テキスト(三角関数のグラフ)
本時の目標
- 単位円周上の動点の座標を比較することにより,\(-\theta\),\(\displaystyle \frac{\pi}{2} \pm \theta\),\(\pi \pm \theta\) のなどの三角関数を \(\theta\) の三角関数で表すことができる。
- \(\sin\theta\) 及び \(\cos\theta\) を単位円周上の動点の \(y\) 軸,\(x\) 軸への射影と捉えて,そのグラフを描くことができる。
- 関数 \(y = a\sin\omega x\),\(y = a\cos\omega x\) について,定数 \(a\),\(\omega\) の変化により振幅及び周期がどのように変化するかを理解する。
- 関数 \(y = a\sin\omega(x - \varphi)\),\(y = a\cos\omega(x - \varphi)\) のグラフを \(y = \sin x\),\(y = \cos x\) のグラフと比較して描くことができる。
三角関数の定義の確認
本時の学習も三角関数の定義の確認から始めましょう。
三角比の定義
\(\displaystyle \sin\theta = \frac{y_0}{r} \quad \cos\theta = \frac{x_0}{r} \quad \tan\theta = \frac{y_0}{x_0}\)
この定義では,円の半径を \(r\) としていますが,\(r = 1\) としても問題ありません。半径 \(1\) の円を単位円といい,単位円周上を動く点 \(\mbox{P}\) の場合は,その \(x\) 座標と \(y\) 座標がそのまま \(\cos\theta\) と \(\sin\theta\) の値になります。
ところで,点 \(\mbox{P}\) から \(x\) 軸に下した垂線の足を点 \(\mbox{P}\) の \(x\) 軸への正射影といい,同様に,点 \(\mbox{P}\) から \(y\) 軸へ下した垂線の足を点 \(\mbox{P}\) の \(y\) 軸への正射影といいます。言い換えれば,単位円周の動径 \(\mbox{OP}\) に対して,動点 \(\mbox{P}\) の \(y\) 軸への正射影は \(\sin\theta\) を表し,\(x\) 軸への正射影は \(\cos\theta\) を表しています。
Start ボタンを押すと動径が回転します。そのときの \(\sin\theta\) と \(\cos\theta\) の動きを見てみましょう。
今日は,このことを踏まえて,\(-\theta\),\(\displaystyle \frac{\pi}{2} \pm \theta\),\(\pi \pm \theta\) のなどの三角関数と,三角関数のグラフについて学びます。
\(-\theta\),\(\displaystyle \frac{\pi}{2} \pm \theta\),\(\pi \pm \theta\) のなどの三角関数
まず,\(\sin(-\theta)\),\(\cos(-\theta)\),\(\tan(-\theta)\) を考えましょう。
\(-\theta\) は \(\theta\) と反対向きに同じ量回転した角です。\(\theta\) と \(-\theta\) とが表す動径を比較できるように図示すると,下図のようになります。図の下のスライダーを動かすと,\(\theta\) の値が変化します。
この図から,次の関係の成り立つことが分かります。\[\sin(-\theta) = -\sin\theta,\quad \cos(-\theta) = \cos\theta\]
また,\(\tan\) については,\(\tan\theta\) の定義から考えても,\(\tan\theta\) が動径の傾きを表すことを考えても \(\tan(-\theta) = -\tan\theta\) の成り立つことが分かります。以上をまとめると
\(-\theta\) の三角関数
\[\begin{array}{l} \sin(-\theta) = -\sin\theta \\ \cos(-\theta) = \cos\theta \\ \displaystyle \tan(-\theta) = -\tan\theta \end{array}\]
次に,\(\displaystyle \frac{\pi}{2} - \theta\) を考えましょう。これも \(\theta\) と \(\displaystyle \frac{\pi}{2} - \theta\) とを表す動径を比較できるように図示すると,下図のようになります。
少々見にくい図ですが,\(\displaystyle \sin\left(\frac{\pi}{2} - \theta\right)\) と \(\cos\theta\) とが等しく,\(\displaystyle \cos\left(\frac{\pi}{2} - \theta\right)\) と \(\sin\theta\) とが等しいことが読み取れると思います。\(\tan\) については,
\(\displaystyle \tan\left(\frac{\pi}{2} - \theta\right) = \frac{1}{\tan\theta}\)
が成り立っていますが,分かるでしょうか?
