2次偏導関数
本日のお題
- 関数 \(f(x,\ y)\) について,偏導関数 \(f_x(x,\ y)\) と \(f_y(x,\ y)\) が偏微分可能であれば,更に偏微分して2次偏導関数を考えられることを理解します。
- 2次偏導関数 \(f_{xy}(x,\ y)\) と \(f_{yx}(x,\ y)\) が連続ならば,\(x\) と \(y\) で偏微分の順序を変えても\[f_{xy}(x,\ y) = f_{yx}(x,\ y)\]の成り立つことを確認し,理解します。
2次偏導関数
関数 \(f(x,\ y)\) について,その偏導関数 \(f_x(x,\ y)\) と \(f_y(x,\ y)\) が更に偏微分可能であるならば,次の4つを考えることができます。 \[f_{xx}(x,\ y)\ ,\quad f_{xy}(x,\ y)\ , \quad f_{yx}(x,\ y)\ ,\quad f_{yy}(x,\ y)\] これらを \(f(x,\ y)\) の 2次偏導関数(または2階偏導関数)といいます。
当然,2次偏導関数が更に偏微分可能であれば,3次偏導関数を考えることができ,2次以上の偏導関数をまとめて 高次偏導関数 といいます。本講座では,高次偏導関数として2次偏導関数のみを扱います。
なお,2次偏導関数の表記には,上記の他 \[\frac{\partial^2 f}{\partial x \partial x}(x,\ y)\ ,\quad \frac{\partial^2 f}{\partial x \partial y}(x,\ y)\ ,\quad \frac{\partial^2 f}{\partial y \partial x}(x,\ y)\ ,\quad \frac{\partial^2 f}{\partial y \partial y}(x,\ y)\] なども使います。
課題4-1
次の関数 \(f(x,\ y)\) について,2次偏導関数をすべて求めましょう。
\(f_{xy}(x,\ y)\) と \(f_{yx}(x,\ y)\)
上の課題を見るといずれも \[f_{xy}(x,\ y) = f_{yx}(x,\ y)\] が成り立っていることに気づきます。このことは常に成り立つかというと,そうではありません。\(x\) と \(y\) で偏微分の順序が異なるときその結果は別物 … と考えておいた方が無難でしょう。それでは,どのようなときに2つの偏導関数が等しくなるかというと,次が成り立ちます。
関数 \(f(x,\ y)\) について,領域 \(D\) で \(f_{xy}(x,\ y)\) と \(f_{yx}(x,\ y)\) がともに連続ならば,領域 \(D\) において \[f_{xy}(x,\ y) = f_{yx}(x,\ y) \tag{4.1}\]
証明をしましょう。
関数 \(f(x,\ y)\) について,領域 \(D\) で \(f_{xy}(x,\ y)\) と \(f_{yx}(x,\ y)\) が存在してともに連続であるとして,次の関数 \(F(x)\) を考えます。\((x,\ y)\) と \((x_0,\ y_0)\) については,いずれも領域 \(D\) 内の点とします。 \[F(x,\ y) = f(x,\ y) - f(x,\ y_0) - f(x_0,\ y) + f(x_0,\ y_0)\] ここで,2つの関数 \(\phi(x,\ y)\) と \(\psi(x,\ y)\) を次のように決めます。 \[\left\{\begin{array}{l} \phi(x,\ y) = f(x,\ y) - f(x,\ y_0) \\ \psi(x,\ y) = f(x,\ y) - f(x_0,\ y) \end{array}\right.\] すると,\(F(x,\ y)\) は,まず \(\phi(x,\ y)\) を用いて次のように表せまます。 \[F(x,\ y) = \phi(x,\ y) - \phi(x_0,\ y)\] \(\phi(x,\ y)\) は,\(x\) について見れば,\(x_0\) と \(x\) の間で連続かつ微分可能なので平均値の定理を用いて \[\begin{eqnarray*} && \frac{\phi(x,\ y) - \phi(x_0,\ y)}{x - x_0} = \phi_x(a,\ y) \\[2px] ∴\ && \phi(x,\ y) - \phi(x_0,\ y)= \phi_x(a,\ y)(x - x_0) \end{eqnarray*}\] を満たす \(a\) が \(x_0\) と \(x\) の間に存在します。したがって \[F(x,\ y) = \left\{f_x(a,\ y) - f_x(a,\ y_0)\right\}(x - x_0)\] となります。\(f_x(a,\ y)\) を \(y\) について見れば,\(y_0\) と \(y\) の間で連続かつ微分可能なので,再び平均値の定理を用いて \[\begin{eqnarray*} && \frac{f_x(a,\ y) - f_x(a,\ y_0)}{y - y_0} = f_{xy}(a,\ b) \\[2px] ∴\ && f_x(a,\ y) - f_x(a,\ y_0) = f_{xy}(a,\ b)(y - y_0) \end{eqnarray*}\] を満たす \(b\) が \(y_0\) と \(y\) の間に存在するので \[F(x,\ y) = f_{xy}(a,\ b)(y - y_0)(x - x_0)\hspace{3em}(4.2)\] が成り立ちます。
次に,\(F(x,\ y)\) を \(\psi(x,\ y)\) を用いて表します。 \[F(x,\ y) = \psi(x,\ y) - \psi(x,\ y_0)\] となるので,上と同じ議論を繰り返して
\(F(x,\ y) = f_{yx}(d,\ c)(x - x_0)(y - y_0)\hspace{3em}(4.3)\)
\(c\) は \(y_0\) と \(y\) の間にあり \(\hspace{5em}\)
\(d\) は \(x_0\) と \(x\) の間にある \(\hspace{5em}\)
が成り立ちます。\((4.2)\) と \((4.3)\) から \[f_{xy}(a,\ b) = f_{yx}(d,\ c)\] であると分かるので,さらに,この式の両辺の \((x,\ y) \to (x_0,\ y_0)\) における極限を考えます。\((x,\ y) \to (x_0,\ y_0)\) のとき \[(a,\ b) \to (x_0,\ y_0)\ ,\quad (d,\ c) \to (x_0,\ y_0)\] であり,\(f_{xy}(x,\ y)\) と \(f_{yx}(x,\ y)\) が \(D\) で連続なので \[f_{xy}(x_0,\ y_0) = f_{yx}(x_0,\ y_0)\] が成り立ちます。\((x_0,\ y_0)\) は \(D\) 内の任意の点にとったので \((4.1)\) \[f_{xy}(x,\ y) = f_{yx}(x,\ y)\] の成り立つことが示されました。