本日のお題

\(1\) 弧度法を覚えましょう

\(2\) 一般角の場合に次の方程式・不等式を解きましょう

\((1)\) 方程式 \(\displaystyle \sin x = \frac{1}{2}\)

\((2)\) 方程式 \(\displaystyle \cos x = -\frac{\sqrt{3}}{2}\)

\((3)\) 不等式 \(\displaystyle \sin x \geqq \frac{\sqrt{3}}{2}\)

そろそろ三角比を終えて,三角関数に話題を進めようと思います

三角比と三角関数とでは,扱う科目が異なりますし,三角比は「図形と計量」という単元であり,三角関数はあくまで「関数」としての扱いをします
しかしながら,高校数学全体を復習しようとするならば,三角比と三角関数とを連続して学んだ方が効率が宜しいのは間違いのないところです

もっとも,学習は効率が全てではなく,敢えて非効率を選んだ方が理解しやすかったり,定着しやすかったりすることはよくあることです

ただし,ここでは \(sin\theta\)\(\cos\theta\)\(\tan\theta\) について一挙にやってしまいましょう

三角関数を学習するに当たっては,弧度法から始める場合が殆どです

小学校以来慣れ親しんだ「度数法」と異なる,角の大きさを表す新たな単位に出会うのです

弧度法

弧度法 は円周上の弧の長さが円の半径と等しくなるときの中心角を \(1\) とするものでで,ラジアン という単位を使います

下の図に描かれているのは,半径が \(r\) の円です。そして,緑色で描かれた角は,弧の長さが丁度半径と同じになるときの中心角です。この角が \(1\) ラジアン です。角度で言うと約 \(57.3°\) になります。また,ラジアン という単位は通常省略します。

半径が \(1\) の円(単位円といいます)では,弧の長さがそのまま角の大きさになります。この円の円周は「直径\(\times\pi\)」で \(2\pi\) です。

したがって,半周は \(\pi\) となり,次のことが言えます。

\(180° = \pi\)

このことを押さえておけば,\(\displaystyle \frac{\pi}{2}\)\(\displaystyle \frac{\pi}{3}\)\(\displaystyle \frac{\pi}{4}\) などがどのような角になるかは,それぞれ 半円周の \(\displaystyle \frac{1}{2}\)\(\displaystyle \frac{1}{3}\)\(\displaystyle \frac{1}{4}\) と考えれば分かります。\(90°\)\(60°\)\(45°\) のように角度に換算するのではなく,弧度法のままでどこの角かが分かるようにしましょう。

一般角

高等学校の数学の教科書では,三角関数の学習は弧度法の導入とともに一般角という概念の学習からスタートします

この概念は,度数法・弧度法に相対するものでなく,角を回転の向きと量で表すというものです

したがって,度数法の一般角も,弧度法の一般角もあります

例えば,上の図の径 \(\mbox{OP}\) は,度数法ならば \(315°\),弧度法ならば \(\displaystyle\frac{7\pi}{4}\) を表しています・・・と考えられます

しかし,この角を表す動径 \(\mbox{OP}\) は,左回りに回ってこの位置にきたのかもしれませんし(図中の青色の方の角),右回りに回ってこの位置に到着したのかもしれません(図中の赤色の方の角)

このように動径の回転で角の大きさを表すことを一般角といいます

もう少し具体的な話しをします

\(x\) 軸の正の部分の半直線を始線といいます

三角比の定義に単位円を用いたので,ここでも単位円周上を動く点 \(\mbox{P}\) を考えることにすると,点 \(\mbox{P}\) は最初点 \((1,\ 0)\) にあることになります

今,点 \((1,\ 0)\) には点 \(\mbox{A}\) という名前をつけることにします

動点の回り方には方向があって,時計の回り方と逆方向を正,時計の回り方と同じ方向を負といいます

もし,上の動径 \(\mbox{OP}\) が点 \(\mbox{A}\) を出発した後正の向きに回転してこの位置に止まったとしたら,この角は \(\displaystyle \frac{7}{4}\pi\) です

一方,負の向きに回ったとしたら,\(\displaystyle -\frac{\pi}{4}\) となります

それどころか,点 \(\mbox{A}\) を出発して正の向きに1周した後に更に \(\displaystyle \frac{7}{4}\pi\) だけ回ったのかもしれません,すると・・・\(\mbox{OP}\)\(\displaystyle \frac{15}{4}\pi\) を表します

というような角の測り方を一般角といいます


三角関数の定義

これは,話をヤヤコシクするためではありません

例えば \(f(x) = \sin x\) という関数を考えたとき,これまでどおりの角の考え方では,\(\sin x\) の定義域は \(0 \leqq x \leqq \pi\) に限定されてしまいますね

