2変数の関数と極限の考え方

本日のお題

  1. アプリを用いて2変数関数のグラフを描くことにより,2変数関数の特徴をつかめるようになります。
  2. 極限を厳密に説明するためには,\(\epsilon - \delta\) 論法を用いるということを知ります。

大学で理学・工学等を学ぶ学生にとって,数学に関して最初に遭遇する難関が2変数関数の微積分ではないかと思います。私自身について話すと,一般教養の解析(学部の全学生が共通して学ぶ微積分のことです)がデデキント切断から始まり,1時間目の講義で「来るところを間違えた」と感じました。当時は,数学科に限らず,かなり厳密な数学をやっていました。数学科で学ぶ学生でありながら,最初の難関どころか,偏微分にたどり着く前にすでに撃沈,見事に挫折してしまいました f^^;

その反動からでしょうか,今は,「感覚的に分かる」を大切にしながら数学の指導をしています。今回も,厳密性に関しては目を瞑れるところは目を瞑るを原則に(というより,私自身が厳密に理解していないの方が正しい ToT),私のように入学と同時に挫折しそうな学生さんを支援できるよう,微分積分の話しをしていきます。工学系の学生の皆さんが,微分積分を2年次以降の専門の学習と研究に使える\(\cdots\)これを第1の目標にしたいと思います。

2変数の関数

2変数の関数というのは,例えば \[\begin{eqnarray*} f(x,\ y) &=& x^2 - y^2 \\[2px] f(x,\ y) &=& \sin\sqrt{x^2 + y^2} \end{eqnarray*}\] というように,2つの変数(上の例では \(x\)\(y\)) で定義されている関数のことです。これだけ見ても,一体どのような関数なのか?が分かりません。どのような関数かが分からないときには,グラフを描くのが一番です。イメージできないものを描くなんてことはできません。ここはコンピュータに描いてもらうことにしましょう。

グラフ作成は普段 GeoGebra にお願いするところですが,3Dのグラフに関しては gnuplot の表現力が優れているので,今回は gnuplot に描いてもらいます。

下の図が,gnuplot の描いた \(f(x,\ y) = x^2 - y^2\) のグラフです。

下に凸の放物線と上に凸の放物線を組み合わせて作ったような曲面になります。乗馬の鞍のような形をイメージしてもらえれば良いと思います。2変数の関数のグラフは,このように,通常 \(xyz\) 空間で曲面になります。
それでは,\(f(x,\ y) = \sin\sqrt{x^2 + y^2}\) のグラフはどのような曲面になるか?イメージしてみてください。イメージできたら下の「グラフ表示」クリックしてください。

グラフ表示

gnuplot はグラフを描くために覚えなければならないことが幾つかあり,敷居が高いかなと思われます。一方で,簡単に2変数関数のグラフを描くアプリが GeoGebra をはじめとして多くあります。自分自身にとって使いやすいものを1つ選んで,関数の特徴をつかむ必要があるときに利用するよう心がけるとよいと思います。

極限の考え方

さて,このような2変数の関数に対して微分や積分を考えていくのですが,1変数の微積分と同様に極限という概念が重要になってきます。1変数の場合の微分係数の定義は,次のとおりでした。

関数 \(f(x)\)\(x = a\) で連続であり,かつ極限値 \[\lim_{h \to 0}\frac{f(a + h) - f(a)}{h}\] が存在するとき,\(f(x)\)\(x = a\) で微分可能であるといい,この極限値を \(x = a\) における \(f(x)\) の微分係数という。

この場合,\(\displaystyle \lim_{h \to 0}\) は,\(h\)\(0\) にはならないけれど限りなく \(0\) に近づくとき,\(\displaystyle \lim_{h \to 0}\) に続く比(平均変化率)はどのような値に近づくか?を表すことは言うまでもありません。

ところが,これがとても曖昧な言い回しなのです。曖昧さや矛盾なしに極限を説明するためには,\(\epsilon - \delta\) 論法(イプシロン-デルタ)を用います。この \(\epsilon - \delta\) 論法は,私のような凡人にはとても分かりにくく,数学を難しくしていると言われています。ただ,2変数の場合にはどこからどのように近づくか?という議論も出てきますので,厳密に考える際にはこのような考え方があるということは知っておくべきだと考えます。

