ = e^{-x} - xe^{-x} \\ = -(x - 1)e^{-x} \end{array}\)
\(f''(x) \begin{array}[t]{l} = -\left\{(x - 1)' \cdot e^{-x} + (x - 1) \cdot (e^{-x})'\right\} \\ = -\left\{e^{-x} - (x - 1)e^{-x}\right\} \\ = (x - 2)e^{-x} \end{array}\)
\(\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|} \hline x & \cdots & 1 & \cdots & 2 & \cdots \\ \hline f'(x) & + & 0 & - & - & - \\ \hline f''(x) & - & - & - & 0 & + \\ \hline f(x) & \nearrow \cap & \displaystyle \frac{1}{e} & \searrow \cap & \displaystyle \frac{2}{e^2} & \searrow \cup \\ \hline \end{array}\)
増減表が書けたのでグラフの概形はほぼ分かりましたが,もう1つだけ調べることがあります。\(x \to -\infty\),\(x \to \infty\) でグラフがどこまで下がるかです。
\(\displaystyle \lim_{x \to -\infty}xe^{-x} = -\infty\) は問題ありません。\(x \to -\infty\) でグラフはどこまでも下がっていきます。
問題は,\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} xe^{-x}\) で,\(\infty \times 0\) という不定形です。不定形ですから,分数の形に書き換えてロピタルの定理を使いましょう。
\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} xe^{-x} \begin{array}[t]{l} \displaystyle = \lim_{x \to \infty} \frac{x}{e^x} \\ \displaystyle = \lim_{x \to \infty} \frac{1}{e^x} \\ = 0 \end{array}\)
グラフは \(x\) の値が大きくなるにつれて,\(x\) 軸に近づいていくということです。したがって,関数 \(f(x) = xe^{-x}\) のグラフは下図のようになります。

課題3
次の関数のグラフを描きましょう。
【参考図書】数学辞典(朝倉書店)/ 理工系入門 微分積分(裳華房)