テキスト(2次不等式の解)
本時の目標
- 2次関数のグラフを用いて2次不等式を解くことができる。
- 2次不等式の解を判別式と関連付けて考えることができる。
2次関数のグラフを用いて2不等式を解く
例題1
2次関数 \(y = x^2 - 4x + 3\) のグラフを用いて,2次不等式
\(x^2 - 4x + 3 < 0\)
の解を求めましょう。
まず,2次関数 \(y = x^2 - 4x + 3\) のグラフをノートに描いてください。
描けましたか? 描けたら,下の 入力ボックス に式「x^2 - 4x + 3」を入力してください。\(y = x^2 - 4x + 3\) のグラフが描かれます。
\(y = \)
勿論,皆さんが描いたグラフと同じになっているはずです。しかし,問題は「皆さんがこのグラフをどのように描いたか?」です。さらに言えば,「グラフを描くために,関数 \(y = x^2 - 4x + 3\) の式をどのように変形したか?」です。
このことは,不等式 \(x^2 - 4x + 3 < 0\) はどのように解けるか?に関係しています。不等式を解くためには,上のグラフのどこを見れば良いのでしょうか?
2次不等式 \(x^2 - 4x + 3 < 0\) を解くことは,2次関数
\(y = x^2 - 4x + 3\)
の値を負にする \(x\) の範囲を求めるということです。つまり,\(x\) 軸の下側にグラフのある部分を見ることになります。と言うことは,\(x\) 軸との交点の座標が重要になります。したがって,平方完成をするのではなく,\(x\) 軸との交点の座標が分かる式 ― 因数分解できれば因数分解した式 ― にします。
\(y \begin{array}[t]{l} = x^2 - 4x + 3 \\ = (x - 1)(x - 3)\end{array}\)
グラフと \(x\) 軸との交点の \(x\) 座標は \(x = 1\) と \(x = 3\) だと分かりました。そして,グラフが \(x\) 軸の下側にある部分を見れば,次の解が得られます。
\(1 < x < 3\)
因数分解ができないとき
例題2
2次不等式 \(x^2 - 2x - 1 \geqq 0\) を解きましょう。
\(x^2 - 2x - 1\) は因数分解することができません。しかし,2次関数 \(y = x^2 - 2x - 1\) のグラフを描けば・・・
\(y = \)
グラフが \(x\) 軸と交わり交点の外側で \(x\) 軸の上側にあることは,一目瞭然です。また,交点のうち1つは \(-1\) と \(0\) の間にあり,もう1つは \(2\) と \(3\) の間にあることも分かります。そこで,交点の正確な座標を知るために,2次方程式
\(x^2 - 2x - 1 = 0\)
を解の公式により解きます。すると
\(x = 1 \pm \sqrt{2}\)
となり,グラフから不等式 \(x^2 - 2x - 1 \geqq 0\) の解を次のように得られます。
\(x \leqq 1 - \sqrt{2},\ 1 + \sqrt{2} \leqq x\)
課題1
それでは,例題1と例題2を合わせた練習として,次の2次不等式を解きましょう。必要に応じて,問題の下にあるグラフ作成アプレットを使ってください。
\(y = \)
グラフが \(x\) 軸と2回交わらない場合
ここまでの不等式は,2次関数としてグラフを見たときに,グラフが \(x\) 軸と2つの交点をもつ場合でした。しかし,2次関数のグラフは,\(x\) 軸と常に2つの交点をもつとは限りません。\(x\) 軸と接する場合や交わらない場合もあります。そのようなとき,2次不等式の解はどのようになるでしょうか? 次に,これらの場合を考えてみましょう。
例題3
次の2次不等式を解きましょう。
- \(x^2 + x + 1 > 0\)
- \(x^2 - 4x + 4 > 0\)
例題3-1 の解答
まず,\(x^2 + x + 1 = 0\) とおいて,この2次方程式を解きましょう。
\(\begin{array}{c} x^2 + x + 1 = 0 \\ \displaystyle \mbox{∴}\quad x = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} \end{array}\)
方程式の解は虚数になってしまいました。グラフも描いておきましょう。
\(y = \)
2次関数 \(y = ax^2 + bx + c\) について \(ax^2 + bx + c = 0\) の解が虚数になるということは,グラフが \(x\) 軸と交わらないということです。
グラフを見れば,実数全体で \(x^2 + x + 1 > 0\) が成り立つことが分かります。したがって,解は 実数全体 となります。
不等式 \(x^2 + x + 1 < 0\) であれば,\(x\) 軸の下側にはグラフがないので,解なし ということになります。
例題3-2 の解答
これも,\(x^2 - 4x + 4 = 0\) とおいて,この2次方程式を解くと
\(\begin{array}{c} (x - 2)^2 = 0 \\ \mbox{∴}\quad x = 2 \end{array}\)
解は重解でした。グラフも描きましょう。
\(y = \)
グラフは \(x\) 軸に接しています。2次関数 \(y = ax^2 + bx + c\) について \(ax^2 + bx + c = 0\) の解が重解になるということは,グラフが \(x\) 軸に接しているということです。
\(x^2 - 4x + 4 = (x - 2)^2 > 0\)
この不等式の解は,グラフが \(x\) 軸の上側にある ― ただし \(x\) 軸上は含まれない ― ところです。したがって
\(x \ne 2\) または \(x < 2,\ 2 < x\)
のいずれかで答えます。
不等号に気をつけなければなりません。
\(x^2 - 4x + 4 \geqq 0\) ⇒ 実数全体 |
\(x^2 - 4x + 4 < 0\) ⇒ 解なし |
\(x^2 - 4x + 4 \leqq 0\) ⇒ \(x = 2\) |
となります。グラフを見て確認しましょう。
課題2
次の2次不等式を解きましょう。この問いについては,グラフをノートに描きましょう。
問題演習
課題3
次の2次不等式を解きましょう。
発展問題
次の問いに答えましょう。
- \(k\) を定数とします。\(x\) の2次関数 \(y = x^2 - 2kx + k + 2\) のグラフが \(x\) 軸と接するとき \(k\) の値と接点の座標を求めましょう。 解答 隠す
- \(k\) を定数とします。\(x\) の2次関数 \(y = x^2 - 2kx + k + 2\) のグラフが \(x\) 軸と交点をもたないように \(k\) の値を定めましょう。 解答 隠す
- \(k\) を定数とします。\(x\) の2次不等式 \(x^2 + 2kx + 4k - 3 \leqq 0\) が解をもたないように \(k\) の値を定めしょう。 解答 隠す
- 3次不等式 \(x^3 - 2x^2 - x + 2 \geqq 0\) を解きましょう。グラフは上のアプレット又は GeoGebra を使って描いてください。 解答 隠す
- 3次不等式 \(x^3 - 3x + 2 \leqq 0\) を解きましょう。 解答 隠す