三角形の内角の二等分線・メネラウスの定理・チェバの定理
本日のお題
四角形 \(\mbox{ABCD}\) において,\(\mbox{AB} = 4\),\(\mbox{BC} = 2\) ,\(\mbox{DA} =\mbox{DC}\) であり,4つの頂点 \(\mbox{A}\),\(\mbox{B}\),\(\mbox{C}\),\(\mbox{D}\) は同一円周上にあります
対角線 \(\mbox{AC}\) と対角線 \(\mbox{BD}\) の交点を \(\mbox{E}\),線分 \(\mbox{AD}\) を \(2:3\)
の比に内分する点を \(\mbox{F}\),直線 \(\mbox{FE}\) と直線 \(\mbox{DC}\) の交点を \(\mbox{G}\) とします
\(1\quad\)線分 \(\mbox{AE}\) と \(\mbox{EC}\) の長さの比 \(\mbox{AE}:\mbox{EC}\) を求めましょう
\(2\quad\)線分 \(\mbox{DC}\) と \(\mbox{CG}\) の長さの比 \(\mbox{DC}:\mbox{CG}\) を求めましょう
\(3\quad\)直線 \(\mbox{AB}\) が点 \(\mbox{G}\) を通るとき,辺 \(\mbox{DC}\) の長さを求めましょう
2016年度の大学入試センター試験「数学I・数学A」の第5問からの出題です(少々古いですね
平面図形の問いを解く上で,基礎的な項目は次の3ではないか,と私は考えています
- 三角形の内角の二等分線と辺の比
- メネラウスの定理とチェバの定理
- 方べきの定理
実際,このお題は,この3項目を順に使って解くことができます
今日は,上2つの項目を確認しながら,お題の \(1\) と \(2\) を解いていきましょう
三角形の角の二等分線と辺の比
\(\triangle\mbox{ABC}\) において,\(\angle\mbox{A}\) の二等分線と辺 \(\mbox{BC}\) との交点を \(\mbox{D}\) とおくと\[\mbox{AB}:\mbox{AC} = \mbox{BD}:\mbox{DC}\]が成り立ちます

少々余計な話しをしますと,平面幾何の学習が高校の数学に組み入れられたのは,平成11年3月に公示された学習指導要領からです
この学習指導要領の運用が実際に始まったのが平成15年度
この年,私は高校3年生のみを担当しており,しかも,高校生を相手に数学の授業をしっかり行うことは,この年が最後になってしまいました
したがって,所謂平面幾何の指導は経験していないのです
ところが,三角形の角の二等分線の性質は,三角比やベクトルに関する問いを解くためにもマスト事項です
ですから,この性質は当然授業でサンザン扱ってきました
説明するのには,使うときのことを考え,面積比を用いて\[\begin{array}{l}\displaystyle \mbox{BD}:\mbox{DC} = \frac{1}{2}\mbox{AB}\cdot\mbox{AD}\sin\theta : \frac{1}{2}\mbox{AC}\cdot\mbox{AD}\sin\theta\\[2px](\theta
= \angle\mbox{BAD} = \angle\mbox{CAD})\end{array}\]というようなものを好んで使いました
ところが,平面幾何の学習となると,長さの比に関する証明に面積を持ち出すのは美しくない,と思えてしまいます(後に出てくるチェバの定理の証明には,やはり面積を用いるのですが・・・
教科書にも載っている定番が,やはり美しいのではないでしょうか?

まず,点 \(\mbox{C}\) を通って二等分線 \(\mbox{AD}\) に平行な直線を引き,次に,辺 \(\mbox{AB}\) の延長との交点を \(\mbox{E}\) とします・・・
と補助線が引ければ,あとは難しくありません
ここから先は,練習問題にしておきましょう
お題 \(1\) の解答

