本日のお題

線形2階斉次微分方程式 \(y'' + ay' + by = 0\) について,特性解が虚数 \(\alpha \pm i\beta\) になるとき,その一般解が \(y = C_1 e^{\alpha x}\sin\beta x + C_2 e^{\alpha x}\cos\beta x\) となることを理解します。

線形2階斉次微分方程式の最終回です。特性方程式の解が虚数になる場合を考えます。

特性解が虚数の場合の一般解

前回,オイラーの公式\[e^{ix} = \cos x + i\sin x\]を学びましたから,次に分かっていなければならないことは \(e^{ix}\) の導関数,不定積分がどのようになるかです。これについては,証明なしで使わせていただきます。 \[(e^{ix})' = ie^{ix}\ ,\quad \int e^{ix}\,dx = \frac{1}{i}e^{ix} + C\] \(i\) についても実数の定数と同様に扱うことできるということです。すると,第5回で行った,特性方程式が相異なる2つの実数解をもつ場合の議論が,そのまま使えることになります。つまり,一般解は \[y = C_1 e^{(\alpha + i\beta)x} + C_2 e^{(\alpha - i\beta)x}\] です。ただし,この解は,\(i\) を含んでいますが実数でなければなりません。このままの形では実際に微分方程式を解くときに扱いにくいので,\(i\) を含まない形に変形していきます。 \[\begin{eqnarray*} y &=& C_1 e^{(\alpha + i\beta)x} + C_2 e^{(\alpha - i\beta)x} \\[4px] &=& e^{\alpha x}\left(C_1 e^{i\beta x} + C_2 e^{-i\beta x}\right) \\[4px] &=& e^{\alpha x}\left\{C_1\left(\cos\beta x + i\sin\beta x\right) + C_2\left(\cos(-\beta x) + i\sin(-\beta x)\right)\right\} \\[4px] &=& e^{\alpha x}\left\{\left(C_1 + C_2\right)\cos\beta x + i\left(C_1 - C_2\right)\sin\beta x\right\} \end{eqnarray*}\] よって,\(C_1\)\(C_2\) を共役複素数にとれば実数になります。実際 \[C_1 = c_1 + iC_2\ ,\quad C_2 = c_1 - ic_2\] として \[y = e^{\alpha x}\left(2c_1\cos\beta x - 2c_2\sin\beta x\right)\] が得られます。ここで,\(-2c_2\)\(2c_1\) を改めて \(C_1\)\(C_2\) と書けば \[\begin{eqnarray*} y &=& e^{\alpha x}\left(C_1\sin\beta x + C_2\cos\beta x\right) \\[4px] &=& C_1 e^{\alpha x}\sin\beta x + C_2 e^{\alpha x}\cos\beta x \end{eqnarray*}\]

課題8-1 次の微分方程式を解きましょう。解答 隠す

  1. \(y'' + y = 0\)
  2. \(y'' - 2y' + 2y = 0\)
  3. \(y'' + y' + y = 0\)

線形2階斉次微分方程式のまとめ

これで,すべての線形2階斉次微分方程式を解けるようになりました。まとめておきましょう。

微分方程式 \(y'' + ay' + by = 0\) の解

2つの関数 \(\phi(x)\)\(\psi(x)\) を使って\[y = C_1 \phi(x) + C_2 \psi(x)\]と表されます。2つの関数 \(\phi(x)\)\(\psi(x)\) を決定するのは特性方程式\[\lambda^2 + a\lambda + b = 0 \tag{♪}\]であり,次のようになっています。

  1. (♪) が相異なる2つの実数解 \(\lambda = \alpha\ ,\ \beta\) をもつとき
  2. \(\phi(x) = e^{\alpha x}\ ,\quad \psi(x) = e^{\beta x}\)

  3. (♪) が重解 \(\lambda = \alpha\) をもつとき
  4. \(\phi(x) = xe^{\alpha x}\ ,\quad \psi(x) = e^{\alpha x}\)

  5. (♪) が虚数解 \(\lambda = \alpha \pm i\beta\) をもつとき
  6. \(\phi(x) = e^{\alpha x}\sin\beta x\ ,\quad \psi(x) = e^{\alpha x}\cos\beta x\)

単振動の運動方程式

折角ですから,単振動の運動方程式を解いておきましょう。単振動を特徴づける式は,運動する質量 \(m\) の物体の受ける力 \(F\) が,物体の位置を \(x\) としたとき\[F = - kx\quad(k > 0)\]で表されるというものです。したがって,\(x\) を時間 \(t\) の関数として \[\begin{eqnarray*} && mx'' = -kx \\ ∴\quad && x'' + \frac{k}{m} x = 0 \end{eqnarray*}\] 特性方程式は \(\displaystyle \lambda^2 + \frac{k}{m} = 0\) であり,その解は \(\displaystyle \lambda = \pm\sqrt{\frac{k}{m}}\) です。したがって,一般解は \[x = C_1\sin\sqrt{\frac{k}{m}}x + C_2\cos\sqrt{\frac{k}{m}}x\] 物理では,通常,この式を合成して \(\sin\) または \(\cos\) に式にします。\(\sin\) の合成をしましょう。 \[\begin{eqnarray*} &x = \sqrt{C_1\!^2 + C_2\!^2}\,\sin\left(\sqrt{\frac{k}{m}}x + \theta\right)& \\ &\cos\theta = \frac{C_1}{\sqrt{C_1\!^2 + C_2\!^2}}\ ,\ \sin\theta = \frac{C_2}{\sqrt{C_1\!^2 + C_2\!^2}}&\end{eqnarray*}\] 振幅と位相は初期条件により決まります。周期が \(\displaystyle 2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}\) であることも分かります。自分自身,高校で物理を勉強しているときに,分子と分母が入れ替わってしまうことがありました。線形2階微分方程式の解き方が分かっていれば,そのような間違いは減るのではないでしょうか。

最後に蛇足です。課題8-1の 1. は単振動の式です。それでは,2. は? \[y'' = -y - y'\]とすると,単振動に \(-y'\) が加わっています。つまり,物体に,原点方向に位置に比例した力が働き,さらに同じく原点方向に速度に比例した力が働くということです。その運動は,解答を見れば分かるように,振れ幅が減少していく振動になります。これを減衰振動と呼びます。

次回から非斉次の線形2階微分方程式を扱います。難易度はぐっと上がりますが,頑張りましょう。

Last modified: Monday, 2 August 2021, 5:01 PM