本日のお題

定数係数の線形2階斉次微分方程式 \(y'' + ay' + by = 0\) について,特性方程式を知り,特性方程式が相異なる実数解 \(\alpha\)\(\beta\) をもつとき,その一般解が \(C_1 e^{\alpha x} + C_2 e^{\beta x}\) となることを理解します。

本時は次の形の微分方程式を扱います。\[y'' + ay' + by = 0 \tag{5.1}\]線形2階の微分方程式ですが,本講座では,各項の係数は定数の場合 ― すなわち定数係数の微分方程式 ― のみを扱います。また,右辺が \(0\) となっていて,このことも本時で扱う方程式の大きな特徴です。\[y'' + ay' + by = f(x)\]\(f(x)\)\(0\) の場合を斉次(または同次)微分方程式,そうでない場合を非斉次(または非同次)微分方程式といいます。非斉次の微分方程式の解法は,斉次微分方程式に比べ,ぐっと難しくなります。

数列の隣接3項間漸化式

線形2階微分方程式 (5.1) の解法を考える前にちょっとしたウォーミングアップをしましょう。次の問いを解いてください。

数列 \(\{a_n\}\) が次の漸化式を満たしているとき,一般項 \(a_n\)\(n\)\(a_1\) 及び \(a_2\) で表しましょう。\[a_{n+2} - 5a_{n+1} + 6a_n = 0 \tag{5.2}\]

特性方程式という考え方を使ったと思います。\(\lambda^2 - 5\lambda + 6 = 0\) を解くと \(\lambda = 2,\ 3\) を得ます。これを特性解といいました。これら特性解を用いると,(5.2) を次に2つの式に変形することができます。\[\begin{eqnarray*} && a_{n+2} - 3a_{n+1} = 2\left(a_{n+1} - 3a_n\right) \tag{5.3} \\[4px] && a_{n+2} - 2a_{n+1} = 3\left(a_{n+1} - 2a_n\right) \tag{5.4} \end{eqnarray*}\](5.3) からは,数列 \(\{a_{n+1} - 3a_n\}\) が 初項 \(a_2 - 3a_1\) で公比 \(2\) の等比数列であることが分かり,

(5.4) からは,数列 \(\{a_{n+1} - 2a_n\}\) が 初項 \(a_2 - 2a_1\) で公比 \(3\) の等比数列であることが分かります。したがって,\[\left\{\begin{array}{l} a_{n+1} - 3a_n = (a_2 - 3a_1)2^{n-1} \\ a_{n+1} - 2 a_{n} = (a_2 - 2a_1)3^{n-1} \end{array}\right.\]下式から上式の差をとれば\[a_n = (a_2 - 2a_1)3^{n-1} - (a_2 - 3a_1)2^{n-1}\]と一般項 \(a_n\) を求めることができます。

数列の漸化式から微分方程式へ

微分方程式の解き方を考えているのに,どうして数列の漸化式? と疑問に思われたことでしょう。ところが,これが大いに関係ありなのです。ほとんど同じ式変形で微分方程式\[y'' - 5y' + 6y = 0 \tag{5.5}\]を解くことができます。線形代数で線形空間,1次変換,固有値と固有ベクトルなどを学んだ方はお分かりだと思います。漸化式 (5.2) を満たす数列 \(\{a_n\}\) の集合も微分方程式 (5.5) の解集合も,同じ構造の線形空間になっています。言い換えると,(5.2) を満たす数列を求めることと,(5.5) を満たす関数を求めることは同じことと考えることができます。と書いても,高校生の皆さんには何のことやら分かりません。実際に,同様の式変形で微分方程式 (5.5) を解いてみます。

微分方程式 (5.5) について,漸化式 (5.2) と同様の変形ができることは分かると思います。\[\begin{eqnarray*} y'' - 3y' &=& 2(y' - 3y) \tag{5.6} \\[4px] y'' - 2y' &=& 3(y' - 2y) \tag{5.7} \end{eqnarray*}\](5.6) からは,\(y' - 3y = 0\) でないとき\[\begin{eqnarray*} && \frac{y'' - 3y'}{y' - 3y} = 2 \\ \mbox{∴}\quad && \int\frac{(y' - y)'}{y' - y}\,dx = \int 2\,dx \\ && \log|y' - 3y| = 2x + C \\ && |y' - 3y| = e^C\cdot e^{2x} \\ && y' - 3y = \pm e^C\cdot e^{2x} \\ && y' - 3y = C_1 e^{2x} \tag{5.8} \\ && \scriptsize{(C_1 = \pm e^{C}\ \mbox{としました})} \end{eqnarray*}\]また,\(y' - 3y = 0\) も (5.6) を満たしますが (5.8) に含まれまれるので,(5.6) からは\[y' - 3y = C_1 e^{2x} \tag{5.8*}\]が得られました。

同様に考えると (5.7) からは\[y' - 2y = C_2 e^{3x} \tag{5.9}\]が得られます。数列の場合と同じように \((5.9) - (5.8^*)\) を計算すると\[y = C_2 e^{3x} - C_1 e^{2x}\]となります。これが (5.5) の一般解です。

