16 定積分の定義と微積分学の基本定理

本時の目標

  1. 区分求積により図形の面積を計算する方法を知る。
  2. 定積分をリーマン和の極限として理解する。
  3. 定積分からの不定積分の定義を理解する。
  4. 微積分の基本定理を理解する。

区分求積法

2次関数 \(y = x^2\) のグラフ,\(x\) 軸,\(y\) 軸及び直線 \(x = 1\) で囲まれた図形の面積 \(S\) を,区分求積法により求めましょう。

\(x\)

\(y\)

\(y = x^2\)

\(x\)

\(y\)

\(\displaystyle \frac{1}{n}\)

\(\displaystyle \frac{2}{n}\)

\(\displaystyle \frac{3}{n}\)

\(\displaystyle \frac{n - 1}{n}\)

まず,図のように \(0 \leqq x \leqq 1\) の区間を \(n\) 等分し,\(n\) 等分された1区間を底辺として区間の右端の関数の値を高さとする長方形を作ると,\(n\) 個の長方形ができます。これらの長方形を左から順に見ていきます。すると,長方形の底辺の右端は,左から順に\[\frac{1}{n}\mbox{,}\frac{2}{n}\mbox{,}\frac{3}{n}\mbox{,}\cdots\mbox{,}\frac{n - 1}{n}\mbox{,}\frac{n}{n}\]となります。したがって,長方形の高さは左から順に\[\left(\frac{1}{n}\right)^2\mbox{,}\left(\frac{2}{n}\right)^2\mbox{,}\left(\frac{3}{n}\right)^2\mbox{,}\cdots\mbox{,}\left(\frac{n - 1}{n}\right)^2\mbox{,}\left(\frac{n \mathstrut}{n}\right)^2\]となるので,長方形の面積は左から順に\[\frac{1}{n}\left(\frac{1}{n}\right)^2\mbox{,}\frac{1}{n}\left(\frac{2}{n}\right)^2\mbox{,}\frac{1}{n}\left(\frac{3}{n}\right)^2\mbox{,}\cdots\mbox{,}\frac{1}{n}\left(\frac{n - 1}{n}\right)^2\mbox{,}\frac{1}{n}\left(\frac{n \mathstrut}{n}\right)^2\]です。長方形の面積の合計を \(S_n\) とすると,\(S_n\) は和の記号 \(\sum\) を用いて\[S_n = \sum_{k = 1}^{n} \frac{1}{n}\left(\frac{k}{n}\right)^2 = \frac{1}{n^3} \sum_{k = 1}^{n} k^2\]と書けますが\[\sum_{k = 1}^{n} k^2 = \frac{1}{6}n(n + 1)(2n + 1)\]ですから,結局\[S_n = \frac{1}{n^3}\cdot\frac{1}{6}n(n + 1)(2n + 1) = \frac{1}{6}\left(1 + \frac{1}{n}\right)\left(2 + \frac{1}{n}\right)\]となります。

上の図は,\(n\) 等分と言いながら実際には \(10\) 等分で描かれています。当然,並んだ長方形は,\(y = x^2\) のグラフの下側の部分と比較すると出っ張りが随分あります。しかし,\(n\) の値をどんどん大きくしていけば,出っ張りは小さくなって長方形の面積の和は \(y = x^2\) の下側の部分の面積に限りなく近づきます。つまり\[S = \lim_{n \to \infty} S_n\]と言えます。以上のことから\[S = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{6}\left(1 + \frac{1}{n}\right)\left(2 + \frac{1}{n}\right) = \frac{1}{3}\]と題意の図形の面積を求めることができます。

\(x\)

\(y\)

 

スライダーを動かすと分割する数を変えることができます。また,「分割を増やす」ボタンをクリックすると,分割数を1ずつ増やすことができます。細かく分けていったとき,長方形の集まりが題意の図形に近づくことを確認しましょう。

ところで,上の図の最大分割数は100です。ここまで分割しても,出っ張りはまだまだあります。コンピュータを用いて面積を近似的に求めようとすると,このやり方では効率が悪そうです。「収束が遅い」といいます。長方形の代わりに台形で近似すると,収束がもっと早くなります。

ここまでの説明は,\(0 \leqq x \leqq 1\) の区間を \(n\) 等分して小区間の右端で長方形の高さを決めましたが,左端を長方形の高さとしても結果は変わらないことを付け加えておきます。

このように,ある図形の面積や体積を求める際に,微小区間に分けて面積や体積の分かっている図形で近似していくという考え方を 区分求積法 といいます。今日のテーマである 定積分 は区分求積法を更に発展させたものと言えます。

