20 有理関数の積分

本時の目標

  1. 有理関数の積分に割り算を利用することができる。
  2. 有理関数の積分に部分分数分解を利用することができる。
  3. 有理関数の積分に \[\displaystyle \int \frac{1}{1 + x^2}\,dx = \tan^{-1} x + C\] を利用することができる。

本講座での積分は,連続関数を扱っています。連続関数 \(f(x)\) については,\(f(x)\) の原始関数の1つを \(F(x)\) とすると \(f(x)\) の定積分・不定積分は次のように求められることを,第16回に学びました。

\[\begin{array}[t]{l} \displaystyle \int_a^b f(x) \,dx = \Big[F(x)\Big]_a^b = F(b) - F(a) \\ \displaystyle \int f(x) = F(x) + C \end{array}\]

ところが,原始関数が求められる関数は限られています。限られた関数の不定積分を見つけるための工夫が置換積分であり,部分積分なのです。ここからの3回は,有理関数,無理関数そして三角関数について,置き換えの工夫や変形の工夫を学んでいきます。まず,今回は,有理関数すなわち多項式の分数式で表された関数の積分を扱います。

割り算による変形

分数式の計算においては,分子の次数を分母の次数より低くして計算することが鉄則です。積分の計算についても同様のことが言えます。例えば・・・

例題1

不定積分 \(\displaystyle \int \frac{2x^2 + x + 1}{x + 1} \,dx\) を求めましょう。

解 答

見て分かるとおり,分子と分母の次数を比べると分子が2次で分母が1次です。このようなときは,割り算をします。

商が \(2x - 1\),余りが \(2\) です。したがって\[\frac{2x^2 + x + 1}{x + 1} = 2x - 1 + \frac{2}{x + 1}\]となり,この変形により積分の計算ができるようになります。\[\int \frac{2x^2 + x + 1}{x + 1} \,dx \begin{array}[t]{l} \displaystyle = \int \left(2x - 1 + \frac{2}{x + 1}\right) \,dx \\[8px] \displaystyle = x^2 - x + 2\log|\,x + 1\,| + C \end{array}\]

部分分数分解

\[\displaystyle \int \frac{1}{x^2 - 1}\,dx\]

この不定積分の被積分関数の分子・分母を見ると,分子の次数が分母の次数より低くなっています。しかし,そのままでは積分できません。

分母の \(x^2 - 1\)\((x - 1)(x + 1)\) と因数分解することができます。このような場合は,被積分関数を部分分数分解することで積分が可能になります。部分分数分解は基礎数学の第4回で学びました。忘れてしまった方は,こちら で復習しましょう。

例題2

不定積分 \(\displaystyle \int \frac{1}{x^2 - 1} \,dx\) を求めましょう。

解 答

\[\frac{1}{x^2 - 1} = \frac{1}{(x - 1)(x + 1)} = \frac{a}{x - 1} + \frac{b}{x + 1}\]とおき,分母を払って整理します。\[1 = a(x + 1) + b(x - 1)\]ここで,\(x = 1\) とすると \(1 = 2a\) ∴ \(\displaystyle a = \frac{1}{2}\)
同様に,\(x = -1\) とすると \(1 = -2b\) ∴ \(\displaystyle b = -\frac{1}{2}\)

したがって,\(\displaystyle \displaystyle \frac{1}{x^2 - 1} = \frac{1}{2}\left(\frac{1}{x - 1} - \frac{1}{x + 1}\right)\)\[\mbox{∴} \quad \begin{array}[t]{l} \displaystyle \int \frac{1}{x^2 - 1} \,dx \\ \displaystyle = \frac{1}{2} \int \left(\frac{1}{x - 1} - \frac{1}{x + 1}\right) \,dx \\ \displaystyle = \frac{1}{2}\left(\log |\,x - 1\,| - \log |\,x + 1\,|\right) + C \end{array}\]

例題3

不定積分 \(\displaystyle \int \frac{4x^2 + x + 1}{x^3 - 1} \,dx\) を求めましょう。

解 答

\(x^3 - 1\) を因数分解すると \((x - 1)(x^2 + x + 1)\) という1次と2次の因数になります。このようなときには,次のように部分分数分解します。\[\frac{4x^2 + x + 1}{x^3 - 1} = \frac{a}{x - 1} + \frac{bx + c}{x^2 + x + 1}\]分母を払って整理すると\[4x^2 + x + 1 = a(x^2 + x + 1) + (bx + c)(x - 1)\]\(x = 1\) を代入して \(a = 2\)
\(x = 0\) を代入して \(1 = a - c\) ∴ \(c = 1\)
\(x = -1\) を代入して \(4 = a + 2b - 2c\) ∴ \(b = 2\)\[\begin{array}{l} \displaystyle \int \frac{4x^2 + x + 1}{x^3 - 1} \,dx \\ \displaystyle = \int \left(\frac{2}{x - 1} + \frac{2x + 1}{x^2 + x + 1}\right) \,dx \\ \displaystyle = 2\log |\,x - 1\,| + \int \frac{(x^2 + x + 1)'}{x^2 + x + 1} \,dx \\ \displaystyle = 2\log |\,x - 1\,| + \log (x^2 + x + 1) + C \end{array}\]

\[\displaystyle \int \frac{f'(x)}{f(x)} \,dx = \log |\,f(x)\,| + C\]

