ここまで,フーリエ級数は収束するものであるという,ある意味,前提の下で議論を進めてきました。実際,グラフを描けば,収束しそうな様子を見ることもできました。工学系を学ぶ皆さんで,フーリエ級数展開やフーリエ変換は道具として使えれば良いと考えるのであるならば,難しく考えることはせずそれで宜しいのかも知れません。ところが,数学を学んできたものの端くれとしては,一応,フーリエ級数が収束することを示さねばならないだろうと考えてしまいます。
したがいまして,ここからの暫く,興味のない方は読み飛ばしてください。

フーリエ級数が元の関数に収束する \(-\!\!\!-\!\!\!-\) これを フーリエの定理 といいます。
ただし,フーリエの定理 を証明するためには,準備が必要です。今回は,証明のための準備である リーマン・ルベーグのレンマ を扱います。

リーマン・ルベーグのレンマ

関数 \(f(x)\)\(a \leqq x \leqq b\) で区分的に連続な関数であるとき,次が成り立つ。\[\left\{\begin{array}{l} \displaystyle \lim_{\omega \to \infty}\int_a^b f(x)\,\sin\omega x\,dx = 0 \\[2px] \displaystyle \lim_{\omega \to \infty}\int_a^b f(x)\,\cos\omega x\,dx = 0 \end{array}\right.\]

上のレンマに 区分的に連続な関数 という言葉が出てきました。まずは,これについて,愛用の 数学辞典(朝倉書店)の説明を書いておきます。

区分的連続関数

\(\mbox{R}\) 上で定義された関数に対して \(\mbox{R}\) を有限個の部分集合に分割し,各部分集合の内部で関数が連続で,任意の方向から境界点に近づく内点の列に対して,関数が有限の極限値をもつようにできるとき,その関数は \(\mbox{R}\) 上で区分的に連続であるという。

つまり,区分的連続関数とは,ぶつ切れになっていても良いので,不連続的においても有限な値に収束しているということ,更に言い換えれば「不連続的において,無限大に発散してしまうようなことはない」ということです。扱う関数 \(f(x)\) の絶対値 \(\left|\,f(x)\,\right|\) が有界であることを保証するための条件です。

さて,それでは,リーマン・ルベーグのレンマを証明しましょう。上を証明すれば,下は同様に証明することができるので\[\displaystyle \lim_{\omega \to \infty}\int_a^b f(x)\,\sin\omega x\,dx = 0\]のみを証明することにします。

関数 \(f(x)\) は区分的連続ですから,上述したように

\(a \leqq x \leqq b\) において \(\left|\,f(x)\,\right| \leqq M\)

を満たす定数 \(M\) が存在します。

さらに,ここで \(a\leqq x \leqq b\)\(n\) 等分して,分割点を左から順に\[a = x_0,\ x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_k,\ \cdots,\ x_n = b\]と書きます。すると\[\displaystyle \int_a^b f(x)\sin\omega x\,dx = \sum_{k = 0}^{n - 1}\int_{x_k}^{x_{k+1}}f(x)\sin\omega x\,dx\]したがって\[\displaystyle \left|\int_a^b f(x)\sin\omega x\,dx\right| \leqq \sum_{k = 0}^{n ^ 1}\left|\int_{x_k}^{x_{k + 1}}f(x)\sin\omega x\,dx\right|\]が成り立ちます。さて,ここから少々厄介な変形をしていきますよぉ。 \[\begin{eqnarray} && \left|\int_{x_k}^{x_{k + 1}}f(x)\sin\omega x\,dx\right| \\[4px] &=& \left|\int_{x_k}^{x_{k + 1}}\left\{f(x) - f(x_k)\right\}\sin\omega x\,dx + \int_{x_k}^{x_{k + 1}}f(x_k)\sin\omega x\,dx\right| \\[4px] &\leqq& \left|\int_{x_k}^{x_{k + 1}}\left\{f(x) - f(x_k)\right\}\sin\omega x\,dx \right| + \left|\int_{x_k}^{x_{k + 1}}f(x_k)\sin\omega x\,dx\right| \\[4px] &\leqq& \int_{x_k}^{x_{k + 1}}\left|\,f(x) - f(x_k)\,\right|dx + \left|\,f(x_k)\,\right|\cdot\left|\,\int_{x_k}^{x_{k + 1}}\sin\omega x\,dx\,\right| \\[4px] &\leqq& \int_{x_k}^{x_{k + 1}}\left|\,f(x) - f(x_k)\,\right|dx + M\left|\,\frac{1}{\omega}\Big[\,\cos\omega x\Big]_{x_k}^{x_{k + 1}}\,\right| \\[4px] &\leqq& \int_{x_k}^{x_{k + 1}}\left|\,f(x) - f(x_k)\,\right|dx + \frac{2M}{\omega} \end{eqnarray}\]よって \(\displaystyle \left|\,\int_a^b f(x)\,\sin\omega x\,dx\,\right| \leqq \sum_{k = 0}^{n - 1}\left(\int_{x_k}^{x_{k + 1}}\left|\,f(x) - f(x_k)\,\right|dx + \frac{2M}{\omega}\right)\)

\(f(x)\) は区分的連続だから,\(n\) を十分に大きくとれば,閉区間 \(\left[x_k,\ x_{k + 1}\right]\) で連続であるようにできるので\[\forall\epsilon > 0 \quad \exists N > 0 \quad \forall n > N \quad \left|\,f(x) - f(x_k)\,\right| < \epsilon\]が成り立ちます。したがって\[\displaystyle \left|\,\int_a^b f(x)\,\sin\omega x \,dx\,\right| \leqq \epsilon(b - a) + \frac{2Mn}{\omega}\]となって,\(\omega \to \infty\) を考えているので,\(\omega\) が十分に大きいとき \(\displaystyle \frac{2Mn}{\omega} < \epsilon\) であり\[\displaystyle \left|\,\int_a^b f(x)\,\sin\omega x\,dx\,\right| \leqq \epsilon(b - a + 1)\]すなわち \(\displaystyle \lim_{\omega \to \infty}\int_a^b f(x)\,\sin\omega x\,dx = 0\) を示すことができました。

Last modified: Wednesday, 3 March 2021, 12:40 PM