テキスト(指数法則・指数関数)
本時の目標
- 指数法則を理解し,指数計算を正確に行うことができる。
- 指数関数 \(y = a^x\) のグラフについて,次の特徴を理解し描くことができる。
- \(0 < a < 1\) のとき減少関数,\(a > 1\) のとき増加関数
- 2点 \((0,\ 1),\ (1,\ a)\) を通る
- \(x\) 軸を漸近線にもつ
指数法則と指数の拡張
指数計算を行うためには,次の指数法則を使います。
\(1\quad a^m\times a^n = a^{m + n}\) |
\(2\quad a^m\div a^n = a^{m - n}\quad (m > n)\) |
\(3\quad (a^m)^n = a^{mn}\) |
\(4\quad (ab)^n = a^n b^n\) |
ただし,\(m\) と \(n\) は正の整数である
枠下の中にもあるように,現時点で \(m\) と \(n\) は正の整数,つまり自然数の指数だけを扱っています。本時の学習の最初は,指数を整数全体に,そして,有理数全体に拡張していきます。
どのように拡張するかというと,ポイントは指数法則です。指数が負の整数であったり分数になったりしても,指数法則が成り立っているように拡張をします。
\(a^0\) は?
上の指数法則の \(2\) において \(m = n\) とすれば,\(a^0 = 1\) となります。\(a^0 = 1\) と定義すれば,指数法則の \(1\)・\(3\)・\(4\) も満たすことは容易に分かります。
\(5\quad a^0 = 1\) |
例 \(2^0 = 1,\quad 3^0 = 1,\quad \pi^0 = 1\)
\(a^{-1}\) は?
\(a^0\) が定義できたので,この定義を使ってさらに負の整数の指数を定義します。やはり \(2\) において,\(m = 0\) とします。すると
\(\begin{array}{l} a^0 \div a^n = a^{0 - n} \\ \mbox{∴}\quad a^{-n} = \displaystyle\frac{1}{a^n} \end{array}\)
となって,この結果もまた \(1\)・\(3\)・\(4\) に対して矛盾を与えません。そこで,負の整数の指数について次のように定義します。
\(6\quad a^{-n} = \displaystyle\frac{1}{a^n}\) |
例 \(\displaystyle 2^{-1} = \frac{1}{2},\quad 3^{-2} = \frac{1}{9}\)
\(2^{\frac{1}{2}}\) は?
続いて,分数すなわち有理数の指数について定義します。指数法則の \(3\) を使いましょう。\(\displaystyle m = \frac{1}{2}\) と \(n = 2\) を代入すると
\(\displaystyle \left(a^{\frac{1}{2}}\right)^2 \begin{array}[t]{l} \displaystyle = a^{\frac{1}{2}\cdot 2} \\ \displaystyle = a^1 \\ \displaystyle = a \end{array}\)
したがって,\(a^{\frac{1}{2}}\) は \(a\) の平方根であり,\(a^{\frac{1}{2}} = \sqrt{a}\) となります。
この計算の過程から
\(a^{\frac{1}{3}} = \sqrt[3]{a},\quad a^{\frac{1}{4}} = \sqrt[4]{a},\quad a^{\frac{1}{5}} = \sqrt[5]{a},\quad\cdots\)
などが成り立つことも分かり,この結果も \(1\cdot 2\cdot 4\) に矛盾するものではありません。そこで,分数の指数を次のように定義します。
\(7\quad a^{\frac{m}{n}} = \sqrt[n]{a^m} = (\sqrt[n]{a})^m\) |
指数の計算
課題1
指数法則を用いて次の計算をしましょう。
- \(\displaystyle -3^{-2}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle (-3)^{-2}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle 64^{\frac{1}{3}}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \sqrt[4]{16}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle 25^{-\frac{1}{2}}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle -(-a)^3\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \left( - \frac{1}{a^2} \right)^{-3}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle 3a \times (6ab^{-2})^{-1}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle 6^8 \div 2^7 \times 3^{-6}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle 4 \times 10^8 \div (2 \times 10^5)\) 解答 隠す
- \(\displaystyle a^2 b^3 \times \frac{4}{a^{-2}b} \div (2a^3 b^2)\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \frac{27^{\frac{5}{6}} \times 27^{-\frac{2}{3}}}{27^{\frac{1}{2}}}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \frac{a^{\frac{1}{2}} \times a^{\frac{4}{3}}}{a^{-\frac{1}{6}}}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \frac{8 \times \sqrt{8}}{\sqrt[6]{8}}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \sqrt[4]{x^6} \times \sqrt{x}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \sqrt{18} \times \sqrt{72}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \frac{\sqrt{6} \times \sqrt{3}}{\sqrt{2}}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \sqrt[3]{64a^2} \div \sqrt{a}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \sqrt{x} \times \sqrt{\frac{4}{x}}\) 解答 隠す
- \(\displaystyle \frac{\sqrt{a^3b} \times \sqrt[3]{ab^2}}{\sqrt[6]{a^5 b}}\) 解答 隠す
指数関数のグラフ
ここからは,指数関数 \(y = a^x\ (0 < a < 1,\ 1 < a)\) について考えます。上では,有理数の指数までしか定義していません。数の中には,有理数でない数(無理数)があるので,グラフを描くためには無理数の指数についても定義する必要があります。話しとしては難しいものではありません。
例えば,\(2^\pi\) の値を考えましょう。\(\pi\) は
\(3.141565358979\cdots\)
です。数字の列は無限に続きます。今,次の数列を考えます。
\(a_{1} = 2^{3}\),\(a_{2} = 2^{3.1}\),\(a_{3} = 2^{3.14}\),\(a_{4} = 2^{3.141}\),\(a_{5} = 2^{3.1415}\),\(a_{6} = 2^{3.14159}\),\(a_{7} = 2^{3.141592}\),\(a_{8} = 2^{3.1415926}\),\(a_{9} = 2^{3.14159265}\),\(a_{10} = 2^{3.141592653}\),\(\cdots\)
そして,この数列の極限を \(2^\pi\) の値と考えることにします。ここでは,あまり難しく考えず,\(x\) が有理数の場合の点をいくつか取って,それらを滑らかに繋ぐとグラフが出来上がる・・・という程度にイメージしておきましょう。
この関数のグラフには次の性質があります。
- \(0 < a < 1\) のとき 減少関数(グラフは右下がり)
- \(a > 1\) のとき 増加関数(グラフは右上がり)
- 定点 \((0,\ 1)\) を通る
- 点 \((1, \ a)\) を通る
この性質を,下図に様々な指数関数のグラフを描いて確認しましょう。「\(f(x) =\)」等に続く入力ボックスに数式を書くと,その関数のグラフを描きます。\(f(x)\) にはデフォルトで \(2^x\) が入力されており,このグラフが赤の線で描かれています。、
\(f(x) =\)
\(g(x) =\)
\(h(x) =\)
課題2
次の指数関数のグラフをノートに描きましょう。
- \(y = 3^x\)
- \(\displaystyle y = \left(\frac{1}{2}\right)^x\)
- \(y = 0.9^x\)
- \(y = -2^x\)
課題3
指数関数 \(\displaystyle f(x) = 2^x,\ g(x) = \left(\frac{1}{2}\right)^x,\ h(x) = -2^x\) について,次の問いに答えましょう。
- \(y = f(x)\) と \(y = g(x)\) の位置関係を答え,なぜそのような位置関係になるか?を考えましょう。
- \(y = f(x)\) と \(y = h(x)\) の位置関係を答え,なぜそのような位置関係になるか?を考えましょう。