この形の積分が頻繁に現れます。置き換えをせずに計算ができるようになりましょう。

\(\displaystyle \int \frac{1}{1 + x^2}\,dx\)

例題3 は \(\displaystyle \int \frac{2x + 1}{x^2 + x + 1} \,dx\) を \(\displaystyle \int \frac{f'(x)}{f(x)}\,dx\) の形になるように作ったから積分できたのだろう!! という疑念をもった方もいるでしょう。実は・・・そのとおり です。しかし,それでは分子が \(2x + 1\) 以外のときは積分できないのか? というとそのようなことはありません。

すでに,第18回 課題1 10. で次の積分を扱っています。

\[\displaystyle I = \int \frac{x + 3}{x^2 + 1} \,dx\]

\(I \begin{array}[t]{l} \displaystyle = \int \left( \frac{x}{x^2 + 1} + \frac{3}{x^2 + 1}\right) \,dx \\ \displaystyle = \int \left\{\frac{1}{2} \cdot \frac{(x^2 + 1)'}{x^2 + 1} + 3 \cdot \frac{1}{x^2 + 1} \right\}\,dx \\ \displaystyle = \frac{1}{2} \log (x^2 + 1) + 3\tan^{-1}x + C \end{array}\)

そして,\(\displaystyle \int \frac{1}{x^2 + x + 1} \,dx\)\(\displaystyle \int \frac{1}{x^2 + 1} \,dx\) は親戚なのです。\[x^2 + x + 1 = \left(x + \frac{1}{2}\right)^2 + \frac{3}{4}\]ですから,\(\displaystyle x + \frac{1}{2} = \frac{\sqrt{3}}{2}u\) という置き換えをします。すると \(\displaystyle dx = \frac{\sqrt{3}}{2}\,du\) であり\[\displaystyle \int \frac{1}{x^2 + x + 1} \,dx \begin{array}[t]{l} \displaystyle = \int \frac{1}{(x + \frac{1}{2})^2 + \frac{3}{4}}\,dx \\ \displaystyle = \int \frac{1}{\frac{3}{4}u^2 + \frac{3}{4}} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}\,du \\ \displaystyle = \frac{\cancel{4}_2}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{\cancel{2}} \int \frac{1}{u^2 + 1} \,du \\ \displaystyle = \frac{2\sqrt{3}}{3} \, \tan^{-1} u + C \\ \displaystyle = \frac{2\sqrt{3}}{3} \, \tan^{-1} \frac{2x + 1}{\sqrt{3}} + C \end{array}\]

少々複雑ですが,積分できますね。これにより,例えば \(\displaystyle \int \frac{4x + 3}{x^2 + x + 1} \,dx\) のような積分が出て来ても\[\begin{array}[t]{l} \displaystyle \int \frac{4x + 3}{x^2 + x + 1}\,dx \\ \displaystyle = \int \frac{2(2x + 1) + 1}{x^2 + x + 1}\,dx \\ \displaystyle = 2\int \frac{(x^2 + x + 1)'}{x^2 + x + 1}\,dx + \int \frac{1}{x^2 + x + 1}\,dx \\ \displaystyle = 2\log (x^2 + x + 1) + \frac{2\sqrt{3}}{3} \, \tan^{-1} \frac{2x + 1}{\sqrt{3}} + C \end{array}\]と変形して解決です。

以上,割り算,部分分数分解,\(\displaystyle \frac{1}{x^2 + 1}\) の積分の3つをマスターすることが,有理関数の積分にとってはマストです。

問題演習

課題1 次の不定積分を求めましょう。

  1. \(\displaystyle \int \frac{x}{x + 1} \,dx\) 解答 隠す
  2. \(\displaystyle \int \frac{x^2}{x + 2} \,dx\) 解答 隠す
  3. \(\displaystyle \int \frac{x^3 + x^2 + 5x + 4}{x^2 + 4} \,dx\) 解答 隠す
  4. \(\displaystyle \int \frac{1}{(x - 3)(x + 1)} \,dx\) 解答 隠す
  5. \(\displaystyle \int \frac{1}{(x - 1)(x + 2)(x + 3)} \,dx\) 解答 隠す
  6. \(\displaystyle \int \frac{2x^2 + x + 1}{(x + 1)(x^2 + 1)} \,dx\) 解答 隠す
  7. \(\displaystyle \int \frac{1}{(x + 1)(x^2 + 1)} \,dx\) 解答 隠す
  8. \(\displaystyle \int \frac{1}{a^2 + x^2} \,dx\)\(a\) は定数) 解答 隠す
Last modified: Friday, 5 March 2021, 5:07 PM