テキスト(微分係数と導関数)
本時の目標
- 平均変化率の意味を理解し,具体的な関数の具体的な \(x\) の範囲における平均変化率を求めることができる。
- 微分係数について,定義と図形的な意味を理解し,具体的な関数の \(x\) の具体的な値について微分係数を求めることができる。
- 導関数の定義を理解し,\(x^2\),\(x^3\),\(\displaystyle \frac{1}{x}\),\(\sqrt{x}\) の導関数を求めることができる。
- 4次までの整関数の導関数を求めることができる。
平均変化率
下の図のように,関数 \(y = f(x)\) のグラフの上に2点 \(\mbox{A}(a,\ f(a))\) と \(\mbox{B}(b,\ f(b))\) をとり,2点を通る直線 \(\mbox{AB}\) を考えます。
\(x\)
\(y\)
このとき,直線 \(\mbox{AB}\) 傾きは
\(\displaystyle \frac{f(b) - f(a)}{b - a}\)
と表され,これを「\(x\) の値が \(a\) から \(b\) へ変化したときの関数 \(f(x)\) の平均変化率」といいます。
課題1
- \(x\) の値が \(-1\) から \(3\) へ変化したとき,関数 \(f(x) = x^2\) と \(g(x) = 2^x\) の平均変化率を求めましょう。
- \(x\) の値が \(a\) から \(a + h\) へ変化したときの関数 \(f(x)\) の平均変化率を表す式を作りましょう。
極限値
関数 \(f(x)\) において,\(x\) が \(a\) と異なる値をとりながら \(a\) に限りなく近づくとき,\(f(x)\) がある一定の値 \(\alpha\) に限りなく近づくならば
\(\displaystyle \lim_{x \to a}f(x) = \alpha\)
と書いて,\(\alpha\) を「\(x \to a\) のときの \(f(x)\) の極限値」といいます。例えば
\(\displaystyle \lim_{x \to 1}(x + 1)=2\quad\lim_{h \to 0}(3 -3h + h^2) = 3\)
課題2
次の極限値を求めましょう。
- \(\displaystyle \lim_{x \to 2}(x^2 + 1)\)
- \(\displaystyle \lim_{h \to 0}(6 + h)\)
- \(\displaystyle \lim_{h \to 0}(12 + 6h + h^2)\)
Limit(GeoGebra による極限の計算)
機 能: | 関数の極限値を求めます。 |
構 文: | \(\mbox{Limit}(\)〈関数〉,〈変数〉,〈値〉\()\) |
\(\begin{array}{|c|l|} \hline 1 & \mbox{Limit}(x^2 + 1,\ x,\ 2)\hspace{8em} \\ & \rightarrow 5 \\ \hline 2 & \mbox{Limit}(6 + h,\ h,\ 0) \\ & \rightarrow 6 \\ \hline 3 & \mbox{Limit}(12 + 6h + h^2,\ h,\ 0) \\ & \rightarrow 12 \\ \hline \end{array}\)
微分係数
ここで,課題1-2. で求めた「\(x\) の値が \(a\) から \(a + h\) へ変化したときの関数 \(f(x)\) の平均変化率」
\(\displaystyle \frac{f(a + h) - f(a)}{h}\)
について \(h \to 0\) のときの極限値 ― すなわち
\(\displaystyle \lim_{h \to 0}\frac{f(a + h) - f(a)}{h}\)
を考えます。まず,この極限値が,図形的にどのような意味をもつかを見ていきましょう。
点 \(\mbox{A}\) の座標を \((a,\ f(a))\),点 \(\mbox{B}\) の座標を \((a + h,\ f(a + h))\) とすると,\(\displaystyle \frac{f(a + h) - f(a)}{h}\) は直線 \(\mbox{AB}\) の傾きを表し,\(h \to 0\) のとき点 \(\mbox{B}\) は点 \(\mbox{A}\) に近づいていきます。
\(x\)
\(y\)
図の下のスライダーを左に動かすと,点 \(\mbox{B}\) がグラフ上を左下に移動していきます。点 \(\mbox{B}\) が点 \(\mbox{A}\) に近づくとき,直線 \(\mbox{AB}\) がどのような直線に近づくかを観察しましょう。点 \(\mbox{B}\) が点 \(\mbox{A}\) に右から近づくとき,左から近づくときの両方を見てください。
関数 \(y = f(x)\) のグラフ上に2点 \(\mbox{A}(a,\ f(a))\) と \(\mbox{B}(a + h,\ f(a + h))\) をとって,\(h \to 0\) すなわち点 \(\mbox{B}\) を点 \(\mbox{A}\) に近づけると,直線 \(\mbox{AB}\) は「\(y = f(x)\) のグラフの,点 \(\mbox{A}\) における接線」に近づきます。
つまり,\(x\) の値が \(a\) から \(a + h\) へ変化したときの関数 \(f(x)\) の平均変化率の \(h \to 0\) における極限値は,\(x = a\) における \(y =f(x)\) のグラフの接線の傾きに一致します。そして,この平均変化率の極限値を「\(x = a\) における関数 \(f(x)\) の微分係数」といい,\(f'(a)\) と書きます。
\(x = a\) における \(f(x)\) の微分係数
\[\displaystyle f'(a) = \lim_{h \to 0}\frac{f(a + h) - f(a)}{h}\ \cdots\ (*)\]
微分係数の図形的な意味が分かったので,次に,極限の計算から微分係数を求めてみましょう。上の図において,\(f(x) = x^2\),\(a = 1\) としましょう。\((*)\) の計算を行うと
\(f'(1)\begin{array}[t]{l} \displaystyle = \lim_{h \to 0}\frac{(1 + h)^2 - 1^2}{h} \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0}\frac{2h + h^2}{h} \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0}(2 + h) \\ = 2 \end{array}\)
