本時の目標

  1. 整式について,割り算の原理を理解する。
  2. 割り算の原理から剰余の定理を導くことができる。
  3. 因数定理を理解する。
  4. 因数定理を用いて,3次及び4次の整式を因数分解することができる。

整式の割り算

例題1 次の計算をしましょう。

\[(2x^3 - 7x^2 + 5x + 5) \div (x - 2)\]

整式同士の割り算です。まずは,筆算で計算する方法を確認しましょう。下のスライドを見ましょう。

課題1 次の計算をしましょう。

\[(2x^3 - 7x^2 + 5x + 5) \div (x + 3)\]

計算の方法が先になってしまいましたが,そもそも「整式を整式で割った商と余りとは一体どのようなものなのか?」を確認しておかなければなりません。次のとおりでした。

割り算の原理

\(x\) の整式 \(A(x)\)\(B(x)\) について,\(A(x)\)\(B(x)\) で割った商が \(Q(x)\) で余りが \(R(x)\) であるとは \[A(x) = B(x)Q(x) + R(x)\]

\(\big(R(x)\) の次数 < \(B(x)\) の次数\(\big)\)

が成り立つことである。

課題2

例題1 及び 課題1 の割り算を,割り算の原理で書き換えましょう。

課題3

\(A(x) = 2x^3 - 7x^2 + 5x + 5\) について,上の 課題2 を参考にして,\(A(2)\)\(A(-3)\) の値を求めましょう。課題2 の結果を用いると,その値が一瞬で分かります。

剰余の定理

課題3 の反対のことを考えます。

\(A(x) = 2x^3 - 7x^2 + 5x + 5\)\(x + 1\) で割ったときの商と余りを,それぞれ \(Q(x)\)\(R\) とおきます。(1次式の \(x + 1\) で割るので,余りは定数です。)すると, \[A(x) = (x + 1)\,q(x) + r\]が成り立ちます。ここで,上の式の両辺に \(x = -1\) を代入すると \[x + 1 = -1 + 1 = 0\] なので,\(A(-1) = R\) です。

∴ \(R \begin{array}[t]{l} = A(-1) \\ = 2\cdot(-1)^3 - 7\cdot(-1)^2 + 5\cdot(-1) + 5 \\ = -9 \end{array}\)

割り算をしなくても,割り算の余りを求めることができました。

課題4

\(x\) の整式 \(A(x) = x^3 - 2x^2 - 5x + 11\) を次の式で割ったときの余りを求めましょう。

  1. \(x -1 \)
  2. \(x + 2\)
  3. \(x - 3\)

以上のことを一般的な表現でまとめると,次のようになります。

剰余の定理

\(x\) の整式 \(A(x)\)\(x - a\) で割ったときの余りは \(A(a)\) である。

因数定理

剰余の定理 から,もし \(A(a) = 0\) となる \(a\) が見つかれば,整式 \(A(x)\)\(x - a\) で割った余りが \(0\),すなわち \(A(x)\)\(x - a\) で割り切れることが分かります。これを 因数定理 と呼びます。

因数定理

\(x\) の整式 \(A(x)\) について

\(A(a) = 0\ \Leftrightarrow\ A(x)\)\(x - a\) を因数にもつ

が成り立つ。

例題2

\(x\) の整式 \(P(x) = x^3 - x^2 - 6x - 4\) について,\(P(a) = 0\) となる \(a\) を見つけ,\(P(x)\)\(x - a\) で割り切れることを確かめましょう。

まずは,\(P(x)\)\(x = 1\) を代入してみましょう。 \[P(1) = 1^3 - 1^2 - 6\cdot 1 - 4 = -10\] \(0\) にはなりませんでした。それでは,次に \(x = -1\) を代入してみましょう。 \[P(-1) = (-1)^3 - (-1)^2 - 6\cdot (-1) - 4 = 0\] ということは,\(P(x)\)\(x - (-1) = x + 1\) で割り切れるはずです。割り算をして,確かめましょう。

\(x^2\) \(-\) \(2x\) \(-\) \(4\)
\(x + 1\) \()\) \(x^3\) \(-\) \(x^2\) \(-\) \(6x\) \(-\) \(4\)
\(x^3\) \(+\) \(x^2\)
\(-\) \(2x^2\) \(-\) \(6x\)
\(-\) \(2x^2\) \(-\) \(2x\)
\(-\) \(4x\) \(-\) \(4\)
\(-\) \(4x\) \(-\) \(4\)
\(0\)

確かに割り切れました。そして,この計算により \[x^3 - x^2 - 6x - 4 = (x + 1)(x^2 - 2x - 4)\] と因数分解できることも分かりました。

GeoGebra で整式の割り算

整式の割り算は,かなり面倒な計算になります。これを GeoGebra を使って計算してしまうことができます。

Division

  • 書式:Division(整式1,整式2)
  • 命令:整式1を整式2で割った商と余りを求める。
  • 例 :division(x2 + 3x + 1, x - 1)
  • 出力:{x - 1, 4}

Div

  • 書式:Div(整式1,整式2)
  • 命令:整式1を整式2で割った商を求める。
  • 例 :division(x2 + 3x + 1, x - 1)
  • 出力:x + 4

Mod

  • 書式:Mod(整式1,整式2)
  • 命令:整式1を整式2で割った余りを求める。
  • 例 :division(x3 + x2 + x + 6, x2 - 3)
  • 出力:x - 1

この3つのコマンドは,整数に対しても使うことができて,割り算の商や余りを求めることができます。Division は計算結果がリスト形式で出力され,Div と Mod は整式で出力されるという違いがあります。スクリプトを書くときには注意が必要になります。

また,余りが 0 になることが分かっているようなときには,Factor で因数分解することも考えられます。

問題演習

課題5 次の式を因数分解しましょう。

  1. \(x^3 - 7x + 6\) 解答 隠す
  2. \(x^3 + x^2 - 5x + 3\) 解答 隠す
  3. \(x^3 - 5x^2 + 2x + 8\) 解答 隠す
  4. \(2x^3 + 3x^2 - 1\) 解答 隠す
  5. \(2x^3 - 3x^2 + 2x - 1\) 解答 隠す
  6. \(12x^3 - 4x^2 - 3x + 1\) 解答 隠す
  7. \(12x^3 + 8x^2 - x - 1\) 解答 隠す
  8. \(x^4 + x^3 - 7x^2 - x + 6\) 解答 隠す
  9. \(6x^4 - x^3 - 7x^2 + x + 1\) 解答 隠す
  10. \(6x^4 - 19x^3 + 17x^2 - x - 3\) 解答 隠す
最終更新日時: 2023年 09月 22日(金曜日) 12:35