二重根号
本日のお題
次の数の二重根号を外して簡単にしましょう
- \(\displaystyle\sqrt{5 + 2\displaystyle\sqrt{6}}\)
- \(\displaystyle\sqrt{8 - 2\displaystyle\sqrt{15}}\)
- \(\displaystyle\sqrt{9 - 4\sqrt{5}}\)
- \(\displaystyle\sqrt{3 + \displaystyle\sqrt{5}}\)
- \(\displaystyle\sqrt{42 + 2\displaystyle\sqrt{377}}\)
高校までに学ぶ数学と大学以降に学ぶ数学の違い,かなり大きい・・・と思っています
高校までの数学,取り分け高校数学はパズルだ・・・くらいに私は思っています
何故なら,答えが出るように作られた問題をひたすら解いているからです
作問者が問題を難しくしようとすると,そこに作問者の作為が見えてきて,難問にしたはずなのに不自然さに解答のヒントが見えてきてしまうことがあります
非難するつもるは毛頭ございません
パズルですから,むしろ,とても面白く感じます
学問というより,ゲーム的要素が魅力ではないか,などと数学の専門家が見たらまたまた怒られそうなことを考えております(笑)
余談になりますが,私は,それ故に間違えて数学科に入学してしまったのです・・・入学後,一週間で自分に数学を学ぶ資格がないことに気付き,以降,ほとんど大学には行きませんでした
入学して卒業しましたが,間は通学しない・・・言ってみれば,キセルの反対,つまり,授業料は払うけれど利用しない,大学としては最も高コスパの学生でした
それでも卒業できる,という結構な時代でございました(笑)
今日のお題など,問題を解くために作られた問いの典型ではないでしょうか
二重根号を外す
それでは 1. から・・・
まずはですねぇ,\((\sqrt{3} + \sqrt{2})^2\) を計算してみましょう
(この何の脈絡もなく出てくる数字は一体何でしょう?)
まぁ,そう仰らず,兎に角計算しましょう! \[\begin{array}{l} (\sqrt{3} + \sqrt{2})^2\\= (\sqrt{3})^2 + 2\cdot \sqrt{3}\cdot \sqrt{2} + (\sqrt{2})^2\\=3 + 2\sqrt{6} + 2\\= 5 + 2\sqrt{6}\end{array}\] ねっ! 解けてしまうでしょ \[\sqrt{5 + 2\sqrt{6}} = \sqrt{3} + \sqrt{2}\] ただし,これで納得してはいけません,\(\sqrt{3}\) や \(\sqrt{2}\) はどこから来たんだ?と突っ込まなければ・・・
ただ,時には,このように逆から考えることが意外と役立つこともある・・・ということだけは覚えておきましょう
ということで(どういうこと?),次は \(\displaystyle \left(\sqrt{a\mathstrut} + \sqrt{b\mathstrut}\right)^2\) を計算します \[\begin{array}{rcl} \displaystyle \left(\sqrt{a\mathstrut} + \sqrt{b\mathstrut}\right)^2 &=& (\sqrt{a\mathstrut})^2 + 2\sqrt{a\mathstrut}\sqrt{b\mathstrut} + (\sqrt{b\mathstrut})^2 \\[2px] \displaystyle &=& a + b + 2\sqrt{ab\mathstrut}\end{array}\] ですから \[\sqrt{a + b + 2\sqrt{ab}} = \sqrt{a} + \sqrt{b}\] 二重根号が外れていますねぇ,\(\displaystyle \sqrt{5 + 2\sqrt{6}}\) と比較してみましょう
\(\displaystyle \sqrt{5 + 2\sqrt{6}}\) の二重根号を外すためには \[a + b = 5,\quad ab = 6\] つまり,足して \(5\),掛けて \(6\) になる(カッコ良く書くと「和が \(5\),積が \(6\) の」)2数を見つければイイことが分かります
これは,\(x^2 + 5x + 6\) を因数分解するときの考え方と似ていますね
足して \(5\),掛けて \(6\) ですから,\(3\) と \(2\)
それ故,\(\sqrt{3}\) と \(\sqrt{2}\) だったのですね
ここで,全然数学的でない,ゲームのマニュアル的注意!
足して \(5\),掛けて \(6\) って言ったとき,\(2\) と \(3\) と言ってはいけません,あくまでも \(3\) と \(2\) です
それでは,この問いのまとめ・・・形をしっかり覚えてください
\(\displaystyle \sqrt{5 + 2\sqrt{6}}\)・・・\(\sqrt{ }\) の中に \(\sqrt{ }\) があります
さらに,中の \(\sqrt{ }\) の前に \(2\) がついています(これが重要です!)