定積分の定義

\(a \leqq x \leqq b\) で定義された関数 \(f(x)\) に対して定積分 \(\displaystyle \int_a^b f(x)\,dx\) を次のように定義します。まず,\[a = x_0 < x_1 < x_2 < \cdots < x_{n - 1} < x_n = b\]となるように \(x_i\ (0 \leqq i \leqq n)\) を定め,つづいて\[\left\{\begin{array}{l} x_0 < c_1 < x_1 \\ x_1 < c_2 < x_2 \\ x_2 < c_3 < x_4 \\ \hspace{2.5em} \vdots \\ x_{n - 1} < c_n < x_n \end{array}\right.\]となるように \(c_i\ (1 \leqq i \leqq n)\) をとります。蛇足ですが念のために・・・ \(c_i\)\(x_{i - 1} < x < x_i\) の区間内であればどこにとっても構いません。このとき\[\sum_{k = 1}^n f(c_i)\left(x_i - x_{i - 1}\right)\]リーマン和 といいます。

リーマン和のイメージを下図に示します。グラフの下のチェックボックスをチェックすると,\(a \leqq x \leqq b\) の区間を分割し微小区間に分けてそれぞれ \(c_i\) のときの値を高さにした長方形が描かれます。

\(x\)

\(y = f(x)\)

\(a\)

\(b\)

微小区間に分けて長方形を表示する

さて,ここで区分求積の場合と同じように分割数を限りなく大きくしていきます。ただし,そのとき注意が必要です。最初の区分求積法の例では,\(0 \leqq x \leqq 1\) の区間を \(n\) 等分しました。ところが,リーマン和は,必ずしも等分の分割ではありません。それぞれの微小区間の幅は異なっていて構いません。上の図を見ると,分割した微小区間の中で,\(a \leqq x \leqq x_1\) の幅が最大に見えます。(間違いなくそのように作図しました。) \(n\) 分割した微小区間の幅の最大値を \(L\) で表すことにします。そして,定積分を考えるときには,\(n \to \infty\) ではなく,\(L \to 0\) となるように分割を増やしていきます。つまり\[\lim_{L \to 0} \sum_{k = 1}^n f(c_i)\left(x_i - x_{i - 1}\right)\]です。この和がある値に収束するならば,\(f(x)\)\(a \leqq x \leqq b\) において積分可能であるといい,極限値を定積分 \(\displaystyle \int_a^b f(x)\,dx\) の値として定義します。また,\(\displaystyle \int_a^b f(x)\,dx\) の値を求めることを 関数 \(f(x)\)\(a\) から \(b\) まで積分する といいます。

ここでは証明なしで用いますが,\(a \leqq x \leqq b\) で連続な関数は,\(a\) から \(b\) まで積分可能です。そして,この定義から,\(a \leqq x \leqq b\) で連続な関数 \(f(x)\) について次のことが成り立つことが分かります。

定積分と面積

\(\displaystyle \int_a^b f(x)\,dx\) の値は

\(a \leqq x \leqq b\) において \(f(x) \geqq 0\) ならば,曲線 \(f(x)\)\(x\) 軸と2直線 \(x = a\)\(x = b\) とで囲まれた部分の面積に等しく,

\(a \leqq x \leqq b\) において \(f(x) \leqq 0\) ならば,曲線 \(f(x)\)\(x\) 軸と2直線 \(x = a\)\(x = b\) とで囲まれた部分の面積に負の符号をつけたものに等しい。

また,\(a \geqq b\) の場合の定積分を次のように定義します。

\(a \geqq b\) の場合の定積分

\(a > b\) のとき \(\displaystyle \int_a^b f(x)\,dx = -\int_b^a f(x)\,dx\)

\(a = b\) のとき \(\displaystyle \int_a^a f(x)\,dx = 0\)

さらには,定積分に関して次が成り立つことも,定義から容易に証明することができます。

1. \(\displaystyle \int_a^b\left\{f(x) \pm g(x)\right\}\,dx = \int_a^b f(x)\,dx \pm \int_a^b g(x)\,dx\)

2. \(\displaystyle \int_a^b cf(x) \,dx = c\int_a^b f(x)\,dx\)

3. \(\displaystyle \int_a^b f(x) \,dx + \int_b^c f(x)\,dx = \int_a^c f(x)\,dx\)

4. \(a \leqq x \leqq b\) において常に \(f(x) \geqq g(x)\) ならば\[\displaystyle \int_a^b f(x) \,dx \geqq \int_a^b g(x)\,dx\]

課題1

上の3つの式 1.,2.,3.,4. の成り立つことを定義から示しましょう。

不定積分と微積分の基本定理

関数 \(f(x)\) の不定積分を次のように定義します。

不定積分の定義

\(\displaystyle \int f(x)\,dx = \int_a^x f(t)\,dt\)

すると,関数 \(f(x)\)\(a\) を含む区間において連続であるとき,この区間において次の式が成り立ちます。

微積分の基本定理

\[\displaystyle \frac{d}{dx}\int_a^x f(t)\,dt = f(x) \tag{♪}\]

