本時の目標

  1. 2次関数 \(y = ax^2 + bx + c\) の式を平方完成して,\(y = a(x - p)^2 + q\) の形に変形することができる。
  2. 2次関数 \(y = ax^2 + bx + c\) のグラフを,頂点の座標,\(x\) 切片及び \(y\) 切片を求めて描くことができる。
  3. 2次関数の最大値と最小値を,グラフから読み取ることができる。

頂点の座標・軸の方程式・座標軸との交点の座標

課題1

下の図は,2次関数 \(y = x^2 - 4x + 3\) のグラフです。このグラフについて,次のものを求めましょう。求める順は,1~4でなくて構いません。求められるものから求めてください。

  1. 頂点 \(\mbox{A}\) の座標
  2. \(l\) の方程式
  3. \(y\) 軸との交点 \(\mbox{B}\) の座標
  4. \(x\) 軸との交点 \(\mbox{C}_1\)\(\mbox{C}_2\) の座標

2次関数のグラフを 放物線 といいました。上の問いにある4つの要素は,放物線を決定する上でいずれも重要なものですが,2次関数の最大値や最小値を考えるときには頂点の座標が決め手になります。そこで,頂点の座標の求め方を考えてみましょう。皆さんは,どのように頂点の座標を求めたでしょう?

\(x\) 軸との交点から頂点の座標を求める

グラフと \(x\) 軸との2交点の座標が分かれば,頂点の \(x\) 座標を知ることができます。なぜなら,放物線には左右が対象であるという性質があり,放物線の軸は2交点の中点を通るからです。\(x\) 軸は,\(y = 0\) で表される直線なので,\(x\) 軸との交点の \(x\) 座標は,2次方程式

\(x^2 - 4x + 3 = 0\)

の解として得られます。これを解くと

\(\begin{array}{c} (x - 1)(x - 3) = 0 \\ \mbox{∴}\quad x = 1,\quad 3 \end{array}\)

しがって,軸が \(x = 2\) となります。これを \(y = x^2 - 4x + 3\) に代入すれば \(y = -1\) となって,頂点の座標 \((2,-1)\) が得られます。

しかし,この方法では,グラフが \(x\) 軸と交わらないときに頂点の座標を求めることができません。

平方完成による変形から頂点の座標を求める

\(y = x^2 - 4x + 3\) は,平方完成により次のように変形することができます。

\(y \begin{array}[t]{l} = (x^2 - 4x) + 3 \\ = (x - 2)^2 - 4 + 3 \\ = (x - 2)^2 - 1 \end{array}\)

これより,頂点の座標が \((2,-1)\) であることが分かります。・・・が,なぜ \((2,-1)\) になるのか?を理解するためには,平行移動について知ることが必要です。

\(y = x^2\)
\((p,\ q)\)
\(\mbox{P}(x,\ y)\)
\(\mbox{P'}(X,\ Y)\)

上の図のように,点 \(\mbox{P}(x,\ y)\)\(x\) 軸正の方向に \(p\) だけ,\(y\) 軸正の方向に \(q\) だけ平行移動して点 \(\mbox{P}'(X,\ Y)\) に写ったとします。すると,

\(\left\{\begin{array}{l} X = x + p \\ Y = y + q \end{array}\right.\)

が成り立ちます。これを 「\(x = \quad \)」「\(y = \quad \)」の形に変形して次の式を得ます。

\(\left\{\begin{array}{l} x = X - p \\ y = Y - q \end{array}\right.\ \cdots \ (*)\)

\(\mbox{P}\) が放物線 \(y = x^2\) の上にあれば,\((*)\) をこの式に代入して

\(\begin{array}{c} Y - q = (X - p)^2 \\ Y = (X - p)^2 + q \end{array}\)

の成り立つことが分かります。このことは,放物線 \(y = x^2\)(図の中の紺色のグラフ)を \(x\) 軸正の方向に \(p\) だけ,\(y\) 軸正の方向に \(q\) だけ平行移動したグラフ(図の中の赤色のグラフ)が関数 \(y = (x - p)^2 + q\) のものであるということを表しています。

このとき,放物線 \(y = x^2\) の頂点 \((0,\ 0)\) は点 \((p,\ q)\) に移動しています。

したがって,関数 \(y = (x - 2)^2 - 1\) のグラフの頂点は \((2,-1)\) だと分かります。さらに,一般的に次のことが成り立ちます。

2次関数 \(y = a(x - p)^2 + q\) のグラフは・・・

2次関数 \(y = ax^2\) のグラフを \(x\) 軸正の方向に \(p\) だけ,\(y\) 軸正の方向に \(q\) だけ平行移動したものであり,その頂点の座標は \((p,\ q)\),軸の方程式は \(x = p\) である。

平方完成

平方完成に用いるのは,展開公式

\((x + \alpha)^2 = x^2 + 2\alpha x + \alpha^2\)

です。この式を移項により少々変形すると,次の式になります。

\(x^2 + 2\alpha x = (x + \alpha)^2 - \alpha^2\)

ここで改めて \(2\alpha = p\) とおけば,\(\displaystyle \alpha = \frac{p}{2}\) となり

\[\displaystyle x^2 + px = \left(x + \frac{p}{2}\right)^2 - \left(\frac{p}{2}\right)^2\]

