テキスト(対数の計算・対数関数)
本時の目標
- 対数の定義を理解する。
- 指数法則を対数により書き換え,対数の計算の法則を理解する。
- 対数の計算を正確に行うことができる。
- 対数関数 \(y = \log_a x\) のグラフについて,次の特徴を理解し描くことができる。
- \(0 < a < 1\) のとき減少関数,\(a > 1\) のとき増加関数
- 2点 \((1,\ 0),\ (a,\ 1)\) を通る
- \(y\) 軸を漸近線にもつ
課題1
次の式を満たす実数 \(x\) の値を求めましょう。
- \(2^x = 8\)
- \(\displaystyle 2^x = \frac{1}{2}\)
- \(2^x = 3\)
対数の定義
課題1 をグラフを用いて考えてみましょう。下に指数関数 \(y = 2^x\) のグラフを描きました。
緑の直線は,図にも示されているとおり \(y = 8\) です。この直線と \(y = 2^x\) のグラフの交点は,課題1 1. の解を与えています。交点の \(x\) 座標が \(3\) となっていますが,確かに \(2^3\) は \(8\) になります。それでは,スライダーを左に動かしください。緑の直線が下にさがっていきますから,\(y = 0.5\) になるように操作してください。すると,そのときの直線とグラフとの交点の \(x\) 座標は \(-1\) です。\(2^{-1} = \displaystyle \frac{1}{2}\) ですから,これまた課題の 2. の解になっています。
ところで,前回,確認したように指数関数 \(y = 2^x\) は単調増加関数 ― グラフは常に右上がりです。したがって,正の定数 \(k\) に対して
\(2^x = k\)
を満たす \(x\) がただ1つ決まり,
\(k = 8\) のとき | \(x = 3\) |
\(\displaystyle k = \frac{1}{2}\) のとき | \(x = -1\) |
であるということです。それならば,\(k = 3\) の場合にも \(2^x = 3\) を満たす \(x\) の値がどこかにあるはずです。
スライダーを操作して,緑の直線を \(y = 3\) にしましょう。交点は,\(x = 1\) と \(x = 2\) の間 ― 若干 \(2\) に近い方にあります。図の数値では,\(1.5849\) と表示されています。実は,この数は無理数 ― つまりどこまでも続く小数なのです。そこで,この数を簡単に表記するために対数を定義します。
対数の定義
\(a > 0,\ a \ne 1,\ b > 0\) を満たす \(a,\ b\) に対して
\(a^x = b\)
が成り立つとき
\(x = \log_a b\)
と書いて,これを \(a\) を底とする \(b\) の対数 といいます。また,\(b\) を対数 \(\log_a b\) の真数とよび,底 \(a\) と真数 \(b\) には,最初に書いたように
底:\(a > 0,\ a \ne 1\),真数:\(b > 0\)
という条件があります。
対数を使えば,課題1の 3. の解は,\(x = \log_2 3\) と書けます。
課題2
次の式を満たす実数 \(x\) の値を対数を使って表しましょう。また,GeoGebra を用いて,その値の概数を求めましょう。
- \(5^x = 10\)
- \(3^x = 5\)
- \(10^x = 9\)
対数の計算
対数の定義は分かったけれど,一体何に使うの? という疑問が湧きます。元々は桁数の多い掛け算や割り算を簡単に行うために考え出されたものですが,その説明をするためには,対数の計算の規則を押さえる必要があります。本時は対数の計算方法をまずマスターして、2時間後に対数の活用の一端を扱うことにします。
まず,指数法則を対数で書き換えましょう。
1 \(a^m \times a^n = a^{m + n}\) |
2 \(a^m \div a^n = a^{m - n}\) |
3 \((a^m)^n = a^{mn}\) |
\(a^m = p\),\(a^n = q\) とおくと,\(m = \log_a p\),\(n = \log_a q\) が成り立ちます。ここで,1を変形すると
\(\begin{array}{l} pq = a^{m + n} \\ \log_a pq = m + n \\ \log_a pq = \log_a p + \log_a q \end{array}\)
同様に2を変形すると
\(\begin{array}{l} \displaystyle \frac{p}{q} = a^{m - n} \\ \displaystyle \log_a \frac{p}{q} = m - n \\ \displaystyle \log_a \frac{p}{q} = \log_a p - \log_a q \end{array}\)
続いて3を変形すると
\(\begin{array}{l} p^n = a^{mn} \\ \log_a p^n = mn \\ \log_a p^n = n\log_a p \end{array}\)
また,\(a^0 = 1\) と \(a^1 = a\) を対数で書き換えれば
\(\log_a 1 = 0,\ \log_a a = 1\)
が成り立つことも分かります。以上をまとめます。
1. | \(\log_a pq = \log_a p + \log_a q \) |
2. | \(\displaystyle \log_a \frac{p}{q} = \log_a p - \log_a q\) |
3. | \(\log_a p^n = n\log_a p\) |
4. | \(\log_a 1 = 0,\ \log_a a = 1\) |