角の大きさを,動径の回転を考えた一般角にするとことで,実数全体に拡張することができるのです

三角比(\(0° \leqq \theta \leqq 180°\) の範囲で考えた)から三角関数へ定義を拡張しましょう

と言っても,定義そのものは何も変わらりません

三角関数の定義

原点を中心とする単位円周上を動く点 \(\mbox{P}\left(x_0,\ y_0\right)\) があるとします

動径 \(\mbox{OP}\)\(x\) 軸正の部分とのなす角が \(\theta\) であるとき,\[\sin\theta,\ \cos\theta,\ \tan\theta\]を次のように定義します\[\sin\theta = y_0,\ \cos\theta = x_0,\ \displaystyle \tan\theta = \frac{y_0}{x_0}\]

ねっ!角に範囲がなくなって実数全体になっただけで,それ以外は何も変わっていません

ですから,\(\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1\) などの公式も同様に成り立ちます

ただし,一般角を用いると,方程式や不等式の解が答えにくくなるのは事実です

具体的に,一般角を考えると方程式や不等式の解がどのように変わるかを,簡単な方程式・不等式で見ていくことにしましょう


方程式 \(\sin x = \displaystyle\frac{1}{2}\) の一般解

最初は,\(x\) の方程式 \(\sin x = \displaystyle \frac{1}{2}\) です

\(x\) の範囲は特に定められていない,つまり,実数全体です

\(\sin x = \displaystyle\frac{1}{2}\) を満たす動径は,上の図のように見た目で2つあります

これを実数全体ですべて求めなければいけないのです

そこで,まず,代表を求めることにします

第1象限と第2象限に1つずつありますね

それぞれの代表は,\(\displaystyle \frac{\pi}{6}\)\(\displaystyle\frac{5\pi}{6}\) と考えて宜しいですね

何周かしてこの位置に来てもイイので \[\begin{array}{c} x = \displaystyle \frac{\pi}{6} + 2n\pi,\quad \frac{5\pi}{6} + 2n\pi \\ (n = 0,\ \pm 1,\ \pm 2,\ \cdots ) \end{array}\] と書くことができ,これで OK です


洒落た書き方をしたい方は \[\begin{array}{c} x = (-1)^n\cdot\displaystyle\frac{\pi}{6} + n\pi \\ (n = 0,\ \pm 1,\ \pm 2,\ \cdots ) \end{array}\] と書けば,1つの式書き表すことができます・・・この書き方ってちょっとばかりカッコイイですね!!


方程式 \(\cos x = -\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) の一般解

解となる動径は,第2象限と第3象限に1つずつあるので,代表は \(\displaystyle \pm \frac{3\pi}{4}\) としましょう

代表は,必ずしも \(0 \leqq x < 2\pi\) である必要はありません

\(\cos\) の場合は,このように \(\displaystyle \pm\frac{3\pi}{4}\) を代表にすれば \[\begin{array}{c} x = \pm \displaystyle\frac{3\pi}{4} + 2n\pi \\(n = 0,\ \pm 1,\ \pm 2,\ \cdots ) \end{array}\] と書けます


不等式 \(\sin x \geqq \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) の一般解

最後は不等式です \(\sin x \geqq \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)

これも単位円を使って考えましょう

図を見れば,不等式を満たす \(x\) は,第1象限の代表と第2象限の代表との間ということが分かります

第1象限の代表は \(\displaystyle\frac{\pi}{3}\),第2象限の代表は \(\displaystyle \frac{2\pi}{3}\) と考えれば,図の中の赤色の部分を表すことに注意して \[\begin{array}{c} \displaystyle \frac{\pi}{3} + 2n\pi \leqq x \leqq \frac{2\pi}{3} + 2n\pi \\ (n = 0,\ \pm 1\ ,\pm 2\ ,\cdots ) \end{array}\]


一般角という考え方は,慣れるまでチョット大変ですが,頑張りましょう!!

練習問題

\(x\) を実数として,次の方程式・不等式の解を求めましょう!!

(1) \(2\sin^2 x \,- \sin x - 1 = 0\) 解答 隠す

(2) \(2\cos^2 x = 1\) 解答 隠す

(3) \(\tan^2 x \,- (1 + \sqrt{3})\tan x + \sqrt{3} = 0 \) 解答 隠す

(4) \(4\sin^2 x \,- 3 < 0\) 解答 隠す

(5) \(4\cos^2 x + 2(\sqrt{3} \,- 1)\cos x \,- \sqrt{3} \geqq 0 \) 解答 隠す

最終更新日時: 2021年 07月 25日(日曜日) 10:07