方べきの定理
本日(前回)のお題
四角形 \(\mbox{ABCD}\) において,\(\mbox{AB} = 4\),\(\mbox{BC} = 2\) ,\(\mbox{DA} =\mbox{DC}\) であり,4つの頂点 \(\mbox{A}\),\(\mbox{B}\),\(\mbox{C}\),\(\mbox{D}\) は同一円周上にあります
対角線 \(\mbox{AC}\) と対角線 \(\mbox{BD}\) の交点を \(\mbox{E}\),線分 \(\mbox{AD}\) を \(2:3\)
の比に内分する点を \(\mbox{F}\),直線 \(\mbox{FE}\) と直線 \(\mbox{DC}\) の交点を \(\mbox{G}\) とします
\(1\quad\)線分 \(\mbox{AE}\) と \(\mbox{EC}\) の長さの比 \(\mbox{AE}:\mbox{EC}\) を求めましょう
\(2\quad\)線分 \(\mbox{DC}\) と \(\mbox{CG}\) の長さの比 \(\mbox{DC}:\mbox{CG}\) を求めましょう
\(3\quad\)直線 \(\mbox{AB}\) が点 \(\mbox{G}\) を通るとき,辺 \(\mbox{DC}\) の長さを求めましょう

前回は,また,お題の最後を残してしまっていました
今日は,3番…「方べきの定理」に関する問いを考えましょう
上の図は,すでに辺 \(\mbox{AB}\) の延長が点 \(\mbox{G}\) を通るように描きなおしてありまして,見るからに「方べきの定理」を使いたくなります
正直に申しまして,私,メネラウスの定理・チェバの定理に比べると,方べきの定理はチョット苦手?なのです
と申しますのも,方べきの定理を使うシチュエーションを見逃してしまうことが結構あるのです
このようなことは,ある意味,慣れの問題だと思います
したがって,ある程度問題を解き込んで,それぞれの定理などを使う形を覚えてしまう必要があります
方べきの定理
方べきの定理は,直線と円の位置関係で3つのタイプに分けられます
いずれも,三角形の相似から導くことができて,私などは「相似比を使っているだけじゃないか。」という感じで捉えてしまうのですが,実は,これがいけないのです
苦手を作ってしまう原因と言えます・・・相似を見つけることは,実際の問題になると簡単なことばかりではありません
相似が見つからず,ドツボにハマ・・・これはかっこ悪いですよね
ですから,方べきの定理を使える形というのをしっかり理解すべきだと思います
それでは,お題で使うタイプから参りましょう
方べきの定理(その1)
円と円の外に点 \(\mbox{P}\) があり,図のように点 \(\mbox{P}\) から円と2点で交わる2本の直線を引く。2直線と円との交点をそれぞれ \(\mbox{A}\) と \(\mbox{B}\),\(\mbox{C}\) と \(\mbox{D}\) とすると\[\mbox{PA}\cdot\mbox{PB} = \mbox{PC}\cdot\mbox{PD}\]が成り立ちます

上術しましたように,証明には三角形の相似を用います
ですが,その前に,2つ三角形の相似を示すために,四角形が円に内接するための条件を使います
中学校で学習する内容ですから,ここでは敢えて証明しませんが,確認だけはしておきましょう
四角形が円に内接するための必要十分条件は
相対する内角の和が 180°である
これは,勿論「内角が相対する角の外角と等しい」としても構いません
さらに,必要十分条件ですから,角に関する条件が成り立つならば,この四角形は円に内接するということも言えます
このことを使って,方べきの定理を証明します
四角形 \(\mbox{ABDC}\) は円に内接するので,\[\angle\mbox{PAC} = \angle\mbox{PDB},\quad \angle\mbox{PCA} = \angle\mbox{PBD}\]が成り立ち,\(\triangle\mbox{PAC} \sim \triangle\mbox{PDB}\) ですから
\(\mbox{PA}:\mbox{PC} = \mbox{PD}:\mbox{PB}\) となって
\(\mbox{PA}\cdot\mbox{PB} = \mbox{PC}\cdot\mbox{PD}\) となります

お題3.の解答
2.の結果と併せて,\(\triangle\mbox{DAG}\) にチェバの定理を用いて\[\begin{array}{l} \displaystyle \frac{\mbox{DF}}{\mbox{FA}}\cdot\frac{\mbox{AB}}{\mbox{BG}}\cdot\frac{\mbox{GC}}{\mbox{CD}} = 1 \\ \displaystyle \frac{3}{2}\cdot\frac{\mbox{AB}}{\mbox{BG}}\cdot\frac{1}{2} = 1 \\ \displaystyle \frac{\mbox{AB}}{\mbox{BG}} = \frac{4}{3} \end{array}\]これより,\(\mbox{GA}:\mbox{GB} = 3:7\),また,\(\mbox{CD} = x\) とおくと,\(\displaystyle \mbox{GC} = \frac{x}{2}\),\(\displaystyle \mbox{GD} = \frac{3x}{2}\) となるので,方べきの定理を用いて\[\begin{array}{l} \displaystyle \frac{3x}{2}\times \frac{x}{2} = 7\times 3 \\ x = 2\sqrt{7}\end{array}\]
方べきの定理は変身する
上で,方べきの定理は3つのタイプに分けられるとかきました
つまり,方べきの定理は,直線が円に接したり,点 \(\mbox{P}\) が円の内部に入ったりすることにより変身するのです
(その2)(その3)の更に2つのタイプを見ておきましょう
方べきの定理(その2)
円と円の外に点 \(\mbox{P}\) があり,図のように点 \(\mbox{P}\) から円に接する直線と2点で交わる直線とを引きます
接線と円との接点を \(\mbox{A}\),円と2点で交わる直線と円との交点をそれぞれ \(\mbox{C}\) と \(\mbox{D}\) とすると\[\mbox{PA}^2 = \mbox{PC}\cdot\mbox{PD}\]が成り立ちます

※これは(その1)の点 \(\mbox{A}\) と点 \(\mbox{B}\) とが重なった場合と考えられます
方べきの定理(その3)
円と円の内部に点 \(\mbox{P}\) があり,図のように点 \(\mbox{P}\) を通って円と2点で交わる2本の直線を引きます
2直線と円との交点をそれぞれ \(\mbox{A}\) と \(\mbox{B}\),\(\mbox{C}\) と \(\mbox{D}\) とすると\[\mbox{PA}\cdot\mbox{PB} = \mbox{PC}\cdot\mbox{PD}\]が成り立ちます

※これは(その1)の点 \(\mbox{P}\) が円の内部にある場合と考えられます