が成り立ちます。右辺の \(\displaystyle \frac{p}{2}\) は,左辺の「\(x\) の係数の半分」と覚えましょう。

それでは,この式を用いて一般の2次関数

\(y = ax^2 + bx + c \quad (a \ne 0)\)

について,平方完成の手順を確認しましょう。下の枠内に,その手順が表示されます。FWD ボタンを押して手順を1つずつ確認してください。

\(\hspace{2em}y \begin{array}[t]{l} = ax^2 + bx + c \end{array}\)

同じ変形を \(a\)\(b\)\(c\) に数値の入った式でやってみましょう。

\begin{eqnarray*} y &=& 2x^2 + 6x + 1 \end{eqnarray*}

グラフを描きましょう

課題2

次の2次関数について,頂点の座標と \(y\) 切片を求めてグラフを描きましょう。

  1. \(y = x^2 + 2x - 1\) 解答 隠す
  2. \(y = -3x^2 + 12x - 5\) 解答 隠す
  3. \(y = x^2 + 3x + 3\) 解答 隠す
  4. \(y = 3x^2 - 6x - 4\) 解答 隠す

\(\mbox{GeoGebra}\)\(\mbox{CompleteSqure}\) コマンド を使うと,2次関数を平方完成することができます。

CompleteSquare

  • 書式:\(\mbox{CompleteSquare}\)(2次関数)
  • 命令:2次関数の式を平方完成する。
  • 例1:\(\mbox{CompleteSquare}(2x^2 + x + 3)\)
  • 出力:\(\displaystyle 2 \; \left(x + \frac{1}{4} \right)^{2} + \frac{23}{8}\)

関数の最大値・最小値

グラフが描けるようになると,そのグラフを活用して様々な問題を考えられるようになります。最大値や最小値を求める,不等式を解くなどのことです。まず,2次関数の最大値・最小値を求めましょう。

どのような関数にも最大値と最小値があるかと言えば,それは違います。いずれか一方だけがある場合やいずれもないという場合もあります。

例題1

次の2次関数について,最大値・最小値がある場合にそれを求めましょう。

  1. \(y = -x^2 + 2x + 1\)
  2. \(y = x^2 -3x\quad(0 \leqq x \leqq 4)\)

例題1-1の解答

\(y \begin{array}[t]{l} = -x^2 + 2x + 1 \\ = -\{x^2 - 2x\} + 1 \\ = -\{(x - 1)^2 - 1\} + 1 \\ = -(x - 1)^2 + 1 + 1 \\ = -(x - 1)^2 + 2 \end{array}\)

\(x = 1\) のとき 最大値 \(2\) をとり,
最小値はない。

例題1-2の解答

\(y \begin{array}[t]{l} = x^2 - 3x \\ = \displaystyle \left(x - \frac{3}{2}\right)^2 - \left(\frac{3}{2}\right)^2 \\ \displaystyle = \left(x - \frac{3}{2}\right)^2 - \frac{9}{4} \end{array}\)

定義域を考慮してグラフを描く

\(x = 4\) のとき 最大値 \(4\) をとり,
\(\displaystyle x = \frac{3}{2}\) のとき 最小値 \(\displaystyle -\frac{9}{4}\) をとる。

課題3

次の2次関数について,最大値・最小値がある場合にそれを求めましょう。

  1. \(y = x^2 + 2x\) 解答 隠す
  2. \(y = -x^2 + 4x - 4\) 解答 隠す
  3. \(y = x^2 - 6x + 7\quad(1 \leqq x \leqq 4)\) 解答 隠す
  4. \(y = -x^2 - 2x + 1\quad(-3 \leqq x \leqq 1)\) 解答 隠す
  5. \(y = 2x^2 + 4x + 1\quad(0 \leqq x \leqq 1)\) 解答 隠す
  6. \(y = -3x^2 + 6x\quad(0 \leqq x \leqq 3)\) 解答 隠す
  7. \(y = 3x^2 - 5x + 2\quad(1 \leqq x \leqq 3)\) 解答 隠す
  8. \(y = -2x^2 - 3x - 1\quad(-2 \leqq x \leqq 1)\) 解答 隠す

発展問題

2次関数の最大値・最小値に関して,次の問いに答えましょう。

  1. \(k\) を定数として,\(0 \leqq x \leqq 2\) における \(x\) の2次関数 \(y = x^2 - 2kx + 1\) の最大値と最小値を求めましょう。
  2. \(k\) を定数として,2次関数 \(y = x^2 - 2kx + k + 2\) について,区間 \(0 \leqq x \leqq 1\) における最大値と最小値を求めましょう。
  3. \(k\) を定数として,\(k \leqq x \leqq k + 1\) における \(x\) の2次関数 \(y = x^2 - 2x + 1\) の最大値と最小値を求めましょう。
  4. \(k\) を定数として,2次関数 \(y = -x^2 - 2x + 1\) の区間 \(k \leqq x \leqq k + 1\) における最大値と最小値を求めましょう。
Last modified: Tuesday, 10 May 2022, 1:29 PM