\(\epsilon - \delta\) 論法による極限値の定義

関数 \(f(x)\) について,\(\displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = b\) であるとは,次のことが成り立つことである。

任意の正の数 \(\epsilon\) に対して,正の数 \(\delta\) が存在して,\(\left|\,x - a\,\right|<\delta\) である限り \(\left|\,f(x) - b\,\right| < \epsilon\) である。

定義ですから,解説するようなものではないかも知れませんが,何となく分かっていただくために少々説明を加えます。

\(x\)

\(y\)

\(b + \epsilon\)

\(b\)

\(b - \epsilon\)

\(x_1\)

\(a\)

\(x_2\)

例えば上は \(\displaystyle \lim_{x \to a}f(x) = b\) が成り立っている場合の \(y = f(x)\) のグラフです。この図の上で \[f(x_1) = b - \epsilon\ ,\quad f(x_2) = b + \epsilon\] であるとします。\(\left|\,x_1 - a\,\right|\)\(\left|\,x_2 - a\,\right|\) の大きくない方の値(勿論それより小さい値ならOK)を \(\delta\) としてとれば,\(\left|\,x - a\right| < \delta\) である限り \(\left|\,f(x) - b\,\right| < \epsilon\) が言えます。このことは,\(\epsilon\) をどのように小さい(\(0\) に近い)値にとっても必ず言えることです。

\(x\)

\(y\)

\(a\)

逆に,極限値が存在しない場合には,\(\epsilon\) をある程度小さくすると,\(\delta\) をどんなに小さくとっても \(\left|\,f(x) - b\,\right| < \epsilon\) を成り立たたせる \(b\) は存在しないことが分かります。

ここまで準備ができたら,いよいよ,2変数の関数について極限の話しに進むことができます。

2変数関数の極限

1変数の関数では,片側極限を考えました。 \[\lim_{x \to a - 0}f(x)\ ,\quad \lim_{x \to a + 0}f(x)\] \(a\) より小さい値をとりながら \(a\) に近づくか? 逆に \(a\) より大きい値をとりながら \(a\) に近づくか? この2つが一致して \(x \to a\) のときの極限値が存在するということでした。ここは,よろしいでしょうか?

2変数の場合に \(\left(x,\ y\right)\)\(\left(a,\ b\right)\) に近づくというと,四方八方から近づくことができます。したがって,先ほど書いたように,どこから近づいてきてもある値に収束するということを示すためには,\(\epsilon - \delta\) 論法を使う必要があります。

2変数関数の極限

\(x\)\(y\) の2変数関数 \(f(x,\ y)\) について \[\lim_{(x,\ y) \to (a,\ b)}f(x,\ y) = c\] であるとは,次が成り立つことをいう。

任意の正の数 \(\epsilon\) に対して,正の数 \(\delta\) が存在して,\(\sqrt{(x - a)^2 + (y - b)^2}<\delta\) である限り \(\left|\,f(x,\ y) - c\,\right| < \epsilon\) である。

そうしますと,2変数関数の連続性を \(\epsilon - \delta\) 論法を用いて次のように定義することができます。

2変数関数の連続

関数 \(f(x,\ y)\)\((a,\ b)\) において連続であるとは,次が成り立つことである。

まず,関数 \(f(x,\ y)\)\((a,\ b)\) で定義されている。そのう上で,
任意の正の数 \(\epsilon\) に対して,正の数 \(\delta\) が存在して,\(\sqrt{(x - a)^2 + (y - b)^2}<\delta\) である限り \(\left|\,f(x,\ y) - f(a,\ b)\,\right| < \epsilon\) である。

数学を専門に学ぶような方でなければ,平面上で点 \((x,\ y)\) がある点に近づくときに\(\cdots\)というイメージで十分であろうと思います。ただし,様々な集合の上で微分や積分を行うという方には,しっかりした理論構築をするために \(\epsilon - \delta\) 論法はマストになります。

今日は手始めということで,2変数関数はアプリを使ってグラフを描けば理解しやすくなるということ,極限を曖昧さと矛盾がないよう説明するために \(\epsilon - \delta\) 論法という考え方があるということ,この2つをお話ししました。振り返っておきましょう。

Last modified: Monday, 2 August 2021, 3:49 PM