現在,私がお世話になっている学校では,2年生の前期に「微分方程式」「フーリエ解析・ラプラス変換」「ベクトル解析」などの数学関連の講座が開講されます。二日ほど前に前期定期試験が終了いたしまして,試験前には,フーリエ解析やベクトル解析に関する質問を幾つか頂戴しました。年に一度のことゆえ,錆びついた頭からは明瞭な解答がスラスラと出てきません。どうしてもタドタドしい解説になってしまいます。

 まぁ,学生の皆さんにしても立て板に水のような説明ばかりでは言葉だけが頭の中を通り過ぎてしまうので,タドタドしい解説が悪いという訳ではありませんが・・・。とは言うものの,分かりやすい解説は心掛けなければなりません。

 今回の質問の内容などが頭に辛うじて残っている間に,説明すべき内容を私の備忘録として書き残しておこうと考えました。対象の学生の皆さんは工学系の勉強をしている方々ですから,例によって厳密さは気にせず,理解のしやすさと使えるということを念頭にまとめていきます。

実フーリエ級数

 フーリエ級数には 実フーリエ級数複素フーリエ級数 があります。二つは本質的には同じものなのですが,表現の仕方が異なります。このうち,実フーリエ級数は,周期をもつ関数を \(\cos\)\(\sin\) の級数で表すというものです。具体的には次のことが成り立ちます。

実フーリエ級数

 関数 \(f(x)\) が周期 \(T\) の周期関数である,すなわち,任意の \(x\) について \(f(x + T) = f(x)\) が成り立つとき,\(f(x)\) は次のような級数に展開することができます。\[\begin{array}{l} \displaystyle f(x) = \frac{a_0}{2} + \sum_{k = 1}^{\infty}\left(a_k\cos\frac{2\pi k}{T}\,x + b_k\sin\frac{2\pi k}{T}x\right) \\ \left\{\begin{array}{l} \displaystyle a_k = \frac{2}{T}\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}f(x)\cos\frac{2\pi k}{T}x\,dx \quad (\ k = 0,\ 1,\ 2,\ \cdots\ )\\ \displaystyle b_k = \frac{2}{T}\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}f(x)\sin\frac{2\pi k}{T}x\,dx \quad (\ k = 1,\ 2,\ 3,\ \cdots\ ) \end{array} \right. \end{array}\]

と言われても,何のことやらサッパリ分かりませんね。そこで,例として,周期が \(2\pi\) で次のように定義された関数のフーリエ級数を見てみたいと思います。\[f(x) = \left\{\begin{array}{ll} \ 0 & (-\pi \leqq x < 0) \\ \ 1 & (\hspace{0.4em} 0 \leqq x < \pi\hspace{0.4em})\end{array}\right.\] グラフを描くと下図のようになります。いわゆる矩形波です。

\(x\)

\(y\)

 積分の計算は次回に回して,ここでは Wolfram Alpha の力を借りましょう。

 計算結果を見ると\[\displaystyle f(x) \begin{array}[t]{l} \displaystyle = \frac{1}{2} + \frac{2}{\pi}\left(\frac{\sin x}{1} + \frac{\sin 3x}{3} + \frac{\sin 5x}{5} + \cdots\ \right) \\ \displaystyle = \frac{1}{2} + \frac{2}{\pi}\sum_{k = 1}^{\infty}\frac{\sin(2k - 1)x}{2k - 1} \end{array}\]となりそうです。上の Wolfram Alpha の画面は,\(k = 5\) までの和を求めています。そのグラフは,ギザギザはしていますが,上の \(f(x)\) のグラフに近いものになっています。

 更に項数を増やすとどのようになるでしょうか?下のグラフで確かめましょう。今,関数 \(f(x)\) のグラフだけが表示されています。グラフの下のスライダーを右に動かすと,フーリエ級数の項数を増やしながらグラフを描きます。

\(x\)

\(y\)

 関数 \(f(x)\) のグラフに近づいていく様子が見てとれます。しかも,フーリエ級数はとても優秀な級数で,私たちが普段使うような関数であれば,そのフーリエ級数は基本的に収束します。

複素フーリエ級数

 複素フーリエ級数はオイラーの公式 \(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\) を使って,実フーリエ級数を複素数の形に書き換えたものです。実フーリエ級数と比べるとシンプルに表すことができます。

複素フーリエ級数

周期 \(T\) の関数 \(f(x)\) は,次のように級数展開ができます。\[\begin{array}{l} \displaystyle f(x) = \sum_{k = -\infty}^{\infty}c_k\,e^{i\frac{2\pi k}{T}x} \\ \displaystyle c_k = \frac{1}{T}\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}f(x)\,e^{-i\frac{2\pi k}{T}x}\,dx\quad(k = 0,\ \pm 1,\ \pm2,\ \cdots\ ) \end{array}\]

 第1回は,軽く 実フーリエ級数 と 複素フーリエ級数 について,どのようなものであるかを確認しました。次回は,実フーリエ級数がどうして成り立つか?を証明します。

 また,明日から1週間,学校全体がお休みです。終日,家でゴロゴロと過ごします。記事を少々書き溜めることができるとよろしいのですが・・・

Last modified: Friday, 5 March 2021, 5:46 AM