本日のお題

2変数の全微分型微分方程式について,完全微分方程式となる条件を理解すると共に,完全微分方程式の解法を理解して解を求められるようになります。

\(x\)\(y\) の2変数関数 \(f(x,\ y)\) について \[df(x,\ y) = f_x(x,\ y)\,dx + f_y(x,\ y)\,dy\] を全微分といいました。

式が形式的にこのような形の微分方程式 \[p(x,\ y)\,dx + q(x,\ y)\,dy = 0 \tag{1}\]全微分型微分方程式 といい,その中で,特に2つの式 \(p(x,\ y)\)\(q(x,\ y)\) とが,それぞれ,ある関数の \(x\) 偏導関数と \(y\) 偏導関数になっているとき,微分方程式 \((1)\)完全微分方程式 といいます。例えば \[f(x,\ y) = x^2 - 3xy + 2y^2\] としましょう。すると \[f_x(x,\ y) = 2x - 3y\ ,\ f_y(x,\ y) = -3x + 4y\] となります。したがって,微分方程式 \[(2x - 3y)\,dx - (3x - 4y)\,dy = 0 \tag{2}\] は,完全微分方程式であると言えます。

完全微分方程式であることが分かっていれば,解法の方針はそれほど難しいものではありません。勿論,積分の計算が簡単にできないという理由で,難しいということは当然ありますが・・・
完全微分方程式 \((2)\) は,解に \(f(x,\ y) = x^2 - 3xy + 2y^2\) が含まれていることも分かっていますので,この方程式を解いてみましょう。 \[f_x(x,\ y) = 2x - 3y\] ですから,この式を \(x\) で積分します。すると \[f(x, \ y) = x^2 - 3xy + g(y) \tag{3}\] 注意すべきことは,最後につくのが定数ではなく,\(y\) の関数になるという点です。\(x\)\(y\) の関数を \(x\) で微分すると,\(y\) だけの部分は \(0\) になってしまいますから。
次に \((3)\)\(y\) で微分します。 \[f_y(x,\ y) = -3x + g'(y)\] これが \(-(3x - 4y)\) になるので,式を比較して \(g'(y) = 4y\) であることが分かります。\(g(y) = 2y^2 + C\) となるので \[f(x,\ y) = x^2 - 3xy + 2y^2 + C\] となって,一般解が求まりました。

これで,完全微分方程式の解法は,積分の難度を除けば,難しいものでないことが分かったと思います。それでは,次に全微分型方程式 \((1)\) が完全微分方程式であるかどうか? を見分ける方法を考えましょう。結論を先に書きます。

全微分型方程式 \(p(x,\ y)\,dx + q(x,\ y)\,dy = 0\) が 完全微分方程式 であるための必要十分条件は \[\frac{\partial}{\partial y}\,p(x, \ y) = \frac{\partial}{\partial x}\,q(x, \ y)\] が成り立つことです。

いつも通りに厳密な証明は行いません(言葉の使い方が間違っていますね。「行えません」です。)。私たちがよく使う,連続で微分可能な関数についてのみ考えます。このとき,必要性は明らかですから,十分性の確認を行いましょう。 \[\textcolor{blue}{\frac{\partial}{\partial y}\,p(x, \ y)} = \textcolor{red}{\frac{\partial}{\partial x}\,q(x, \ y)}\] が成り立っているとします。その上で \[\begin{eqnarray*} && F(x,\ y) = \int_a^x p(x,\ y)\,dx \\[4px] && G(x,\ y) = \int_a^y q(x,\ y)\,dy \\[4px] && z(x,\ y) = F(x,\ y) + G(a,\ y) \end{eqnarray*}\] であるとおきます。すると,\(\displaystyle \frac{\partial}{\partial x}z(x,\ y) = p(x,\ y)\) が成り立ちます。また, \[\begin{eqnarray*} \frac{\partial}{\partial y}z(x,\ y) &=& \frac{\partial}{\partial y}\int_a^x p(x,\ y)\,dx + q(a,\ y) \\[4px] &=& \int_a^x \textcolor{blue}{\frac{\partial}{\partial y}\,p(x,\ y)}\,dx + q(a,\ y) \\[4px] &=& \int_a^x \textcolor{red}{\frac{\partial}{\partial x}\,q(x,\ y)}\,dx + q(a,\ y) \\[4px] &=& \Big[\,q(x,\ y)\,\Big]_a^x + q(a,\ y) \\[4px] &=& q(x,\ y) - q(a,\ y) + q(a,\ y) \\[4px] &=& q(x,\ y) \end{eqnarray*}\] したがって,\(dz = p(x,\ y)\,dx + q(x,\ y)\,dy\) が成り立って,\(p(x,\ y)\,dx + q(x,\ y)\,dy = 0\) が完全微分方程式となります。

以上で,\(p(x,\ y)\,dx + q(x,\ y)\,dy = 0\) が 完全微分方程式 となるための必要十分条件が \[\frac{\partial}{\partial y}\,p(x, \ y) = \frac{\partial}{\partial x}\,q(x, \ y)\] であることが示されました。

例題4-6 \(\left(12x^2 + 2y\right)\,dx + \left(2x - 1\right)\,dy = 0\)

この微分方程式について,全微分方程式であることを示して,その解を求めましょう。

解 答

\[\frac{\partial}{\partial y}\left(12x^2 + 2y\right) = \frac{\partial}{\partial x}\left(2x - 1\right) = 2\] となるので,完全微分方程式です。そこで,\(f_x(x,\ y) = 12x^2 + 2y\) として \[\begin{eqnarray*} f(x,\ y) &=& \int\left(12x^2 + 2y\right)\,dx \\[4px] &=& 4x^3 + 2xy + g(y) \\[4px] ∴\quad f_y(x,\ y) &=& 2x + g'(y) = 2x - 1 \\[4px] ∴&& g'(y) = -1 \\[4px] ∴&& g(y) = -y + C \end{eqnarray*}\] 以上から  \(f(x,\ y) = 4x^3 + 2xy - y + C\)

課題4-3

次の全微分型方程式について,完全微分方程式であることを示して,その解を求めましょう。

1. \(\left(4x^3 + 2xy^2\right)dx + \left(2x^2y - 24y^3\right)dy = 0\) 解答 隠す

2. \(\displaystyle \left(1 + \frac{x}{\sqrt{x^2 + y^2}}\right)\,dx + \left(1 + \frac{y}{\sqrt{x^2 + y^2}}\right)\,dy = 0\) 解答 隠す

3. \(\left(e^{x + 2y} + 1\right)dx + 2\left(e^{x + 2y} + y\right)dy = 0\) 解答 隠す

4. \(e^x\left(\cos y + \sin y\right)dx + e^x\left(\cos y - \sin y\right)dy = 0\) 解答 隠す

最終更新日時: 2021年 08月 2日(月曜日) 16:56