本日のお題

  1. 2変数関数の極大・極小の定義を理解します。
  2. 極大・極小となる点では,偏微分可能であれば \(f_x(x_0,\ y_0) = f_y(x_0,\ y_0) = 0\) であることを理解します。
  3. \(f_x(x_0,\ y_0) = f_y(x_0,\ y_0) = 0\) である点において,\(f_{xx}(x_0,\ y_0)\) と ヘッセ行列式の符号により極大・極小を判定する方法を理解します。

下図は,関数 \(f(x,\ y) = x^2 + y^2\) のグラフです。 1変数関数と同様に,2変数関数 \(f(x,\ y)\) についても,点 \((x_0,\ y_0)\) の近くで \[f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0) < 0\ ,\quad f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0) > 0\] が成り立つとき,前者ならば \(f(x,\ y)\)\((x,\ y) = (x_0,\ y_0)\)極大 であり,後者ならば 極小 であるといいます。また,極大・極小であるときの関数の値をそれぞれ 極大値極小値 といい,極大値と極小値を合わせて 極値 ということも1変数の場合と同じです。

上のグラフから \(f(x,\ y) = x^2 + y^2\) は原点で極小(最小でもあります)であることは明らかです。

ところで,1変数関数については,極大・極小の判定に導関数 \(f'(x)\) と2次導関数 \(f''(x)\) とを利用しました。

\(f'(x_0) = 0\ ,\quad f''(x_0) < 0\ \Longrightarrow\ x = x_0\) で極大
\(f'(x_0) = 0\ ,\quad f''(x_0) > 0\ \Longrightarrow\ x = x_0\) で極小

これは,必要十分な条件ではなく逆が成り立たないのですが,極大・極小の判定のためには十分に実用的です。それでは,2変数関数の極大・極小はどのように判定できるのでしょうか? 次にこのことを考えていきたいと思います。

極大・極小と偏微分係数

まず,極大・極小について次が成り立ちます。

\(f(x,\ y)\)\((x_0,\ y_0)\) で極値をとり偏微分可能であれば \[f_x(x_0,\ y_0) = f_y(x_0,\ y_0) = 0\] が成り立ちます。

証明は簡単です。
\(f_x(x_0,\ y_0) \ne 0\) または \(f_y(x_0,\ y_0) \ne 0\) ならば,\(x\)\(y\) の少なくとも一方に関して,\(x = x_0\) または \(y = y_0\) で増加するか減少するかしていますから極大でも極小でもありません。これで,対偶が示されました。

\(f_x(x_0,\ y_0) = 0\ ,\ f_y(x_0,\ y_0) = 0\) を満たす点 \((x_0,\ y_0)\)停留点 といいます。上で確認したことから,停留点の中に極大・極小となる点が含まれていることが分かります。次に,停留点の中から極大・極小となる点を見つける手段を考えましょう。前回学んだのテイラー多項式を用います。

関数 \(f(x,\ y)\) は,\((x_0,\ y_0)\) の近くでホボホボ \[f(x,\ y) = \left\{1 + \left(h\frac{\partial}{\partial x} + k\frac{\partial}{\partial y}\right) + \frac{1}{2}\left(h\frac{\partial}{\partial x} + k\frac{\partial}{\partial y}\right)^2\right\}f(x_0,\ y_0) \\ (\ h = x - x_0\ ,\quad k = y - y_0\ )\] が成り立っているということでした。\(f_x(x_0,\ y_0) = f_y(x_0,\ y_0) = 0\) ですから \[\begin{eqnarray*} && f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0) \\[2px] &=& \frac{1}{2}\Big\{f_{xx}(x_0,\ y_0)h^2 + 2f_{xy}(x_0,\ y_0)hk + f_{yy}(x_0,\ y_0)k^2\Big\} \end{eqnarray*}\] この式の右辺を \(h\)\(k\) の2次式と考えれば,判別式 \[D/4 = \Big\{f_{xy}(x_0,\ y_0)\Big\}^2 - f_{xx}(x_0,\ y_0)\cdot f_{yy}(x_0,\ y_0)\] の符号により,次のように分類することができます。

\(D/4 > 0\ \Longrightarrow\ f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0)\) は符号が変化する
\(D/4 < 0\ \Longrightarrow\ f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0)\) は符号が変化しない

したがって,\(D/4 > 0\) であれば,\(f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0)\) は正の値も負の値もとるので極大でも極小でもありません。

逆に \(D/4 < 0\) であれば,\(f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0)\) は符号が変化せず

\(f_{xx}(x_0,\ y_0) > 0\) のとき \(f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0) > 0\) が成り立つので,\((x_0,\ y_0)\) で極小となります。

\(f_{xx}(x_0,\ y_0) < 0\) のとき \(f(x,\ y) - f(x_0,\ y_0) < 0\) が成り立つので,\((x_0,\ y_0)\) で極大となります。

これまた1変数関数の場合と同様に,十分条件でしかないのですが,以上のことは使えそうです。それでは,まとめましょう。分かりやすくまとめるために,次の行列式(ヘッセ行列式 といいます)を使います。 \[H = \left|\begin{array}{cc} f_{xx} & f_{xy} \\ f_{xy} & f_{yy} \end{array}\right| = f_{xx}\cdot f_{yy} - f_{xy}\!^2\] \(D/4\) とは符号が逆ですから,注意してください。

関数 \(f(x,\ y)\) の停留点 \((x_0,\ y_0)\) において

\(H > 0\ ,\ f_{xx}(x_0,\ y_0) > 0\) ならば,その点で極小となる。

\(H > 0\ ,\ f_{xx}(x_0,\ y_0) < 0\) ならば,その点で極大となる。

\(H < 0\) ならば,その点では極値をとらない。

例によって「\(H = 0\) のときはどうするんだ?」というツッコミが聞こえてきますが,これには知らんぷり f^^; あくまで十分条件だということで \(\cdots\)

例題8-1

関数 \(f(x,\ y) = x^2 + y^2\) の極大・極小を調べましょう。

解 答

\(f_x(x,\ y) = 2x\ ,\ f_y(x,\ y) = 2y\) ですから,停留点は \((0,\ 0)\) のみです。

さらに \(f_{xx} = 2\ ,\ f_{xy} = 0\ ,\ f_{yy}(x,\ y) = 2\) より \[H = 4 > 0\ ,\quad f_{xx}(0,\ 0) = 2 > 0\] であり,\((0,\ 0)\) で極小値 \(0\) をとります。

例題8-2

関数 \(f(x,\ y) = x^2 - y^2\) についてはどうでしょうか?

解 答

\(f_x(x,\ y) = 2x\ ,\ f_y(x,\ y) = -2y\) ですから,停留点は \((0,\ 0)\) のみです。

さらに \(f_{xx} = 2\ ,\ f_{xy} = 0\ ,\ f_{yy}(x,\ y) = -2\) より \(H = -4 < 0\) となって,極値はとりません。

関数 \(f(x,\ y) = x^2 - y^2\) のグラフは以前にも描いていますが,下図のようになります。確かに原点は,極大でも極小でもありません。 このグラフの \((0,\ 0)\) のように \(f_x(x_0,\ y_0) = f_y(x_0,\ y_0) = 0\) であるけれど \(H < 0\) である点を 鞍点(あんてん)といいます。

最終更新日時: 2021年 08月 2日(月曜日) 16:14