式の計算の基本
本日のお題
式の計算の基本として,簡単な因数分解をやってみましょう
\(\quad\begin{array}{cl} 1& a^3 + a^2c - b^2c - b^3 \\ 2& 3x^2 + 5xy - 2y^2 - x + 5y - 2 \\ 3& (x^2 + 3x + 1)(x^2 - 3x + 1) + 5x^2 \\ 4& x(x + 1)(x + 2)(x + 3) - 8 \end{array}\)
私が入学した高校,酷い学校でして,数学Ⅰの第1章式の計算が入学前の春休みの宿題だったのです・・・教科書と問題集
流石に,剰余の定理と因数定理くらいは入学後の授業で扱ってくれましたが,その他の部分は
「も・ち・ろ・ん,春休みに終わっていますね~」
とか何とか言って,いきなりの問題演習・・・数時間で第1章おわり~ でした(笑)
もっとも,当時の普通高校は,多少の差こそあれ,そのようなものでした
それゆえに,私,式の計算は大嫌い・・・ですし,ショッチュウ計算を間違えてします(全然,理由になっていません 笑)
先日出てきたラグランジュの補間公式,\(n\) 次に拡張すると
と書かれますが,私には何のことやらサッパリ分かりません
1次のとき,2次のとき,3次のとき・・・って書いてみないとチンプンカンプンです
それもこれも,私が通った高校の数学教育に問題があったんだろうと考えています(本当は,ただの責任転嫁
2次関数関係の学習が一段落ついたので,ここからは「式の計算」に取り組もうと思います
順番が違うんじゃない?と突っ込まれそ~ですが・・・教科書の最初から始めると大抵直ぐに飽きてしまいます
英単語を覚えるのに「abandon で諦める」などという有名な言葉が昔ありまして,今や,アルファベット順に覚えようという単語集は存在していません
さっ,それでは因数分解から参りましょう
私の通った高校では,数研出版の「チャート」を副読本として使っておりました
当時のチャートには,式計算の基本は
と書かれていて,お題目のようになっていたと記憶しています
それでは,このお題目をパクッて問題を解いてみましょう
まず整理
1 \(a^3 + a^2c - b^2c - b^3\)
「まず整理」とは,文字が複数あるような場合,1つの文字に着目して整理しようという意味です
この式,全体では3次式です
ところが,個々の文字について次数をみると・・・
\(a\) について 3次式
\(b\) について 3次式
\(c\) について 1次式
ナント! 3次式の計算をするより,1次式の計算をした方が簡単に決まっています
1次式なら,1次式らしい身なりをしてもらいましょう
\(\begin{array}{l} a^3 + a^2c - b^2c - b^3\\ = (a^2 - b^2)c + (a^3 - b^3) \end{array}\)
これで,どこから見ても1次式です
ん? 待てってください! 1次式の因数分解っておかしくありませんか? 1次式と1次式とを掛け算すれば,それだけで2次式になってしまいますよね
そうですね,ここにも「文字何々について考える」の絡繰りがあります
\(c\) の1次式の因数分解ができると言うのであれば,1次の係数と定数項に共通因数がある場合に限られます
して見ると,ありますね~
\(a^2 - b^2 = (a - b)(a + b)\)
\(a^3 - b^3 = (a - b)(a^2 + ab + b^2)\)
共通因数 \(a - b\) がありました
これで,因数分解ができます
\(\begin{array}{l} a^3 + a^2c - b^2c - b^3\\[2px] = (a^2 - b^2)c + (a^3 - b^3)\\[2px] = (a - b)(a + b)c + (a - b)(a^2 + ab + b^2)\\[2px] = (a - b)\{(a + b)c + a^2 + ab + b^2\}\\[2px] = (a - b)(a^2 + b^2 + bc + ca + ab)\end{array}\)
複雑になっても,2次式はたすき掛け
2 \(3x^2 + 5xy - 2y^2 - x + 5y - 2\)
これは \(x\) についても,\(y\) についても2次式ですね
したがって,どちらの文字について考えても OK です
少々余計な話をしても宜しいでしょうか?
私,高校入学前の課題で,この因数分解を
\((\quad x + \quad y + \quad)(\quad x + \quad y + \quad)\)
と書いて,空欄に数字を何度も入れて,試行錯誤的に解きました
私,本を読むことが大嫌い(今もそうです)で教科書の説明や解答は一切無視していました・・・いや~苦労しました
今見れば,空欄に入る数字はかなり限定されますが,当時の私には,そのようなことも分かりませんでした
この苦労は,50年近く経った今でも鮮明に覚えおります
そのわりに,「この式の因数分解には,たすき掛けを使う」はサッパリ覚えませんでした
そうです・・・2次式ですから,たすき掛けを使うのです
\(\begin{array}{l} 3x^2 + 5xy - 2y^2 - x + 5y - 2\\[2px] = 3x^2 + (5y - 1)x -(2y^2 - 5y + 2)\\[2px] = 3x^2 + (5y - 1)x - (2y - 1)(y - 2)\\[2px] = (x + 2y - 1)(3x - y + 2) \end{array}\)

団体扱い
3 \((x^2 + 3x + 1)(x^2 - 3x + 1) + 5x^2\)
これは「団体扱い」の例
\(X = x^2 + 1\) のように置き換えても
\(\{(x^2 + 1) + 3x\}\{(x^2 + 1) - 3x\} + 5x^2\) のようにしても,宜しいですね
要は,\(x^2 + 1\) を団体扱いすることができるかどうかがポイントです
因みに,\(X = x^2 + 1\) と置き換えることを缶詰,( ) で囲むことを瓶詰・・・と教えている中学校の先生がいらしたそうです
私,友だちからその話しを聞きました
私は,意味が分からず,友人に「ナゼ?」と聞き返してしまいました
そうしましたら,件の友だちは「中身が見えないのが缶詰,中身が見えるのが瓶詰」と教えてくれました・・・座布団一枚!!
ここでは瓶詰でいきます・・・瓶詰に慣れることが後々大事になるからです
\(\begin{array}{l} (x^2 + 3x + 1)(x^2 - 3x + 1) + 5x^2\\[2px] = \{(x^2 + 1) - 3x\}\{(x^2 + 1) - 3x\} + 5x^2\\[2px] =(x^2 + 1)^2 - 9x^2 + 5x^2\\[2px] =(x^2 + 1)^2 - 4x^2\\[2px] =\{(x^2 + 1) + 2x\}\{(x^2 + 1) - 2x\}\\[2px] =(x^2 + 2x + 1)(x^2 - 2x + 1)\\[2px] =(x + 1)^2(x - 1)^2 \end{array}\)
相性縁組
4 \(x(x + 1)(x + 2)(x + 3) - 8\)
\(x(x + )1(x + 2)(x + 3)\) を左から順に掛けていくというような計算では,手間がかかって仕方ありません
掛け算の組を工夫すると計算しやすくなる,それが「相性縁組」です
この問いで言えば,\(x(x+3)\) と \((x + 1)(x + 2)\) の組み合わせが宜しいのです
なぜか?は下の解答で
\(\begin{array}{l} x(x + 1)(x + 2)(x + 3) - 8 \\[2px] = \{x(x + 3)\}\{(x + 1)(x + 2)\} - 8 \\[2px] = (x^2 + 3x)(x^2 + 3x + 2) - 8 \\[2px] = (x^2 + 3x)^2 + 2(x^2 + 3x) - 8 \\[2px] = (x^2 + 3x - 2)(x^2 + 3x + 4)\end{array}\)
分かりましたか? \(x^2 + 3x\) という共通の団体が現れましたね
これが「相性縁組」の工夫!!