2次方程式の解と係数の関係
本日のお題
\(x\) の2次方程式 \begin{equation}x^2 - 2kx + k + 2 = 0\end{equation} について考えるよ
- 相異なる2つの正の解をもつように,定数 \(k\) の値の範囲を定めましょう
- 正の解と負の解を1つずつもつように,定数 \(k\) の値の範囲を定めましょう
前回予告したように,練習問題を解説します! もうネタ切れかい?というツッコミが聞こえてきそうです
まぁ,そう言わず,付き合ってくださいまし m(_ _)m
まず,前回同様にグラフを使いましょう
それでは,\(f(x) = x^2 - 2kx + k + 2\) とおいて,グラフを描いてさらに動かしてみます
\(x\)
\(y\)
\(k = \)
\(k\) の値を増やすと,\(k = 2\) でグラフが \(x\) 軸に接し,\(k\) の値がそれより大きくなる,つまり \(k > 2\) のとき \(x\) 軸と2点で交わるようになります・・・確認をしてください
(2) は \(k\) の値を減らしていくと,途中でグラフが切れてしまいます
確かに \(x\) 軸との左側の交点はアプレット画面から飛び出しているけれど,右側の交点は画面内に残っています
左側の交点が \(x\) 軸の負の部分と交わっていることは間違いないので,右側の交点が原点の右側になるような \(k\) の値を見つければ宜しいわけです
\(k = -2\) でグラフが原点を通るので,求める条件は \(k < -2\) です
あ~! また,これだけで解けてしまいましたねぇ
このページのグラフは Javascript で描いたり動かしたりしていますが,GeoGebra というアプリケーションを使えば同様のことが簡単に実現できます
高校生にはお薦めアプリです・・・PC またはスマホでも OK ですから,入れておくとべんりですよぉ!!
スマホ用の GeoGebra には種類が幾つかありまして,私は,iPad に「関数グラフ」と「数式処理」をインストールしてあります
とにかく,グラフが動くということは,数学を学ぶ上でとても有益です
昔むかし,コンピュータが DOS で動いていた時代に,関数ラボ,Cabri Geometry という素晴らしいアプリケーションがあったのですが,今や知っている人はほとんどいらっしゃらないでしょう
関数ラボは,IBM が開発・販売したもので,グラフを描いたり描いたグラフを動かしたりすることのできるアプリケーション
Cabri Geometry は,フランスのグルノーブル大学で開発されたもので,図形を描いたり描いた図形を動かしたりということができました
私は,GeoGebraを初めて見たとき,関数ラボと Cabri が一緒になったようなアプリだなぁ,とチョ~感激したのを覚えています
ただし,開発者の Markus Hohenwarter 教授(オーストリア・リンツ大学)は,Cabri と Derive をヒントに作成されたそうです
それはそうとして,上の解答は,数学の先生などに見せると・・・
\(k > 2\) で正の2つの解をもつと言うが,\(k\) の値がどこまでも大きくなったときに正の2つの解をもつことを保証していないじゃないか!
などとケチをつけられます
したがって,動くグラフは動くグラフとして,前回見たように「判別式」「\(y\) 切片」「放物線の軸の位置」を用いて解きたいと思ます
(1) 相異なる2つの正の解をもつためには \begin{equation} \left\{\begin{array}{llc} D/4 = k^2 - (k + 2) > 0&\cdots&\mbox{(i)} \\ f(0) = k + 2 > 0&\cdots&\mbox{(ii)} \\ {\small \mbox{ 軸}}: k > 0&\cdots&\mbox{(iii)} \end{array}\right.\end{equation} \begin{equation} \begin{array}{ccl} (\mbox{i}) & \rightarrow & k < -1,\ 2 < k \\ (\mbox{ii}) & \rightarrow & k > -2 \\ (\mbox{iii}) & \rightarrow & k > 0 \end{array}\end{equation} 以上を連立すると \(k > 2\) が得られます
(2) 異符号の解をもつためには \begin{equation} \begin{array}{l} f(0) = k + 2 < 0 \\[4px] ∴\quad k < -2 \end{array}\end{equation}
このように解くのも,慣れてしまえばアッと言う間です
実は,私,高校生のとき,この手の問題(解の分離などといいます)をこのようにグラフを使って解いていました,いつもいつも
しかし,必ずしもグラフを使わなくても解くことができます
さて,前振りが長くましたけれど,ここからが今日の本題です
2次方程式の解と係数の関係を使いましょう
\(x\) の2次方程式\begin{equation}ax^2 + bx + c = 0\end{equation}が \(\alpha\) と \(\beta\) を解にもつとします
\(ax^2 + bx + c = 0\) が \(x = \alpha\) を解にもつ
\(\Longleftrightarrow\quad ax^2 + bx + c\) が \(x - \alpha\) を因数にもつ
