本日のお題

微分演算子の積について,交換法則が成り立つと共に展開や因数分解の計算を施すことができる。また,逆演算子について,部分分数分解を施すことができる。これらの事項が成り立つことを確認します。

前回の続きです。前回は,微分演算子とその逆演算子の意味を知りました。そして,逆演算子 \(\displaystyle \frac{1}{D - \alpha}\) に関する重要な公式を導いた上で,その使い方の例を示しました。その過程で, \[\begin{eqnarray*} && (D - \alpha)(D - \beta) = D^2 - (\alpha + \beta)D + \alpha\beta \tag{12.1}\\[4px] && \frac{1}{(D - \alpha)(D - \beta)} = \frac{1}{\alpha - \beta} \left(\frac{1}{D - \alpha} - \frac{1}{D - \beta}\right) \tag{12.2}\end{eqnarray*}\] が成り立つか? という疑問が湧いてきました。\((12.1)\) は演算子の展開・因数分解ができるか?,\((12.2)\) は逆演算子の部分分数分解ができるか? という問題です。今日は,これらが成り立つことを確認したいと思います。

微分演算子の積

\((12.1)\) に併せて,\((D - \alpha)(D -\beta) = (D - \beta)(D - \alpha)\) が成り立つか? という問題もあります。高等学校の数学で現れる殆どの演算が可換(演算順の交換可能)であるために,ピンとこないかも知れません。ところが,これも当たり前のことではないのです。 \[\begin{eqnarray*} && (D - \alpha)(D - \beta)[y] \\[4px] &=& (D - \alpha)\left(\frac{dy}{dx} - \beta[y]\right) \\[4px] &=& D\left[\frac{dy}{dx}\right] + D[-\beta y] - \alpha\frac{dy}{dx} + \alpha\beta[y] \\[4px] &=& \frac{d^2y}{dt^2} - \beta D[y] - \alpha D[y] + \alpha\beta[y] \\[4px] &=& D^2[y] -(\beta + \alpha)D[y] + \alpha\beta[y] \\[4px] &=& \left\{D^2 - (\alpha + \beta)D + \alpha\beta\right\}[y] \end{eqnarray*}\] 一方 \[\begin{eqnarray*} && (D - \beta)(D - \alpha)[y] \\[4px] &=& (D - \beta)\left(\frac{dy}{dx} - \alpha[y]\right) \\[4px] &=& D\left[\frac{dy}{dx}\right] + D[-\alpha y] - \beta\frac{dy}{dx} + \beta\alpha[y] \\[4px] &=& \frac{d^2y}{dt^2} - \alpha D[y] - \beta D[y] + \beta\alpha[y] \\[4px] &=& D^2[y] -(\alpha + \beta)D[y] + \alpha\beta[y] \\[4px] &=& \left\{D^2 - (\alpha + \beta)D + \alpha\beta\right\}[y] \end{eqnarray*}\] したがって, \[\begin{eqnarray*} D^2 - (\alpha + \beta)D + \alpha\beta &=& (D - \alpha)(D - \beta) \\[4px] &=& (D - \beta)(D - \alpha) \end{eqnarray*}\tag{12.3}\] の成り立つことが分かりました。

逆演算子の部分分数分解

次に \((12.2)\) を示しましょう。 \[\begin{eqnarray*} &\left\{D^2 - (\alpha + \beta)D + \alpha \beta\right\}[y] = f(x)& \\[4px] &y'' - (\alpha + \beta)y' + \alpha\beta y = f(x)& \tag{12.4}\end{eqnarray*}\] 定数変化法を用いて,微分方程式 \((12.4)\) の特殊解を求めます。基本解は \(\phi(x) = e^{\alpha x}\)\(\psi(x) = e^{\beta x}\) ですから, \[\begin{eqnarray*} && \phi(x)\psi'(x) - \phi'(x)\psi(x) \\[4px] &=& e^{\alpha x}\cdot \beta e^{\beta} - \alpha e^{\alpha x}\cdot e^{\beta x} \\[4px] &=& (\beta - \alpha)e^{(\alpha + \beta)x} \end{eqnarray*}\] となって,特殊解を \(v(x) = A(x)e^{\alpha x} + B(x)e^{\beta x}\) とすれば \[\begin{eqnarray*} A'(x) &=& -\frac{e^{\beta x}f(x)}{(\beta - \alpha)e^{(\alpha + \beta)x}} = \frac{1}{\alpha - \beta} e^{-\alpha x}f(x) \\[4px] B'(x) &=& \frac{e^{\alpha x}f(x)}{(\beta - \alpha)e^{(\alpha + \beta)x}} = -\frac{1}{\alpha - \beta} e^{-\beta x}f(x) \end{eqnarray*}\] したがって,特殊解は \[\begin{eqnarray*} v(x) &=& \frac{1}{\alpha - \beta}\left(e^{\alpha x}\int e^{-\alpha x}f(x)\,dx - e^{\beta x}\int e^{-\beta x}f(x)\,dx\right) \\[4px] &=& \frac{1}{\alpha - \beta}\left(\frac{1}{D - \alpha}[f(x)] - \frac{1}{D - \beta}[f(x)]\right) \\[4px] &=& \frac{1}{\alpha - \beta}\left(\frac{1}{D - \alpha} - \frac{1}{D - \beta}\right)[f(x)] \end{eqnarray*}\] \((12.3)\) も合わせて,以上から \[\frac{1}{(D - \alpha)(D - \beta)} = \frac{1}{\alpha - \beta }\left(\frac{1}{D - \alpha} - \frac{1}{D - \beta}\right)\]の成り立つことが分かりました。

実際にどのように使うのか?

前回示した使い方の例をもう一度見ます。 \[y'' - 5y' + 6y = e^{2x}\] の特殊解を,微分演算子を用いて求めるという問いでした。 \[\begin{eqnarray*} y &=& \frac{1}{(D -2 )(D - 3)}[e^{2x}] \\[4px] &=& \left(\frac{1}{D - 3} - \frac{1}{D - 2}\right)[e^{2x}] \\[4px] &=& \frac{1}{D - 3}[e^{2x}] - \frac{1}{D - 2}[e^{2x}] \\[4px] &=& -e^{2x} - xe^{2x} \end{eqnarray*}\] として特殊解が求められることが保証されました。

これは,次に部分分数分解を用いずに,次のようにすることもできます。 \[\begin{eqnarray*} y &=& \frac{1}{(D - 2)(D - 3)}[e^{2x}] \\[4px] &=& \frac{1}{D - 2}\cdot\frac{1}{D - 3}[e^{2x}] \\[4px] &=& \frac{1}{D - 2}[-e^{2x}] \\[4px] &=& -xe^{2x} \end{eqnarray*}\]

微分演算子・逆演算子について

  1. 微分演算子の積について交換法則が成り立ち,式の展開及び因数分解が可能である。
  2. 逆微分演算子は部分分数分解することができる。
  3. また,\(\gamma \ne \alpha\)\(\gamma \ne \beta\) である \(\gamma\) について
  4. \[\frac{1}{(D - \alpha)(D - \beta)}[e^{\gamma x}] = \frac{1}{(\gamma - \alpha)(\gamma - \beta)}\,e^{\gamma x}\]

3. については,示してありませんが,容易に分かることだと思います。

実際に,微分演算子を使って微分方程式を解いてみたいという思いが膨らんできたかもしれませんが,まだ,使いたい道具が揃っていません。はやる心を抑えて,本日はここまでといたします。

最終更新日時: 2021年 08月 2日(月曜日) 17:09