\(\mbox{AD} = \mbox{CD}\) ですから,弧 \(\mbox{AD}\) と弧 \(\mbox{CD}\) の円周角を考えると\[\angle\mbox{ABD} = \angle\mbox{ACD} = \angle\mbox{CAD} = \angle\mbox{CBD}\]したがって,線分 \(\mbox{BD}\) は \(\angle\mbox{ABC}\) の二等分線となり,\(\triangle\mbox{ABC}\) について\[\mbox{AE}:\mbox{EC} = \mbox{AB}:\mbox{BC} = 2:1\]が成り立ちます
メネラウスの定理
お題の \(2\) は特徴的な形をしています
テストなどに出題されてメネラウスの定理を使う場面というのは,比較的分かりやすいものです
入試のことを考えると,この形を見たら「メネラウス」と瞬間的に頭に浮かぶことが大切でしょう
メネラウスの定理
\(\triangle\mbox{ABC}\) と 直線が図のように交わっています
この直線と,辺 \(\mbox{AB}\),辺 \(\mbox{AC}\),辺 \(\mbox{BC}\) の延長との交点をそれぞれ \(\mbox{D}\),\(\mbox{E}\),\(\mbox{F}\) とします
すると,次の関係が成り立ちます\[\displaystyle \frac{\mbox{AD}}{\mbox{DB}}\cdot\frac{\mbox{BF}}{\mbox{FC}}\cdot\frac{\mbox{CE}}{\mbox{EA}}
= 1\]

メネラウスの定理も証明しましょう
点 \(\mbox{C}\) を通って辺 \(\mbox{AB}\) に平行な直線を引き,この直線と線分 \(\mbox{DF}\) との交点を \(\mbox{G}\) とおきます

すると,まず \(\triangle\mbox{FCG}\) と \(\triangle\mbox{FBD}\) に注目して,\(\triangle\mbox{FCG}\sim\triangle\mbox{FBD}\) から \(\displaystyle \frac{\mbox{BF}}{\mbox{FC}} = \frac{\mbox{BD}}{\mbox{CG}}\) が成り立ちます

次に,\(\triangle\mbox{ECG}\) と \(\triangle\mbox{EAD}\) に注目すると,\(\triangle\mbox{ECG}\sim\triangle\mbox{EAD}\) から \(\displaystyle \frac{\mbox{CE}}{\mbox{EA}} = \frac{\mbox{CG}}{\mbox{AD}}\) も成り立ちます
以上の二つを用いると,次の関係が成り立つことがわかります\[\begin{array}[t]{l} \displaystyle \frac{\mbox{AD}}{\mbox{DB}}\cdot\frac{\mbox{BF}}{\mbox{FC}}\cdot\frac{\mbox{CE}}{\mbox{EA}} \\ \displaystyle = \frac{\mbox{AD}}{\mbox{BD}}\cdot\frac{\mbox{BD}}{\mbox{CG}}\cdot\frac{\mbox{CG}}{\mbox{AD}} \\ = 1 \end{array}\]
お題 \(2\) の解答
\(1\) の結果とメネラウスの定理より\[\begin{array}{l} \displaystyle \frac{\mbox{AF}}{\mbox{FD}}\cdot\frac{\mbox{DG}}{\mbox{GC}}\cdot\frac{\mbox{CE}}{\mbox{EA}} = 1 \\ \displaystyle \frac{2}{3}\cdot\frac{\mbox{DG}}{\mbox{GC}}\cdot\frac{1}{2} = 1 \\ \mbox{∴}\quad \mbox{DG} = 3\mbox{GC} \\ \mbox{∴}\quad \mbox{DC}:\mbox{CG} = 2:1 \end{array}\]
チェバの定理
メネラウスの定理とセットで扱われるのが「チェバの定理」です
この証明は,練習問題にしておきますから,皆さんで考えてみてください
先ほど書いたように,面積比を用います
ただし,上手く証明できると,ちょっと感動ものです
チェバの定理
\(\triangle\mbox{ABC}\) の内部の点 \(\mbox{P}\) に対して,\(\mbox{CP}\) の延長と辺 \(\mbox{AB}\) との交点,\(\mbox{AP}\) の延長と辺 \(\mbox{BC}\) との交点,\(\mbox{BP}\) の延長と辺 \(\mbox{CA}\) との交点をそれぞれ点 \(\mbox{D}\),\(\mbox{E}\),\(\mbox{F}\) とおくと\[\displaystyle \frac{\mbox{AD}}{\mbox{DB}}\cdot\frac{\mbox{BE}}{\mbox{EC}}\cdot\frac{\mbox{CF}}{\mbox{FA}} = 1\]が成り立ちます

今回も,1回で完結できなかったので,次回へ To Be Contined!!