本時の目標

  1. 区分求積法により,曲線 \(y = f(x)\) の長さ \(L\)\[L = \int_a^b \sqrt{1 + \left\{f'(x)\right\}^2} \,dx\]で求められることを理解し,放物線やカテナリーなどの曲線の長さを求めることができる。
  2. 媒介変数表示された曲線の長さ \(L\)\[L = \int_{t_1}^{t_2} \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2}\hspace{0.5em}dt\]で求めらることを理解し,サイクロイドなどの曲線の長さを求めることができる。

曲線の長さ

下図において,曲線は関数 \(f(x)\) のグラフであるとします。区間 \(a \leqq x \leqq b\) における,この曲線の長さ(青色の部分の長さ)を求めることを考えましょう。区分求積法を用いますので,まず,\(a \leqq x \leqq b\) の区間を \(n\) 等分します。下の図は見やすくするために4等分に止めてありますので,イメージできる方はもっと細かく分割された状態を考えてください。\(n\) 等分した \(x\) 座標を左から順に\[a = x_0 \mbox{,} x_1 \mbox{,} x_2 \mbox{,} \cdots \mbox{,} x_i \mbox{,} x_{i + 1} \mbox{,} \cdots \mbox{,} x_n = b\]とし,点 \(\left(x_i \mbox{,} f(x_i)\right)\) をそれぞれ \(\mbox{P}_i\) とします。さらに,2点 \(\mbox{P}_i\)\(\mbox{P}_{i + 1}\) を結んで,下図のような折れ線を作ります。折れ線の線分1本ずつの長さを求めて,それらの和を作り,さらにその和について \(n \to \infty\) の極限をとることによって曲線の長さを求めよう・・・という考え方です。\[\mbox{P}_i \mbox{P}_{i + 1}\!\!\!^2 = \left(x_{i + 1} - x_i\right)^2 + \left\{f(x_{i + 1}) - f(x_i)\right\}^2\]となり,ここで \(x_{i + 1} - x_i = \Delta x\) とおくと\[\mbox{P}_i \mbox{P}_{i + 1} \begin{array}[t]{l} = \sqrt{(\Delta x)^2 + \left\{f(x_i + \Delta x) - f(x_i)\right\}^2} \\ \displaystyle = \sqrt{1 + \left\{\frac{f(x_i + \Delta x) - f(x_i)}{\Delta x}\right\}^2} \hspace{0.5em}\Delta x \end{array}\]

が成り立ちます。したがって,関数 \(f(x)\) のグラフの \(a \leqq x \leqq b\) に対応する部分の長さ \(L\) は次の極限値で求められることが分かります。\[L = \lim_{n \to \infty} \sum_{i = 0}^{n - 1} \sqrt{1 + \left\{\frac{f(x_i + \Delta x) - f(x_i)}{\Delta x}\right\}^2}\hspace{0.5em}\Delta x\]

\(n \to \infty\) のとき \(\Delta x \to 0\) であり \(\displaystyle \lim_{\Delta x \to 0} \frac{f(x + \Delta x) - f(x)}{\Delta x} = f'(x)\) ですから\[L = \int_a^b \sqrt{1 + \left\{f'(x)\right\}^2}\,dx\]が成り立ちます。(ちょっとインチキっぽい\(\cdots\)というか\(\cdots\)誤魔化している f^^;)