\(\displaystyle \frac{\pi}{2} - \theta\) の三角関数
\[\begin{array}{l} \displaystyle \sin\left(\frac{\pi}{2} - \theta\right) = \cos\theta \\ \displaystyle \cos\left(\frac{\pi}{2} - \theta\right) = \sin\theta \\ \displaystyle \tan\left(\frac{\pi}{2} - \theta\right) = \frac{1}{\tan\theta} \end{array}\]
課題1
上に倣って,次の角の三角関数を \(\sin\theta\),\(\cos\theta\) 及び \(\tan\theta\) を用いて表しましょう。
- \(\displaystyle \sin\left(\frac{\pi}{2} + \theta\right)\),\(\displaystyle \cos\left(\frac{\pi}{2} + \theta\right)\),\(\displaystyle \tan\left(\frac{\pi}{2} + \theta\right)\)
- \(\sin(\pi - \theta)\),\(\cos(\pi - \theta)\),\(\tan(\pi - \theta)\)
- \(\sin(\pi + \theta)\),\(\cos(\pi + \theta)\),\(\tan(\pi + \theta)\)
上の図は,\(\theta\) が動いたとき \(\displaystyle \frac{\pi}{2} - \theta\),\(\pi - \theta\),\(\pi + \theta\) を表す動径がどのように動くかを示しています。チェックボックスのチェックを外すとその角を表す動径を消すことができるので,必要な動径だけを表示して確認しましょう。
関数 \(y = \sin x\) のグラフ
点 \((1,\ 0)\) を点 \(\mbox{A}\) とし,原点を中心とする単位円周上を動く点 \(\mbox{P}\) に対して,\(\angle\mbox{AOP} = x\) とします。上で見たように,点 \(\mbox{P}\) の \(y\) 座標が \(\sin x\) になります。
したがって,単位円周上の動点 \(\mbox{P}\) の \(y\) 軸方向の動きをグラフに写し取れば,関数 \(y = \sin x\) のグラフを描くことができます。Start ボタンをクリックしてください。
上のグラフで注意してほしいのは,単位円と関数 \(y = \sin x\) のグラフとが同じ座標平面上に描かれていますが,本来は別々の平面上にあって単位円の中心は原点にあるということです。
また,画面の関係で \(0 \leqq x \leqq 2\pi\) の範囲のみ示しています。\(x < 0\) や \(2\pi < x\) の範囲においても同じ形のグラフが繰り返し現れるということにも注意してください。
なお,\(y = \sin x\) のグラフの曲線を正弦曲線(またはサインカーブ)といいます。
三角関数の振幅と周期
下図は,関数 \(y = \sin x\) のグラフです。
このグラフには幾つかの特徴があります。例えば
- \(1\) と \(-1\) の間で上がったり下がったりしている
- \(x\) が \(2\pi\) 進むと同じ形が現れる
このうち,1.の性質を表すものが,図の中の振幅です。上がったり下がったりの中心から最大値までの値 ― この場合は \(1\) ― を振幅といいます。また,上がったり下がったりは規則的に行われ,\(x\) のどのような値に対しても \(2\pi\) 進むと \(y\) の値は同じところに戻ってきます。つまり,上の2.です。このような性質をもつ関数を周期関数とよび,\(y = \sin x\) は周期 \(2\pi\) の周期関数といいます。
課題2
\(a\) と \(\omega\) を定数として,関数
\(y = a\sin\omega x\)
を考えます。この関数は,関数 \(y = \sin x\) と比べると振幅と周期が変わります。定数 \(a\),\(\omega\) の値が変化したとき,振幅と周期はどのように変わるでしょうか? 考えてみましょう
考えがまとまったら,次に進みましょう。
それでは,グラフを動かして確認しましょう。
\(y = a\sin\omega x\)
\(a\) | \(\omega\) |
1 | 1 |
考えた結論は,この結果と一致していましたか?
関数 \(y = a\sin\omega x\) の振幅と周期
振幅:\(|\,a\,|\) 周期:\(\displaystyle \frac{2\pi}{\omega}\)
ここで登場した \(\omega\) は,力学で円運動をなどを扱うときには角速度 と呼ばれ,電気では,交流の 角周波数 として現れます。いずれも,極めて重要な値になるので,周期との関係を理解しておいてください。
関数 \(y = \cos x\) のグラフ
このグラフは,\(\sin x\) のグラフと平行移動(第6回の授業で扱いました)とを用いて描きましょう。
課題1の結果から
\(\displaystyle \cos x = \sin\left(x + \frac{\pi}{2}\right)\)
が成り立つことが分かり,さらにこれより次のことが分かります。
関数 \(y = \cos x\) のグラフは,関数 \(y = \sin x\) のグラフを \(x\) 軸正の方向に \(\displaystyle-\frac{\pi}{2}\) だけ平行移動したものである。
それでは,関数 \(y = \cos x\) のグラフを下に示します。
灰色の線が \(y = \sin x\),赤色の線が \(y = \cos x\) のグラフです。
関数 \(y = \cos x\) のグラフも正弦曲線であり,振幅は \(1\),周期は \(2\pi\) です。
また,関数 \(y = a\cos\omega x\) についても,\(y = a\sin\omega x\) と同様に次が成り立ちます。
関数 \(y = a\cos\omega x\) の振幅と周期
振幅:\(|\,a\,|\) 周期:\(\displaystyle \frac{2\pi}{\omega}\)
ここまでのことが理解できたら,問題演習に進みましょう。
問題演習
課題3
次の関数のグラフを描き,\(\sin x\) または \(\cos x\) のグラフをどのように変形したものになるかを答えましょう。
- \(\displaystyle y = 2\sin x\) 解答 隠す
- \(\displaystyle y = \cos 2x\) 解答 隠す
- \(\displaystyle y = \frac{1}{2}\sin 2x\) 解答 隠す
- \(\displaystyle y = 2\cos\frac{x}{2}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle y = \sin\left(x - \frac{\pi}{6}\right)\) 解答 隠す
- \(\displaystyle y = \sin\left(x - \frac{\pi}{4}\right)\) 解答 隠す
- \(\displaystyle y = \cos\left(x + \frac{\pi}{3}\right)\) 解答 隠す
- \(\displaystyle y = 2\cos\left(x - \frac{\pi}{4}\right)\) 解答 隠す
- \(\displaystyle y = \frac{1}{2}\sin\left(x + \frac{\pi}{3}\right)\) 解答 隠す