本日のお題

  1. 2変数関数について,ある点において(全)微分可能とは「その点でグラフに,\(xy\) 平面に垂直でない接平面が存在する」であることを理解します。
  2. 2変数関数のグラフに接平面が存在するとき,接平面の方程式は接点の近くでの1次近似式であることを理解します。
  3. 2変数関数のグラフの接平面の方程式が\[z = f(x_0,\ y_0) + a(x - x_0) + b(y - y_0)\]であるとき,\(a\)\(b\) を偏微分係数といい\[\left\{\begin{array}{l} \displaystyle a = \lim_{x \to x_0} \frac{f(x,\ y_0) - f(x_0,\ y_0)}{x - x_0} \\ \displaystyle b = \lim_{y \to y_0} \frac{f(x_0,\ y) - f(x_0,\ y_0)}{y - y_0}\end{array}\right.\]であることを理解します。
  4. 偏導関数の意味を知り,偏導関数 \(f_x(x,\ y)\)\(f_y(x,\ y)\) を求められるようになります。

1変数関数の微分

1次関数 \(f(x)\) では,\(x = x_0\) で微分可能なとき,\(y = f(x)\) のグラフに点 \(\left(x_0,\ f(x_0)\right)\) で接線を引くことができて,接線の方程式は \[\begin{eqnarray*} && y - f(x_0) = f'(x_0)\left(x - x_0\right) \tag{2.1} \\[2px] ∴\quad && y = f(x_0) + f'(x_0)\left(x - x_0\right) \end{eqnarray*}\] でした。

\(x\)

\(y\)

\(y = f(x)\)

\(x_0\)

\(y_0\)

このことは \(\cdots\) 関数 \(f(x)\)\(x_0\) の近くにおいて1次式 \[y = f(x_0) + f'(x_0)\left(x - x_0\right) \tag{2.2}\] で近似できる \(\cdots\) と言い換えることができます。ここで \((2.1)\)\[dx = x - x_0\ ,\quad dy = y - f(x_0)\] と変数変換して,\(f'(x_0)\)\(f'(x)\) と書くと次の式になります。

\[dy = f'(x)\,dx\]

これを関数 \(f(x)\)微分 といいました。

2変数関数の1次近似式

それでは,次,2変数の関数の場合です。グラフは \(xyz\) 空間の曲面になりました。その面が滑らかだったら,接平面を考えることができます。高校の数学でも,数学Bの空間ベクトルの単元で,球面に接する平面の方程式を求めました。

球面 \(x^2 + y^2 + z^2 = 26\) の点 \((3,\,1,\,4)\) における接平面

一般に,関数 \(f(x,\ y)\) のグラフの接平面の方程式を求めることは,関数 \(f(x,\ y)\) の接点近くでの一次近似式を求めることに他なりません。1変数関数におけるグラフと接線の関係に同じですね。

そこで,空間で点 \(\left(x_0,\ y_0,\ f(x_0,\ y_0)\right)\) を通る平面を \[z = f(x_0,\ y_0) + a(x - x_0) + b(y - y_0) \tag{2.3}\] として,\(f(x,\ y)\)\((2.3)\) との誤差を \(g(x)\) とします。\(g(x)\) は次の式です。 \[g(x,\ y) = f(x,\ y) - \left\{f(x_0,\ y_0) + a(x - x_0) + b(y - y_0)\right\} \tag{2.4}\]

平面 \((2.3)\)\(f(x,\ y)\) の接平面(1次近似式)であるとは,\((x_0,\ y_0)\) の近くで誤差 \(g(x)\)\((x,\ y)\)\((x_0,\ y_0)\) との距離に対して無視できる ということで,極限を使って式に表せば \[\lim_{(x,\ y) \to (x_0,\ y_0)}\,\frac{g(x,\ y)}{\sqrt{(x - x_0)^2 + (y - y_0)^2}} = 0 \tag{2.5}\] となります。

このような \(a\)\(b\) が存在するとき,関数 \(f(x,\ y)\)\((x_0,\ y_0)\) において 微分可能 または 全微分可能 であるといいます。図形的には,\(xy\) 平面に垂直でない接平面が存在することを意味します。

偏微分係数

次に「これら \(a\)\(b\) の値は,どのように求めることができるか?」を考えなければなりません。\((2.4)\)\((2.5)\) に代入しましょう。 \[\lim_{(x,\,y)\to(x_0,\,y_0)} \frac{f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0) - a(x - x_0) - b(y - y_0)}{\sqrt{(x - x_0)^2 + (y - y_0)^2}} = 0 \tag{2.6}\]

この式から \(a\)\(b\) を求めたいのですが,2つの未知数を一度に決めるのは難しそうです。そこで,\(y = y_0\) とします。 \[\begin{eqnarray*} && \lim_{x \to x_0} \frac{f(x,\ y_0) - f(x_0,\ y_0) - a(x - x_0)}{|\,x - x_0\,|} = 0 \\[2px] && \lim_{x \to x_0} \left\{\frac{f(x,\ y_0) - f(x_0,\ y_0)}{x - x_0} - a\right\} = 0 \\[2px] && ∴\quad a = \lim_{x \to x_0} \frac{f(x,\ y_0) - f(x_0,\ y_0)}{x - x_0} \end{eqnarray*}\]