定数係数の線形2階斉微分方程式 \(y'' + ay' + by = 0\) に対して,方程式 \(\lambda^2 + a\lambda + b = 0\) を特性方程式,その解を特性解と呼ぶことは数列の漸化式と同じです。あくまでも特性方程式が相異なる2つの実数解をもつ場合に限られますが,特性方程式を利用して線形2回斉次微分方程式を解けるようになりました。そして,その一般解が2個の積分定数(任意定数)を含むことも分かりました。

線形2階斉次微分方程式の解

次に考えるべきことは,解法の定型化です。微分方程式を学ぶ多くの人にとっての関心事は,微分方程式がどう解けるかではなく,その解を使って何かを解決しようということです。ですから,できるだけ効率良く解を求めたい・・・と考えるのが当然です。ここまでの議論で,おおよその見当はついていると思います。微分方程式\[y'' + ay' + by = 0 \tag{5.1}\]の特性方程式 \(\lambda^2 + a\lambda + b = 0\) が相異なる実数解 \(\alpha\)\(\beta\) をもてば,(5.1) の一般解は\[y = C_1 e^{\alpha x} + C_2 e^{\beta x}\]となって・・・いそうですね。そのことを示しましょう。

\(\lambda^2 + a\lambda + b = 0\) の解が \(\alpha\)\(\beta\) であれば,2次方程式の解と係数の関係から\[a = -(\alpha + \beta)\qquad b = \alpha\beta\]が成り立ちます。したがって,微分方程式 (5.1) は\[y'' - (\alpha + \beta)y' + \alpha\beta y = 0\]となるので,次の2通りに変形できます。\[\begin{eqnarray*} y'' - \beta y' &=& \alpha(y' - \beta y) \\[4px] y'' - \alpha y' &=& \beta(y' - \alpha y) \end{eqnarray*}\]まず,\(\alpha \ne 0\)\(\beta \ne 0\) の場合を考えます。これまでの計算と同様にして\[\begin{eqnarray*} y' - \beta y &=& C_1 e^{\alpha x} \tag{5.10} \\[4px] y' - \alpha y &=& C_2 e^{\beta x} \tag{5.11}\end{eqnarray*}\]となります。\((5.10) - (5.11)\) より\[\begin{eqnarray*} && (\alpha - \beta)y = C_1 e^{\alpha x} - C_2 e^{\beta x} \\[4px] && y = \frac{C_1}{\alpha - \beta}\cdot e^{\alpha x} - \frac{C_2}{\alpha - \beta}\cdot e^{\beta x}\quad\scriptsize{(\mbox{∵}\quad\alpha \ne \beta)} \end{eqnarray*}\]ここで,改めて \(\displaystyle \frac{C_1}{\alpha - \beta}\)\(C_1\)\(\displaystyle -\frac{C_2}{\alpha - \beta}\)\(C_2\) とそれぞれ書けば\[y = C_1 e^{\alpha x} + C_2 e^{\beta x} \tag{5.12}\]となります。

次に,特性解の一方が \(0\) となる場合です。\(\beta = 0\) としましょう。\[y'' - \alpha y' = 0\]という方程式になるので,この式の両辺を \(x\) で積分します。すると\[y' - \alpha y = C\]となります。これは,積分因子を使っても,\(\displaystyle u = y + \frac{C}{\alpha}\) の置換でも解けますが,積分因子を使う手順の方が短そうです。両辺に \(e^{-\alpha x}\) を掛けましょう。\[\begin{eqnarray*} && e^{-\alpha x}y' - \alpha e^{-\alpha x}y = Ce^{-\alpha x} \\[4px] && (e^{-\alpha x}y)' = C e^{-\alpha x} \\[4px] \mbox{∴}\quad && e^{-\alpha x} y \begin{array}[t]{l} \displaystyle = \int Ce^{-\alpha x} \,dx \\ \displaystyle = -\frac{C}{\alpha} e^{-\alpha x} + C_1 \end{array} \\ \mbox{∴}\quad && y = -\frac{C}{\alpha} + C_1 e^{\alpha x} \end{eqnarray*}\]ここで,\(\displaystyle -\frac{C}{\alpha}\)\(C_2\) と書けば\[y = C_1 e^{\alpha x} + C_2\]となって,この解は (5.12) において \(\beta = 0\) とした式に他なりません。以上から次のことが示されました。

線形2階微分方程式 \(y'' + ay' + by = 0 \ \cdots\ (5.1)\) について,特性方程式 \(\lambda^2 + a\lambda + b = 0\) が相異なる2つの実数解 \(\alpha\)\(\beta\) をもつならば,(5.1) の一般解は次のようになります。\[y = C_1 e^{\alpha x} + C_2 e^{\beta x}\]

問題演習

課題5-1 次の微分方程式を解きましょう。解答 隠す

  1. \(\displaystyle y'' - 3y' + 2y = 0\)
  2. \(\displaystyle y'' + y' - 6y = 0\)
  3. \(\displaystyle y'' + y' = 0\)
  4. \(\displaystyle y'' - 5y = 0\)
  5. \(\displaystyle y'' - 2y' - y = 0\)

次回は,特性方程式が重解をもつ場合を扱います。

Last modified: Monday, 2 August 2021, 4:58 PM