本時の目標

  1. まず,鋭角について三角比(三角関数)の定義を確認し,\(30°\)\(45°\)\(60°\)の三角比を答えることができる。
  2. 三角比を簡単な計測に活用する。
  3. \(0°\) から \(360°\) の角について,円を用いて三角関数の定義を拡張し,新たな定義を理解する。

鋭角の三角比の定義

下の図は,1組の三角定規を表しています。それぞれは,共に直角三角形で各辺の比が決まっていました。

それでは,それぞれの直角三角形をノートに描き,さらに,辺の比を書き込みましょう。

書き込んだ値は,辺の比ですから,三角形の大きさには影響されません。

下の図のように,直角三角形 \(\mbox{AHB}\)\(\angle\mbox{A}\) が右に,直角(\(\angle\mbox{H}\))が右下に来るようにおきます。

三角形に対して,一般的に各頂点の向かいの辺の長さを,頂点を表す文字の小文字を使って表します。

この場合,\(h = \mbox{AB}\)\(a = \mbox{BH}\)\(b = \mbox{AH}\) となります。

このとき,\(\angle\mbox{A}\) に対して

\(\mbox{AB}\)斜辺
\(\mbox{AH}\)底辺(または隣辺
\(\mbox{BH}\)対辺

といいます。そして,\(\angle\mbox{A}\) の大きさによってそれぞれの辺の比の値が決まります。3つの辺の比 \(\displaystyle \frac{a}{h}\)\(\displaystyle \frac{b}{h}\)\(\displaystyle \frac{a}{b}\) にはそれぞれ名前がついていて「\(\angle\mbox{A}\)正弦」「\(\angle\mbox{A}\)余弦」「\(\angle\mbox{A}\)正接」といい,\(\sin A\)\(\cos A\)\(\tan A\) と書き表し,これらをまとめて三角比(または三角関数)とよびます。つまり

鋭角の三角比(三角関数)の定義

\(\angle{H} = \angle{R}\) の直角三角形 \(\triangle\mbox{AHB}\) について,\(\sin A\)\(\cos A\)\(\tan A\) を次のように定義します。

\(\displaystyle \sin A = \frac{a}{h},\ \cos A = \frac{b}{h},\ \tan A = \frac{a}{b}\)

\(30°\)\(45°\)\(60°\) の三角関数

三角定規の2組の直角三角形には,直角の他に \(30°\)\(45°\)\(60°\) という角があります。しかも,辺の比が分かっていますから,\(30°\)\(45°\)\(60°\) の3つの角については,三角関数の値を簡単に求めることができます。

課題1

下の図を使って,次の三角比の値を求めましょう。

\(\sin 30°\quad\) \(\cos 30°\quad\) \(\tan 30°\)
\(\sin 45°\quad\) \(\cos 45°\quad\) \(\tan 45°\)
\(\sin 60°\quad\) \(\cos 60°\quad\) \(\tan 60°\)

\(30°\)\(45°\)\(60°\) の三角比をスラスラ言えるように,少し時間をとって覚えてしまいましょう。

覚えたら,周囲の人と覚えられたかどうかを相互に確認し合いましょう。

課題2

次の三角形について,\(x\)\(y\) の値を求めましょう。

1.

\(\sqrt{3}\)
\(x\)
\(y\)

2.

\(y\)
\(x\)
\(3\)

\(0° \leqq \theta \leqq 360°\) への三角関数の拡張

次に,\(0° \leqq \theta \leqq 360°\) にまで三角関数の定義を拡張しますが,鋭角のように直角三角形を作ることができません。そこで,次のように考えます。

\(\mbox{B}(b,\ a)\)
\(h\)
\(-h\)
\(h\)
\(\mbox{A}\)
\(\mbox{H}\)
\(b\)
\(a\)
\(h\)
\(\theta\)

上の図は,\(\triangle\mbox{AHB}\) の頂点 \(\mbox{A}\) を原点において,原点を中心として頂点 \(\mbox{B}\) を通る円を描いたものです。

このとき,点 \(\mbox{B}\) の座標は,辺 \(\mbox{BH}\) の長さ \(a\),辺 \(\mbox{BH}\) の長さ \(b\) を用いて \((b,\ a)\) となっています。

\(\displaystyle \sin A = \frac{a}{h}\) でしたから,これは

\(\sin A =\ \) 頂点 \(\mbox{B}\)\(y\) 座標
円の半径

となり,\(\cos A\)\(\tan A\) も同様に考えれば

\(\cos A =\ \) 頂点 \(\mbox{B}\)\(x\) 座標
円の半径
\(\tan A =\ \) 頂点 \(\mbox{B}\)\(y\) 座標
頂点 \(\mbox{B}\)\(x\) 座標

となっています。

以上のようにして,\(0°\)\(90°\)などの角を含め,\(0° \leqq \theta \leqq 360°\) の全ての角について,三角関数の値をを考えられるように,三角関数を定義しなおします。

下に,三角関数の定義に関する説明用スライドがありますので,見ながら三角関数の定義を覚えましょう。

原点を中心とする半径 \(r\) の円があり,動点 \(\mbox{P}\) が円周上を動いています。
半径 \(\mbox{OP}\) は動点 \(\mbox{P}\) の動きにしたがって動くので 動径 といいます。

課題3

次の角の三角関数の値をを求めましょう。問いの下の図は,角度を入力するとその角度の動径を表示しますので,必要に応じて利用してください。

  1. \(0°\)
  2. \(90°\)
  3. \(135°\)
  4. \(150°\)
  5. \(180°\)
  6. \(210°\)
  7. \(225°\)
  8. \(300°\)

角度

問題演習

課題4と課題5は,いずれも関数電卓や GeoGebra を用いて計算しましょう。

課題4

傾斜が \(10°\) の坂道を \(2000\mbox{m}\) 進んだとき

  1. 鉛直方向にどれだけ上ったでしょうか。 解答 隠す
  2. 水平方向にどれだけ進んだでしょうか。 解答 隠す

課題5

半径 \(10\) の円に内接する正五角形の1辺の長さと面積を求めましょう。小数第2位まで求めてください。 解答 隠す

課題6

次の式を満たす \(\theta\) の角度を求めてください。ただし,\(0° \leqq \theta \leqq 360°\) とします。

  1. \(\displaystyle \sin\theta = \frac{1}{2}\) 解答 隠す
  2. \(\displaystyle \cos\theta = \frac{\sqrt{2}}{2}\) 解答 隠す
  3. \(\displaystyle \tan\theta = -\frac{1}{\sqrt{3}}\) 解答 隠す
  4. \(\displaystyle \sin\theta = \frac{\sqrt{3}}{2}\) 解答 隠す
  5. \(\displaystyle \cos\theta = 0\) 解答 隠す
  6. \(\displaystyle \tan\theta = 1\) 解答 隠す
最終更新日時: 2021年 03月 9日(火曜日) 08:42