このとき,足して \(5\),掛けて \(6\) になる2数を見つけます
ここでは,\(3\) と \(2\)
この2数を使って,\(\displaystyle \sqrt{5 + 2\sqrt{6}} = \sqrt{3} + \sqrt{2}\)
\(\displaystyle \sqrt{8 - 2\sqrt{15}}\) マイナスになったら?
これは,当然 \(\displaystyle \left(\sqrt{a\mathstrut} - \sqrt{b\mathstrut}\right)^2\) の展開です \[(\sqrt{a\mathstrut} - \sqrt{b\mathstrut})^2 = a + b -2\sqrt{ab\mathstrut}\] だから \[\sqrt{a + b - 2\sqrt{ab}} = \sqrt{a} - \sqrt{b}\tag{1}\] です・・・ん~ん,ここでまた納得してはいけません
先ほど,「\(3\) と \(2\)」 を「\(2\) と \(3\)」と言っちゃいけない,と書いた理由がここにあります
\(a > b\) でしたら,\((1)\) で宜しいのですが,逆に \(a < b\) の場合には \(\sqrt{a} - \sqrt{b}\) の値が負になってしまいます
したがって,\((1)\) が成り立つためには,\(a > b\) という条件を付けておかなければいけません
そこで,計算するときには「大きい数→小さい数」の順に書く習慣をつけておきましょう,というお話しになるのです,分かりました?
以上,\(\sqrt{ }\) の中の符号が負になっているときの注意でした ^^
それでは,解答! \(\displaystyle \sqrt{8 - 2\sqrt{15}}\)
足して \(8\), 掛けて \(15\) になる2数は,\(5\) と \(3\)
ですから,\(\displaystyle \sqrt{8 - 2\sqrt{15}} = \sqrt{5} - \sqrt{3}\)
\(\sqrt{ }\) の前が \(2\) でなかったら?
\[\sqrt{9 - 4\sqrt{5}}\] この辺りは機械的に考えてOK,\(\sqrt{ }\) の前が \(2\) になるようにすればイイのです \[\sqrt{9 - 4\sqrt{5}} = \sqrt{9 - 2\sqrt{20}}\] そして,足して \(9\),掛けて \(20\) になる2数は,\(5\) と \(4\) です
したがって,\(\sqrt{9 - 4\sqrt{5}} = \sqrt{5} - \sqrt{4} = \sqrt{5} -2\)
4. の \(\sqrt{3 + \sqrt{5}}\) はもう少し複雑です \[\displaystyle \sqrt{3 + \sqrt{5}} = \frac{\displaystyle \sqrt{6 + 2\sqrt{5}}}{\sqrt{2}}\] という変形をします
足して \(6\),掛けて \(5\) となる2数は \(5\) と \(1\) ですから \[\begin{array}{l} \displaystyle \sqrt{3 + \sqrt{5}} \\[2px] \displaystyle = \frac{\displaystyle \sqrt{6 + 2\sqrt{5}}}{\sqrt{2}} \\[2px] \displaystyle = \frac{\sqrt{6}+ 1}{\sqrt{2}} \\[2px] \displaystyle = \frac{\sqrt{10} + \sqrt{2}}{2} \end{array}\]
数が大きくなったら?
最後は \(\displaystyle \sqrt{42 + 2\sqrt{377}}\)
これも,足して \(42\),掛けて \(377\) になる2数を見つけるだけなのですが・・・簡単に見つかりそうもありません
それでは,どうするか? です
2次方程式の解と係数の関係のところで触れたように,その本質は \[(x - \alpha)(x - \beta) = x^2 - (\alpha + \beta)x + \alpha\beta\] という式です
つまり,足して \(42\),掛けて \(377\) になる2数というのは,\(x\) の2次方程式 \[x^2 - 42x + 377 = 0\] の2つの解になっており,これを解くと \[x \begin{array}[t]{l} = 21 \pm \sqrt{441 - 377} \\[2px] = 21 \pm \sqrt{64} \end{array}\] お~っ! \(\sqrt{ }\) の中が平方数になりました \[x = 21 \pm 8 = 29,\> 13\] ですから \(\displaystyle \sqrt{42 + 2\sqrt{377}} = \sqrt{29} + \sqrt{13}\)
これで,目出度しめでたし…です
このようなとき,数学をやってる人は直ぐに
\(\displaystyle \sqrt{p \pm 2\sqrt{q}}\) の二重根号が外れる条件は?
などと言いたがります・・・それはそれで宜しいのですが,数学ができない私は,この2次方程式の \(\sqrt{ }\) の中が2乗になれば二重根号が外れるんだ,などと誤魔化しておきます!! 覚えなくちゃならないことは少ない方がイイので