\(f(x,\ y)\) が微分可能ならば,この極限は存在するはずです。また,\((2.6)\) において,\(x = x_0\) とすると,同様に \[b = \lim_{y \to y_0} \frac{f(x_0,\ y) - f(x_0,\ y_0)}{y - y_0}\] となります。・・・ということは・・・

\(a\)\(f(x,\ y_0)\)\(x\) の関数と見たときの \(x = x_0\) における微分係数であり

\(b\)\(f(x_0,\ y)\)\(y\) の関数と見たときの \(y = y_0\) における微分係数です。

ここで,用語の定義をしておきます。

偏微分可能と偏微分係数

\[\lim_{x \to x_0}\frac{f(x,\ y_0) - f(x_0,\ y_0)}{x - x_0}\ ,\quad \lim_{y \to y_0}\frac{f(x_0,\ y) - f(x_0,\ y_0)}{y - y_0} \tag{2.7}\] が存在するとき,\(f(x,\ y)\)\((x_0,\ y_0)\)偏微分可能 であるといい,その極限値を \(f(x,\ y)\)\((x_0,\ y_0)\) における 偏微分係数 といいます。

偏微分係数は,\(\displaystyle \frac{\partial f}{\partial x}(x_0,\ y_0)\)\(\displaystyle \frac{\partial f}{\partial y}(x_0,\ y_0)\) または \(f_x(x_0,\ y_0)\)\(f_y(x_0,\ y_0)\) などと表します。\(\partial\) の読み方は「ラウンド」です。

今までの説明をまとめると・・・

\(x\)\(y\) の関数 \(f(x,\ y)\)\((x_0,\ y_0)\) で(全)微分可能ならば,偏微分可能であって,グラフの \((x_0,\ y_0)\) における接平面の方程式は \[z - f(x_0,\ y_0) = f_x(x_0,\ y_0)(x - x_0) + f_y(x_0,\ y_0)(y - y_0)\] です。

ただし,逆に偏微分が可能であっても全微分可能であるとは限らないので,注意が必要です。

偏導関数

実際には,偏微分係数を \((2.7)\) の極限として求めることはほとんどありません。1変数関数の場合と同様,導関数(偏導関数 といいます)を求めて \(x\)\(y\) の値を偏導関数に代入します。偏微分係数の定義から分かるように,偏導関数は,一方の変数を定数とみなして微分すれば求められます。なお,偏導関数を求めることを 偏微分する といいます。

例題2-1

例えば,関数 \(f(x,\ y) = x^2 - y^2\) について

\(x\) で偏微分すると \(f_x(x,\ y) = 2x\)
\(y\) で偏微分すると \(f_y(x,\ y) = 2y\)

となります。

例題2-2

球面 \(x^2 + y^2 + z^2 = 26\) の点 \((3,\,1,\,4)\) における接平面の方程式を,偏微分を使って求めてみましょう。

解 答

球面の \(xy\) 平面の上側半分を表す式は \[z = \sqrt{26 - x^2 - y^2}\] です。\(z\)\(x\)\(y\) で偏微分して,\((3,\ 1)\) を代入します。 \[\begin{eqnarray*} & z_x = -\frac{x}{\sqrt{26 - x^2 - y^2}}\ ,\quad z_y = -\frac{y}{\sqrt{26 - x^2 - y^2}} \\[2px] & ∴\quad z_x\Big|\!_{(x,\,y) = (3,\,1)} = -\frac{3}{4}\ ,\quad z_y\Big|\!_{(x,\,y) = (3,\,1)} = -\frac{1}{3} & \end{eqnarray*}\] したがって,求める接平面の方程式は \[\begin{eqnarray*} && z - 4 = -\frac{3}{4}(x - 3) - \frac{1}{3}(y - 1) \\[2px] && ∴\quad z = \frac{26 - 3x - y}{4} \end{eqnarray*}\]

もちろん,この結果は,法線ベクトルから求められる方程式 \[3(x - 3) + (y - 1) + 4(z - 4) = 0\] と一致しています。

ここまで注意深く読まれた方は,「アレ?おかしいぞ!!」と思ったのではないでしょうか? 偏微分可能であるからと言って,全微分可能つまり接平面が存在するとは限らないので注意!!と書きました。にも拘らず,偏微分係数を求めて,そのまま接平面の方程式は\(\cdots\)と解答しています。球面ですから接平面があることは分かっていますが,形がよく分からない図形の場合は,偏微分係数から即接平面の方程式とはいきません。要するに,どのようなとき全微分可能であるかについて,まだ説明をしていないということです。その辺りのことは,次回扱いたいと思います。

課題2-1

次の関数 \(f(x,\ y)\) の偏導関数 \(f_x(x,\ y)\)\(f_y(x,\ y)\) を求めましょう。

  1. \(f(x,\ y) = xy + 2x + 3y + 6\) 解答 隠す
  2. \(f(x,\ y) = x^3 + x^2 y + xy^2 + y^3\) 解答 隠す
  3. \(f(x,\ y) = \displaystyle \frac{xy}{x^2 + y^2}\) 解答 隠す
  4. \(f(x,\ y) = \sin(x + 2y)\) 解答 隠す
  5. \(f(x,\ y) = \log(x^2 + y^2)\) 解答 隠す
最終更新日時: 2021年 08月 2日(月曜日) 15:54