割り算の原理
本日のお題
次の計算を容易にする手順を考えましょう
- \(x = 1 + \sqrt{2}\) のとき\[2x^4 - x^3 - 4x^2 - 9x - 6\]の値を求めます
- 分数式\[\frac{2x^3 + 3x^2 + x + 1}{x(x + 1)} - \frac{2x^3 + 7x^2 + 7x + 3}{(x + 1)(x + 2)}\]を簡単にします
今日は,割り算の原理というお話しです
小学生のころ,このような問題を解いたと思います
\(42\) をある整数で割ったところ,商が \(5\) で,あまりが \(2\) でした
さて,ある整数とは? いったいいくつでしょう?
このとき,使う考え方は・・・ある数を \(N\) とおいて \[\begin{array}{l} 42 = N \times 5 + 2 \\[4px] \mbox{∴}\quad 5N = 42 - 2 \\[4px] \mbox{∴}\quad N = 8 \end{array}\] 数学的に話をすると・・・整数というのは和と積について閉じていて,それぞれに単位元があって,和については逆元が存在します
とても大雑把でいい加減な話しです
これもまた数学の先生に見つかったら叱られます
ただ,\(x\) の整式についても,同様な性質が成り立つことはお分かりになるでしょう
このような性質をもった集合を環といいまして,上の \(42 = N \times 5 + 2\) のような話しが整式についても成り立ちます
これを割り算の原理といいます!
整数の場合からしっかり書きます
2つの整数 \(a\) と \(b\) があったとき,整数 \(q\) と \(r\) を使って \[a = b \times q + r\quad(0 \leqq r < |b|)\] と一通りに書け,\(q\) と \(r\) をそれぞれ
\(a\) を \(b\) で割ったときの商と余り
といいます
このことを整式の割算にも使いたいのですが,問題は \(0 \leqq r < |b|\) の部分です
この辺りのことは正確に書こうとする難しくなるし,そもそも私には無理~ ToT
だから結論だけ
整式の次数を使って「(余りの式の次数)が(割る式の次数)より低い」とする
ということで,整式バージョンを書くと
2つの整式 \(A(x)\) と \(B(x)\) があったとき,整式 \(Q(x)\) と \(R(x)\) を使って \[\begin{array}{c} A(x) = B(x) \times Q(x) + R(x) \\ \deg R(x) < \deg B(x)\end{array}\] と一通りに書けて,\(Q(x)\) と \(R(x)\) をそれぞれ
\(A(x)\) を \(B(x)\) で割ったときの商と余り
といいます
実際の割り算の方法を,念のために下のアプレットで確認しましょう
FWD を押していくと,この割り算の手順を示してくれます

式の値の計算に割り算を使いましょう
\(x = 1 + \sqrt{2}\) を式に入れてコツコツと計算すれば宜しいのですが・・・4次式ともなると計算が面倒であり,何より私にはミスをしないで計算するということが絶望的 ToT
そこで,一工夫 \(x = 1 + \sqrt{2}\) を変形します \[\begin{array}{l} x = 1 + \sqrt{2}\\x - 1 = \sqrt{2}\\(x - 1)^2 = (\sqrt{2})^2\\x^2 - 2x + 1 = 2\\x^2 - 2x - 1 = 0 \end{array}\] そして,\(2x^4 - x^3 - 4x^2 - 9x - 6\) を \(x^2 - 2x - 1\) で割ります
すると 商が \(2x^2 + 3x + 4\) , 余りが \(2x - 2\) です
したがって \[\begin{array}{l} 2x^4 - x^3 - 4x^2 - 9x - 6\\= (x^2 - 2x - 1)(2x^2 + 3x + 4) + 2x - 2 \end{array}\] 気づきましたか? この式に \(x = 1 + \sqrt{2}\) を代入すると
\(x^2 - 2x - 1 = 0\) となるので余りだけが残ります
∴ 式の値\(\begin{array}[t]{l}=2(1 + \sqrt{2}) - 2\\ = 2\sqrt{2}\end{array}\)
分数式の計算に割り算を使いましょう
\(\displaystyle \frac{2x^3 + 3x^2 + x + 1}{x(x + 1)} - \frac{2x^3 + 7x^2 + 7x + 3}{(x + 1)(x + 2)}\)
この計算問題,そうとう意地悪です
ちょっと見に,そのまま通分したくなる書き方をしています
しかし,そのように考えると作問者の思うつぼです
分数式は,割り算をして分子の次数を分母の次数より下げておくっていうのが鉄則です
分数の計算で言うと,仮分数を帯分数にして計算するということに当たります
数の計算とは反対ですね
まず \[\begin{array}{l} x(x + 1) = x^2 + x \\[2px] (x + 1)(x + 2) = x^2 + 3x + 2 \end{array}\] そして \[\begin{array}{l} (2x^3 + 3x^2 + x + 1) \div (x^2 + x)\\ = 2x + 1\quad\cdots\quad 1\\[4px](2x^3 + 7x^2 + 7x + 3) \div (x^2 + 3x + 2)\\ = 2x +1 \quad\cdots\quad 1 \end{array}\] です
えっ? 何のために割り算をするのか,まだ分からないですって?
なぜかというとですね・・・
\(2x^3 + 3x^2 + x + 1\) を \(x^2 + x\) を割った商と余りがそれぞれ \[2x + 1\ ,\quad 1\] ということは \[\begin{array}{l} \displaystyle\frac{2x^3 + 3x + x + 1}{x^2 + x} \\ = 2x + 1 + \displaystyle\frac{1}{x^2 + x}\end{array}\] となります
そして,このように変形すると,次の計算ができるのです \[\begin{array}[t]{l} \displaystyle \frac{2x^3 + 3x^2 + x + 1}{x(x + 1)} - \frac{2x^3 + 7x^2 + 7x + 3}{(x + 1)(x + 2)} \\[4px] \displaystyle = \left\{2x + 1 + \frac{1}{x(x + 1)}\right\} - \left\{2x + 1 + \frac{1}{(x + 1)(x + 2)}\right\} \\[4px] \displaystyle = \frac{1}{x(x + 1)} - \frac{1}{(x + 1)(x + 2)}\\[4px] \displaystyle = \frac{(x + 2) - x}{x(x + 1)(x + 2)}\\[4px] \displaystyle = \frac{2}{x(x + 1)(x + 2)}\end{array}\] ねっ! 簡単になりましたでしょ? これが分数式の計算の鉄則なのです
今日は,鉄則 という言葉を二度も使ってしまいました
この言葉は,大学時代に卒論の指導をしていただいた 寺田文行 先生 が好んでお使いになっていたものです
今日もまたパクリでした