曲線の長さ

さぁ,それでは,この式を使って曲線の長さを求めましょう。となるのですが・・・実は,根号を含む関数の積分になるので,根号が外れるような特別な関数以外はなかなか厄介な計算になります。例えば,放物線 \(\displaystyle f(x) = \frac{1}{2}x^2\)\(-1 \leqq x \leqq 1\) に対応する部分の長さ \(L\) は・・・。\[L = \int_{-1}^1 \sqrt{1 + x^2}\,dx\]となります。ここまでは問題なし。ところが,「21 無理関数の積分」で計算したように,この積分の計算はそれほど簡単ではありません。「21 無理関数の積分」から不定積分をそのまま貰ってきましょう。\[\int \sqrt{1 + x^2}\,dx = \frac{1}{2}\left\{x\sqrt{1 + x^2} + \log \left(x + \sqrt{1 + x^2}\right)\right\} + C\]さらに,放物線の対称性を考慮して\[L \begin{array}[t]{l} \displaystyle = 2\left[ \frac{1}{2}\left\{x\sqrt{1 + x^2} + \log \left(x + \sqrt{1 + x^2}\right)\right\}\right]_0^1 \\ \displaystyle = \sqrt{2} + \log\left(1 + \sqrt{2}\right) \end{array}\]

放物線の長さくらい簡単に求められだろう,と安直に考えるととんでもないことになります。下の課題は,積分の計算が多少楽になるように工夫してありますので,ご安心を!!。上に倣って,曲線の長さを求めてみましょう。

課題1 次の曲線の長さを求めましょう。

  1. 関数 \(\displaystyle f(x) = \frac{e^x + e^{-x}}{2}\) のグラフの \(-1 \leqq x \leqq 1\) に対応する部分
    この関数は双曲線関数の \(\cosh x\) です。そのグラフは,懸垂曲線(カテナリー)と呼ばれる曲線の一つです。長さを求める前に,GeoGebra を使って曲線の形を掴んでおきましょう。 解答 隠す
  2. 関数 \(\displaystyle f(x) = \sqrt{x^3}\) のグラフの \(0 \leqq x \leqq 1\) に対応する部分 解答 隠す

媒介変数表示された曲線の長さ

\(x\)\(y\) がそれぞれ \(t\) の関数で与えられていて,\(x\)\(t\) の値の対応が\[\begin{array}[t]{c|ccc} x & a & \to & b \\ \hline t & t_1 & \to & t_2 \end{array}\]である場合を考えましょう。\[L \begin{array}[t]{l} \displaystyle = \int_a^b \sqrt{1 + \left(\frac{dy}{dx}\right)^2}\,dx \\ \displaystyle = \int_{t_1}^{t_2} \sqrt{1 + \left(\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}\right)^2}\hspace{0.5em}\frac{dx}{dt}\cdot dt \\ \displaystyle = \int_{t_1}^{t_2} \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2} \hspace{0.5em}dt \end{array}\]

媒介変数表示された曲線の長さ

\(\displaystyle L = \int_{t_1}^{t_2} \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2} \hspace{0.5em}dt\)

物理などで,質点 \(\mbox{P}\) の位置ベクトルが時刻 \(t\) の関数として \(\boldsymbol{P} = \left(x(t)\mbox{,}y(t)\right)\) で与えられているとき,質点 \(\mbox{P}\) の速度ベクトルが \(\displaystyle \boldsymbol{v} = \left(\frac{dx}{dt}\mbox{,}\frac{dy}{dt}\right)\) であることを学びました。\[\sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2} = \left\|\boldsymbol{v}\right\|\]ですから,速度ベクトルの大きさ(つまり速さ)を積分すると質点の移動距離を求めることができる・・・ということと上の式は一致しています。

課題2 次の曲線の長さを求めましょう。

  1. \(\left\{\begin{array}{l} x = t - \sin t \\ y = 1 - \cos t \end{array}\right.\quad \left(0 \leqq t \leqq 2\pi\right)\)
  2. この曲線はサイクロイドと呼ばれるものです。 解答 隠す

  3. \(\displaystyle \left\{\begin{array}{l} x = \cos^3 t \\ y = \sin^3 t \end{array}\right.\quad \left(0 \leqq t \leqq \frac{\pi}{2}\right)\)
  4. この曲線はアステロイドと呼ばれるものです。 解答 隠す

最終更新日時: 2021年 05月 31日(月曜日) 12:49