例題1
上の関係を用いると,次のような対数の計算ができます。
\(\begin{array}{l} 2\log_5 15 - \log_5 9 \\ = 2\log_5 5\cdot 3 - \log_5 3^2 \\ = 2(\log_5 5 + \log_5 3) - 2\log_5 3 \\ = 2(1 + \log_5 3) - 2\log_5 3 \\ = 2 \\[8px] \displaystyle \log_2 \sqrt{6} - \frac{1}{2} \log_2 3 \\ = \displaystyle \log_2 (2\cdot 3)^{\frac{1}{2}} - \frac{1}{2} \log_2 3 \\ \displaystyle = \frac{1}{2} (\log_2 3 + \log_2 2) - \frac{1}{2} \log_2 3 \\ \displaystyle = \frac{1}{2}(\log_2 3 + 1) - \frac{1}{2}\log_2 3 \\ \displaystyle = \frac{1}{2} \end{array}\)
上記に計算は,次のように行っても同様の結果を得られます。
\(\begin{array}{l} 2\log_5 15 - \log_5 9 \\ = \log_5 (3\cdot 5)^2 - \log_5 3^2 \\ \displaystyle = \log_5 \frac{3^2 \cdot 5^2}{3^2} \\ \displaystyle = \log_5 5^2 \\ = 2 \\[8px] \displaystyle \log_2 \sqrt{6} - \frac{1}{2}\log_2 3 \\ \displaystyle = \log_2 (2\cdot 3)^{\frac{1}{2}} - \log_2 3^{\frac{1}{2}} \\ \displaystyle = \log_2 \frac{2^{\frac{1}{2}}\cdot 3^{\frac{1}{2}}}{3^{\frac{1}{2}}} \\ = \log_2 2^{\frac{1}{2}} \\ \displaystyle = \frac{1}{2} \end{array}\)
課題3 次の計算をしましょう。
課題4 次の計算をしましょう。
- \(\log_{6} 2 + \log_{6} 3\) 解答 隠す
- \(\log_6 18 + \log_6 2\) 解答 隠す
- \(2\log_3 18 - \log_3 4\) 解答 隠す
- \(\log_2 9 - 2\log_2 12\) 解答 隠す
- \(\log_3 4 + 2\log_3 \displaystyle\frac{1}{2}\) 解答 隠す
- \(2\log_{6}3 + \log_{6} 8 - \log_{6} 2\) 解答 隠す
- \(\log_5 4 + \log_5 100 - 4\log_5 2\) 解答 隠す
- \(2\log_7 15 - \log_7 9 - \log_7 25 \) 解答 隠す
- \(\log_3 \sqrt{75} - \displaystyle \frac{1}{2}\log_3 25\) 解答 隠す
- \(3\log_2 \sqrt[3]{6} - \log_2 3\) 解答 隠す
対数関数のグラフ
ここからは,対数関数 \(y = \log_a x\)(\(0 < a < 1,\ 1 < a\))について考えます。
\(y = \log_a x\quad \cdots \quad (*)\)
を指数を使って書き換えると \(x = a^y\) となります。したがって,\((*)\) は指数関数
\(y = a^x\quad \cdots \quad (**)\)
と比べると,\(x\) と \(y\) とが入れ替わっています。ということは・・・\((*)\) と \((**)\) のグラフは \(x\) 軸と \(y\) 軸とが入れ替わったものだと言えます。
\(x\) 軸と \(y\) 軸と入れ替えてグラフを見るためには,ノートであれば,その裏側から縦横を変え透かして見れば,\(x\) 軸が上方向に \(y\) 軸が右方向になります。モニターを裏側から見ても透かして見ることはできません。どのように考えたらよいでしょう?
実は,直線 \(y = x\) に関して対称に移動すればよいのです。
指数関数 \(y = a^x\) と対数関数 \(y = \log_a x\) のグラフは,直線 \(y = x\) に関して対称な図形です。
下の図で,青で描かれた曲線は指数関数 \(y = a^x\) のグラフです。それに対して,赤の曲線は \(y = a^x\) のグラフを直線 \(y = x\) に関して対称に折り返したもの,つまり対数関数 \(y = \log_a x\) のグラフです。スライダーを動かすと,底の \(a\) が変化します。\(a\) の値が変化するとき,\(y = \log_a x\) のグラフがどのように変化するかを,\(y = a^x\) のグラフと比較して観察しましょう。
\(a =\)
指数関数のときと同様に,対数関数 \(y = \log_a x\) のグラフの特徴をまとめると,次のようになります。
- \(0 < a < 1\) のとき 減少関数(グラフは右下がり)
- \(a > 1\) のとき 増加関数(グラフは右上がり)
- 定点 \((1,\ 0)\) を通る
- 点 \((a, \ 1)\) を通る
課題5
次の関数のグラフをノートに描きましょう。
- \(y = \log_3 x\)
- \(y = \log_{\frac{1}{2}}x\)
- \(y = \log_2 2x\)
- \(y = \log_2 x^2\)