GeoGebra なら \(\displaystyle \mbox{Limit}\left(\frac{(1 + h)^2 - 1^2}{h},\ h,\ 0\right)\ \rightarrow\ 2\)
となって,\(f'(1) = 2\) であることが分かります。図形的には,2次関数 \(y = x^2\) のグラフの点 \((1,\ 1)\) における接線の傾きが \(2\) であるということです。
\(y = x^2\)
\(y = 2x - 1\)
\((1,\ 1)\)
\(x\)
\(y\)
課題3
上の \((*)\) を用いて次の微分係数を求めましょう。
- 関数 \(f(x) = x^2\) の \(x = 2\) における微分係数 \(f'(2)\)
- 関数 \(f(x) = 3x^2\) の \(x = -1\) における微分係数 \(f'(-1)\)
- 関数 \(f(x) = x^2\) の \(x = a\) における微分係数 \(f'(a)\)
導関数
微分係数を求めるためにいつも極限値を求めていたのでは面倒です。課題3-3.を見ると,\(a\) の値が変わったときの \(f'(a)\) の値を求められていることが分かります。この式の \(a\) を \(x\) で置き換えた式
\(f'(x) = 2x\)
は,\(x\) の各値での微分係数を与える関数になります。この関数を関数 \(f(x)\) の導関数といいます。
導関数は,\(f'(x)\) の他,\(y'\),\(\displaystyle \frac{dy}{dx}\),\(\displaystyle \frac{d}{dx}f(x)\) などとも書きます。なお,\(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) の読み方は「dydx」です。
導関数の定義
\(\displaystyle f'(x) = \lim_{h \to 0}\frac{f(x + h) - f(x)}{h}\ \cdots\ (**)\)
課題4
導関数の定義 \((**)\) にしたがって,次の関数の導関数を求めましょう。
導関数の性質
- \(\{kf(x)\}' = kf'(x)\)(\(k\) は定数)
- \(\{f(x) + g(x)\}' = f'(x) + g'(x)\)
- \(\{f(x) - g(x)\}' = f'(x) - g'(x)\)
[証明]
\(\begin{array}{l} \{kf(x)\}' \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0}\frac{kf(x + h) - kf(x)}{h} \\ \displaystyle = k\cdot\lim_{h \to 0}\frac{f(x + h) - f(x)}{h} \\ = kf'(x) \\[8px] \{f(x) + g(x)\}' \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0}\frac{\{f(x + h) + g(x + h)\} - \{f(x) + g(x)\}}{h} \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0}\left\{\frac{f(x + h) - f(x)}{h} + \frac{g(x + h) - g(x)}{h}\right\} \\ = f'(x) + g'(x)\\[8px] \{f(x) - g(x)\}' \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0}\frac{\{f(x + h) - g(x + h)\} - \{f(x) - g(x)\}}{h} \\ \displaystyle = \lim_{h \to 0}\left\{\frac{f(x + h) - f(x)}{h} - \frac{g(x + h) - g(x)}{h}\right\} \\ = f'(x) - g'(x) \end{array}\)
導関数の計算
上記の課題4と導関数の性質を使うと,様々な関数の導関数を求めることができます。なお,関数 \(f(x)\) の導関数 \(f'(x)\) を求めることを関数 \(f(x)\) を微分するといいます。
例題1 \(y = 2x^4 - 3x + 1\)
\(y' \begin{array}[t]{l} = 2(x^4)' - 3(x)' + (1)' \\ = 8x^3 - 3 \end{array}\)
課題5
例題1に倣って,次の関数を微分しましょう。
最後に,GeoGebra を使って導関数を求める方法を見ておきましょう。
Derivative
機 能: | 関数の導関数を求めます。 |
構 文: | \(\mbox{Derivative}(\)〈関数〉\(,\)〈変数〉\()\) |
\(\begin{array}{|c|l|} \hline 1 & \mbox{Derivative}((2\cdot x + 1)^2,\ x) \\ & \rightarrow\ 4(2x + 1) \\ \hline 2 & \mbox{Derivative}((x - 3)^3,\ x) \\ & \rightarrow\ 3(x - 3)^2 \\ \hline 3 & \mbox{Derivative}((x - 1)\cdot(x - 2)\cdot(x - 3),\ x) \\ & \rightarrow\ (x - 1)(x - 2) + (x - 1)(x - 3) + (x - 2)(x - 3) \\ \hline 4 & \mbox{Simplify}(\$3) \\ & \rightarrow\ 3x^2 - 12x + 11 \\ \hline \end{array}\)
課題5 の 4.~6. の導関数を求めてみました。\(\$3\) の式は少々おかしな感じがしませんか? \(\mbox{Simplify}\) で式を単純化すれば,解答とした \(3x^2 - 12x + 11\) に等しくなることはなるのですが \(\cdots\) GeoGebra は一体どのような計算をしているのでしょうか? それは「19 積の導関数・商の導関数」で明らかになります。