本日のお題

線形2階斉次微分方程式 \(y'' + ay' + by = 0\) について,特性方程式が重解をもつ場合は,特性解を \(\alpha\) として一般解が\[y = C_1 xe^{\alpha x} + C_2 e^{\alpha x}\]となることを理解します。

前回,線形2階斉次微分方程式について,特性方程式が相異なる2つの実数解をもつ場合の解法を説明しました。本時は,その続編として,特性方程式が重解を持つ場合の一般解を求めます。

それでは,まず,具体的な例題として次の微分方程式を考えましょう。\[y'' - 2y' + y = 0 \tag{6.1}\]特性方程式 \(\lambda^2 - 2\lambda + 1 = 0\) の解(特性解)は \(\lambda = 1\) の1つです。\(\alpha = \beta = 1\) の場合と考えて\[y'' - y' = y' - y\]という変形が1通りだけできます。この式を使うと \(y' - y = 0\) ではないとき\[\begin{eqnarray*} && \frac{y'' - y'}{y' - y} = 1 \\[4px] \mbox{∴}\quad && \int\frac{(y' - y)'}{y' - y}\,dx = \int dx \\[4px] && \log|\,y' - y\,| = x + C \\[4px] && |\,y' - y\,| = e^C\cdot e^x \\[4px] && y' - y = \pm e^C\cdot e^x \end{eqnarray*}\]ここで,\(\pm e^C\) を改めて \(C_1\) と書けば\[y' - y = C_1 e^x \tag{6.2}\]となります。\(y' - y = 0\) を満たせば (6.1) の解になりますが,これは (6.2) に含まれます。したがって,(6.1) の解は (6.2) を満たす \(y\) であると言えます。

式は1つしかありませんが,積分因子を使えば,(6.2) を満たす \(y\) を求められます。

\(\displaystyle \int(-1)\,dx = -x\) ですから積分因子は \(e^{-x}\) です。(6.2) の両辺に \(e^{-x}\) を掛けて,この方程式を解きましょう。\[\begin{eqnarray*} && e^{-x}y' - e^{-x}y = C_1 \\[4px] && \left(e^{-x}y\right)' = C_1 \\[4px] \mbox{∴}\quad && e^{-x} y \begin{array}[t]{l} \displaystyle = \int C_1 \,dx \\[4px] \displaystyle = C_1 x + C_2 \end{array} \\[4px] \mbox{∴}\quad && y = C_1 xe^x + C_2 e^x \end{eqnarray*}\]

どうやら解けたようです。以上のことから,特性解が重解である場合には,次の2段階の解法により解けるのではないかという予測が立ちました。

  1. まず,特性解を用いた変形により,任意定数1つを含む線形1階微分方程式を求めます。
  2. 1. で得られた線形1階微分方程式から,積分因子を用いて解を導きます。

一般解の定型化

定型化しましょう。特性方程式が重解 \(\lambda = \alpha\) をもつ場合\[y'' - 2\alpha y' + \alpha^2 y = 0 \tag{6.3}\]という形をしています。この方程式は,次のように変形することができます。\[y'' - \alpha y' = \alpha(y' - \alpha y)\]したがって,\(y' - \alpha y = 0\) ではないとき\[\begin{eqnarray*} && \int\frac{y'' - \alpha y'}{y' - \alpha y}\,dx = \int\alpha\,dx \\[4px] && \log|\,y' - \alpha y\,| = \alpha x + C \\[4px] && y' - \alpha y = \pm e^C\cdot e^{\alpha x} \end{eqnarray*}\]ここで,\(\pm e^{C}\) を改めて \(C_1\) と書けば\[y' - \alpha y = C_1 e^{\alpha x} \tag{6.4}\]となります。また,\(y' - \alpha y = 0\) を満たす \(y\) は明らかに (6.3) の解になりますが,これは (6.4) に含まれます。したがって,(6.3) と (6.4) は同値な方程式と考えられます。積分因子を使って (6.4) を更に変形します。\[\begin{eqnarray*} && e^{-\alpha x}y' - \alpha e^{-\alpha x}y = C_1 \\[4px] && (e^{-\alpha x}y)' = C \\[4px] \mbox{∴}\quad && e^{-\alpha x}y \begin{array}[t]{l} \displaystyle = \int C_1\,dx \\[4px] \displaystyle = C_1 x + C_2 \end{array} \\[4px] \mbox{∴}\quad && y = C_1 xe^{\alpha x} + C_2 e^{\alpha x} \end{eqnarray*}\]

目論見どおりに,解を求めることができました。以上から次のことが言えます。

線形2階斉次微分方程式 \(y'' + ay' + by = 0 \ \cdots\ (♪)\) について,特性方程式が重解 \(\lambda = \alpha\) をもつとき,(♪)の一般解は次のようになります。\[y = C_1 xe^{\alpha x} + C_2 e^{\alpha x}\]

課題6-1 次の微分方程式を解きましょう。解答 隠す

  1. \(y'' - 4y' + 4y = 0\)
  2. \(y'' + 6y' + 9y = 0\)
  3. \(y'' - 2\sqrt{2}y' + 2y = 0\)
  4. \(4y'' + 12y'' + 9y = 0\)
  5. \(2y'' - 2\sqrt{6}y' + 3y= 0\)

線形2階斉次微分方程式の解

前回と今回のここまでの議論を整理しておきたいと思います。

線形2階斉次微分方程式\[y'' + ay' + by = 0\]の解法について学んでいます。高校の数学の内容が使える場合は,できる限りその範囲内で考えよう・・・というコンセプトで進めています。ある意味,非効率な部分が多々あると思います。でも分かりやすく,というところです。そして,分かってきたことは

微分方程式 \(y'' + ay' + by = 0\) の解

2つの関数 \(\phi(x)\)\(\psi(x)\) を使って\[y = C_1 \phi(x) + C_2 \psi(x) \tag{6.5}\]と表されます。2つの関数 \(\phi(x)\)\(\psi(x)\) を決定するのは特性方程式\[\lambda^2 + a\lambda + b = 0 \tag{6.6}\]であり,次のようになっています。

  1. (6.6) が相異なる2つの実数解 \(\lambda = \alpha\ ,\ \beta\) をもつとき
  2. \(\phi(x) = e^{\alpha x}\ ,\quad \psi(x) = e^{\beta x}\)

  3. (6.6) が重解 \(\lambda = \alpha\) をもつとき
  4. \(\phi(x) = xe^{\alpha x}\ ,\quad \psi(x) = e^{\alpha x}\)

さて,これで残りは特性方程式が虚数解をもつ場合になりました。単振動の運動方程式は\[\begin{eqnarray*} && m \frac{d^2x}{dt^2} = -kx\quad(k > 0) \\[4px] && \frac{d^2x}{dt^2} + \frac{k}{m} = 0\end{eqnarray*}\]でしたから,特性方程式は正に虚数解をもちます。単振動から予想するに,特性方程式が虚数解をもつ場合の (6.5) の一般解は三角関数が絡んできそうですが・・・,さてどうなりますでしょうか?

ただし,虚数解の場合の解を考えるためには オイラーの公式 なるものを知る必要があるので,次回はオイラーの公式の説明になります。特性解が虚数解になる場合の解法はオイラーの公式の説明の次です。

Last modified: Monday, 2 August 2021, 4:59 PM