本日のお題

微分方程式の最も基本的な形である 変数分離形 について,方程式の形と解法を理解します。

変数分離形の微分方程式とは?

例えば \(x\) の関数 \(y\) があるとき,\(x\)\(y\) 及び \(y\) の導関数の方程式を微分方程式と呼びました。このうち,\(y\) の導関数が1階導関数だけの微分方程式を1階微分方程式といいます。運動方程式 \(F = ma\) は2階導関数を含む2階微分方程式です。微分方程式を使って物体の運動を考えるためには,2階微分方程式を解く必要があるのですが,まずは,しばらく1階微分方程式 ― つまり,\(x\)\(y\)\(y'\) の方程式 ― の解法について学んでいきます。

本時は,その中でも,導関数 \(y'\)\(x\) の関数と \(y\) の関数の積で表される 変数分離形 について学びます。

変数分離形

\[\frac{dy}{dx} = f(x)\cdot g(y)\]

 例  次の微分方程式は,すべて変数分離形です。

  1. \(\displaystyle \frac{dy}{dx} = xy\)
  2. \(\displaystyle \frac{dy}{dx} + \frac{x - 1}{y}\) = 0
  3. \(\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{2xy}{x^2 + 1}\)
  4. \(\displaystyle \frac{dy}{dx} = y^2 - y\)
  5. \(\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{y}{x} + \frac{1}{xy}\)

変数分離形の解法

変数分離形の微分方程式をどのように解くかを見ていきましょう。\[\frac{dy}{dx} = f(x) \cdot g(y) \tag{1}\]の形が変数分離形です。この名前が解法を表しています。

まず,(1) の両辺を \(g(y)\) で割りましょう。\[\frac{1}{g(y)}\cdot\frac{dy}{dx} = f(x)\]さらに両辺を \(x\) で積分します。\[\int \frac{1}{g(y)}\cdot\frac{dy}{dx}\,dx = \int f(x)\,dx\]この式の左辺・・・置換積分の形になっていますね。したがって\[\int\frac{1}{g(y)}\,dy = \int f(x)\,dx\]と書き換えられます。導関数の記号である \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) は,分数ではありませんが,形式的に \(dx\)\(dy\) に分けてしまい,これらも含めて2つの変数 \(x\)\(y\) をそれぞれの辺に分ける(分離する)ことができるということです。これが変数分離形という名前の所以です。

ここで,1つだけ注意! 式 (1) を \(g(y)\) で割りましたが,\(g(y)\)\(g(y) = 0\) という定数関数である可能性もあります。この場合は,\(g(y)\) で割ることができませんから,別途考える必要があります。

例題1 微分方程式\[\frac{dy}{dx} = xy \tag{2}\] を解きましょう。上の例の 1. です。

解 答

\(y = 0\) ではない場合\[\begin{eqnarray*} \int \frac{1}{y}\,dy &=& \int x \,dx \\ \log|\,y\,| &=& \frac{1}{2}x^2 + C \\ |\,y\,| &=& e^{\frac{1}{2}x^2 + C} \\ y &=& \pm e^{C}\cdot e^{\frac{1}{2}x^2} \end{eqnarray*}\] ここで,\(\pm e^C\) を改めて \(C\) と書けば\[y = Ce^{\frac{1}{2}x^2} \tag{3}\]定数関数 \(y = 0\) も明らかに (2) の解ですが,これは (3) に含まれます(\(C = 0\) の場合)。

以上から,微分方程式 (2) の解は\[y = Ce^{\frac{1}{2}x^2}\]

※なお,両辺を積分する際に,両辺に積分定数が現れるはずですが,一方の積分定数は移項したと考えて,いずれかの辺にだけ積分定数を付けます。

例題2 微分方程式\[\frac{dy}{dx} + \frac{x - 1}{y} = 0\] を解きましょう。上の例の 2. です。

解 答

これも変数分離形です。少しばかり意地悪な形をしているかもしれません。\[\frac{dy}{dx} = - \frac{x - 1}{y} \tag{4}\]とすれば変数分離形であることが明らかです。\[\begin{array}{l} \displaystyle \int y\,dy = -\int (x - 1) \,dx \\ \displaystyle \frac{1}{2} y^2 = -\frac{1}{2} (x - 1)^2 + C \\ \mbox{∴}\quad (x - 1)^2 + y^2 = 2C \end{array}\]したがって,微分方程式 (4) は,点 \(\left(1,\ 0\right)\) を中心とする円群を表していることが分かります。

課題1

例の 3. ~ 5. については,課題とします。解いてみましょう。

3. \(\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{2xy}{x^2 + 1}\) 解答 隠す

4. \(\displaystyle \frac{dy}{dx} = y^2 - y\) 解答 隠す

5. \(\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{y}{x} + \frac{1}{xy}\) 解答 隠す

最終更新日時: 2021年 08月 2日(月曜日) 16:45