が成り立ち,\(\beta\) についても同様のことが成り立つので,次が言えます
\(ax^2 + bx + c = 0\) の解が \(x = \alpha,\ \beta\)
\(\Longleftrightarrow\quad ax^2 + bx + c = a(x - \alpha)(x - \beta)\)
さて,\(ax^2 + bx + c = a(x - \alpha)(x - \beta)\) の右辺を展開すると\begin{equation}ax^2 + bx + c = ax^2 - a(\alpha + \beta)x + a\alpha\beta\end{equation}となり,両辺の係数を比較して\begin{equation}b = -a(\alpha + \beta),\quad c = a\alpha\beta\end{equation}\begin{equation}\mbox{∴}\quad -\frac{b}{a} = \alpha + \beta,\quad\frac{c}{a} = \alpha \beta\end{equation}
これが,2次方程式の解と係数の関係です
2次方程式の解と係数の関係
\begin{equation} \displaystyle \alpha + \beta = - \frac{b}{a},\quad \alpha\beta = \frac{c}{a}\end{equation}
解と係数の関係を使って,本日のお題を解いていきますが・・・
それには,もう一つの道具が必要です
道具というのは・・・
\(\alpha\) と \(\beta\) が実数のとき
\begin{equation}\left\{\begin{array}{l} \alpha > 0 \\ \beta > 0 \end{array}\right.\ \Longleftrightarrow \ \left\{\begin{array}{l} \alpha + \beta > 0 \\ \alpha\beta > 0 \end{array}\right.\end{equation}
\(\Rightarrow\) は明らかです
\(\Leftarrow\) はどうでしょうか?
\(\alpha\beta > 0\) から
\(\alpha > 0,\ \beta > 0\) または \(\alpha < 0,\ \beta < 0\)
\(\alpha + \beta > 0\) より
\(\alpha > 0,\ \beta > 0\)
これで示すことができました
それでは,お題を解きましょう
(1) 相異なる2つの正の解をもつように,定数 \(k\) の値の範囲を求めましょう
まず,相異なる2つの実数解をもたなければならないので
\(\begin{array}{l} D/4 = k^2 - (k + 2) > 0 \\ \mbox{∴}\quad -1 < k < 2\ \cdots\ (\mbox{a}) \end{array}\)
解を \(\alpha\),\(\beta\) とおくと
\(\alpha > 0,\quad \beta > 0\ \Longleftrightarrow\ \alpha + \beta > 0,\quad \alpha\beta > 0\)
2次方程式の解と係数の関係より
\(\alpha + \beta = 2k,\quad \alpha\beta = k + 2\)
したがって
\(2k > 0,\quad k + 2 > 0\quad\cdots\ (\mbox{b})\)
不等式 (a) (b) を連立して \(k > 2\)
(2) にいく前に,グラフを使った解答と比べてみましょう
まず,判別式を考えたところは同じ
次に,グラフの \(y\) 切片の \(k + 2\)・・・おや? これは \(\alpha\beta = k + 2\) と同じです
グラフの軸 \(x = k\) も,係数の 2 はついているものの,\(\alpha + \beta = 2k\) と同じです
そういうことだったのですね ん? 待ってください
(2) は,グラフを使えば \(f(0) = k + 2 < 0\) だけで良かったですね
これは,\(\alpha\beta = k + 2 < 0\) と同じでした
え~? これだけで良いでしょうか? 判別式は? 必要ないのでしょうか???
ちょっと考えてみましょう,判別式は \(b^2 - 4ac\) です・・・そうか! 分かりました!
\(\displaystyle \alpha\beta = \frac{c}{a}\) だから,\(\alpha\beta < 0\) ならば \(a\) と \(c\) が異符号です
だったら,\(ac < 0\) ですね
そうすると,\(b^2 - 4ac > 0\) となって,必ず実数解があるということです
ということで・・・
(2) \(\alpha\beta < 0\) から \(k < -2\) を得ます
これで,ミッション完了です
練習問題
\(x\) の2次方程式 \begin{equation}x^2 - 2kx + k + 2 = 0\end{equation} について考えます
- 相異なる2つの,1より大きい解をもつように,定数 \(k\) の値の範囲を定めましょう
- 1より大きい解と1より小さい解を1つずつもつように,定数 \(k\) の値の範囲を定めましょう