証 明

\(\displaystyle F(x) = \int_a^x f(t) \,dt\) とおくと

\(\displaystyle \frac{d}{dx}F(x)\begin{array}[t]{l} \displaystyle = \lim_{h \to 0} \frac{F(x + h) - F(x)}{h} \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0} \frac{1}{h}\left\{\int_a^{x + h} f(t)\,dt - \int_a^x f(t)\,dt\right\} \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0} \frac{1}{h} \left\{\int_x^a f(t) \,dt + \int_a^{x + h} f(t) \,dt\right\} \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0} \frac{1}{h} \int_x^{x + h} f(t) \,dt \end{array}\)

\(h > 0\) のとき

\(f(x)\) が連続な区間を考えているので,\(f(x)\)\(x \leqq t \leqq x + h\) に最小値と最大値をもちます。これらをそれぞれ \(m\)\(M\) とおくと \(x \leqq t \leqq x + h\)\(m \leqq f(t) \leqq M\) が成り立つので「定積分の性質 4.」から\[\begin{array}{c} \displaystyle \int_x^{x + h} m \,dt \leqq \int_x^{x + h} f(t) \,dt \leqq \int_x^{x + h} M \,dx \\ \displaystyle mh \leqq \int_x^{x + h} f(t) \,dt \leqq Mh \\ \displaystyle \mbox{∴}\quad m \leqq \frac{1}{h}\int_x^{x + h} f(t)\,dt \leqq M \end{array}\]となり,したがって\[\lim_{h \to +0} m \leqq \lim_{h \to +0} \frac{1}{h} \int_x^{x + h} f(t) \,dx \leqq \lim_{h \to +0} M\]ところが,\(h \to +0\) のとき\[\lim_{h \to +0}m = \lim_{h \to +0}M = f(x)\]だから \(\displaystyle \lim_{h \to +0} \frac{1}{h} \int_x^{x + h} f(t) \,dt = f(x)\) が成り立ちます。

\(h < 0\) のとき

同様にして \(f(x)\)\(x + h \leqq t \leqq x\) に最小値と最大値をもちます。これらをそれぞれ \(m\)\(M\) とおくと \(x + h \leqq t \leqq x\)\(m \leqq f(t) \leqq M\) が成り立つので\[\begin{array}{c} \displaystyle \int_{x + h}^h m \,dt \leqq \int_{x + h}^x f(t) \,dt \leqq \int_{x + h}^{x} M \,dx \\ \displaystyle \int_x^{x + h} M \,dx \leqq \int_x^{x + h} f(t) \,dt \leqq \int_x^{x + h} m \,dt \\ \displaystyle Mh \leqq \int_x^{x + h} f(t) \,dt \leqq mh \\ \displaystyle \mbox{∴}\quad m \leqq \frac{1}{h}\int_x^{x + h} f(t)\,dt \leqq M \end{array}\]となり,したがって\[\lim_{h \to -0} m \leqq \lim_{h \to -0} \frac{1}{h} \int_x^{x + h} f(t) \,dx \leqq \lim_{h \to -0} M\]ところが,\(h \to -0\) のとき\[\lim_{h \to -0}m = \lim_{h \to -0}M = f(x)\]だから \(\displaystyle \lim_{h \to -0} \frac{1}{h} \int_x^{x + h} f(t) \,dt = f(x)\) が成り立ちます。

以上から,両側極限値が一致して\[\lim_{h \to 0} \frac{1}{h} \int_{x}^{x + h} f(t) \,dt = f(x)\]が示されたので \((♪)\) が成り立ちます。

基本定理は幾つかの同値な形に変形することができますので,そのことを見ていきましょう。

基礎数学で学んだように \(F'(x) = f(x)\) を満たす関数 \(F(x)\) を関数 \(f(x)\) の原始関数といい,\(f(x)\) の1つの原始関数を \(F(x)\) とすると \(f(x)\) の全ての原始関数は \(F(x) + C\) と表すことができました。

基本定理 \((♪)\) から,\(f(x)\) の不定積分 \(\displaystyle \int_a^x f(t) \,dx\)\(f(x)\) の原始関数の1つです。したがって\[\int_a^x f(t) \,dt = F(x) + C\]と書くことができます。ここで,\(x = a\) とすると\[\begin{array}{c} \displaystyle \int_a^a f(t) \,dt = F(a) + C \\ 0 = F(a) + C \\ \mbox{∴}\quad C = -F(a) \end{array}\]一方,\(x = b\) とすると\[\int_a^b f(t) \,dt = F(b) + C = F(b) - F(a)\]以上のことから,連続関数について次が成り立ちます。

\[\begin{array}{l} \displaystyle \int f(x) \,dx = F(x) + C \\ \displaystyle \int_a^b f(x) \,dx = \Big[F(x)\Big]_a^b = F(b) - F(a)\end{array} \tag{♩}\]

\(F(x)\)\(f(x)\) の原始関数)

本講座では,基本的に連続関数を扱いますので,定積分・不定積分の実際の計算には (♩) を用います。

【参考図書】数学辞典(朝倉書店)/理工系入門 微分積分(裳華房)

Last modified: Friday, 5 March 2021, 5:06 PM