メネラウスの定理・チェバの定理とつり合い
本日のお題
メネラウスの定理とチェバの定理をモーメントから考えましょう
よく分からないお題です
個人的な思い出話しから始めても宜しいでしょうか? ― OKという返事も待たずに始めますが
私が30歳頃のことです
同じ歳の同僚が,かつて物理担当の先輩から聞いたと言って,こんな話しをしてくれました
ベクトルでよくある問題。
平面上に3点 \(\mbox{O}\),\(\mbox{A}\),\(\mbox{B}\) があり,辺 \(\mbox{OA}\) を \(2:1\) に内分する点を \(\mbox{C}\),辺 \(\mbox{OB}\) を \(1:2\) に内分する点を \(\mbox{D}\) とし,さらに線分 \(\mbox{AD}\) と \(\mbox{BC}\) の交点を \(\mbox{P}\) とします
このとき,\(\overrightarrow{\mbox{OP}}\) を \(\overrightarrow{\mbox{OA}}\) と \(\overrightarrow{\mbox{OB}}\) で表しましょう

「数学の教員は,この問題にモーメントを使おうとは思わないだろうが,モーメントを使うとアッと言う間に解けてしまう」とのことでした
このページをご覧の方の中には,ベクトルをまだ学んでいない方もいらっしゃかもしれませんので,ここではベクトルの話しは避けます
要は,メネラウスの定理やチェバの定理と関係していて,下の図の \(\mbox{AE}:\mbox{EB}\) や \(\mbox{OP}:\mbox{PE}\) などの比の値が簡単に求められるという話しなのです

これは,二つの定理で解けますね
やってみましょう
まずはチェバの定理です\[\frac{\mbox{OC}}{\mbox{CA}}\cdot\frac{\mbox{AE}}{\mbox{EB}}\cdot\frac{\mbox{BD}}{\mbox{DO}} = 1\\[8px]\frac{2}{1}\cdot\frac{\mbox{AE}}{\mbox{EB}}\cdot\frac{2}{1} = 1\\[8px]∴ \frac{\mbox{AE}}{\mbox{EB}} = \frac{1}{4}\\[8px]∴ \mbox{AE}:\mbox{EB} = 1:4\]
さらに,メネラウスの定理を用いて\[\frac{\mbox{OC}}{\mbox{CA}}\cdot\frac{\mbox{AB}}{\mbox{BE}}\cdot\frac{\mbox{EP}}{\mbox{PO}} = 1\\[8px]\frac{2}{1}\cdot\frac{5}{4}\cdot\frac{\mbox{EP}}{\mbox{PO}} = 1\\[8px]∴ \displaystyle \frac{\mbox{EP}}{\mbox{PO}} = \frac{2}{5}\\[8px]∴ \mbox{OP}:\mbox{PE} = 5:2\]
てこの原理とモーメント
てこの原理は,小学校6年生と中学校3年生の理科で学習します
下の図は,てこではありませんが,考え方は同じです
棒の \(\mbox{A}\) 点と \(\mbox{B}\) 点に錘がつけられていて,\(\mbox{C}\) 点を支点としてつり合っています
\(\mbox{AC}:\mbox{BC} = 1:3\) のとき,錘の重さの比はどうなっているでしょうか?

つり合いの中心(支点)の左右で,
が等しくなっているのでした
ですから,この場合は
が成り立ちます
もっとも,棒の重さは0と考えなければなりませんが
モーメントを使って問題を解きましょう
下の画面に図をコマ送りで表示しながら,\(\mbox{AE}:\mbox{EB}\) と \(\mbox{OP}:\mbox{PE}\) の求め方を説明します

重さがないので,物理的な意味での重心は,この時点で考えることはできません
そこで,点 \(\mbox{P}\) が重心となるように,各頂点 \(\mbox{A}\),\(\mbox{B}\),\(\mbox{C}\) に錘をつけることにします
説明を見ると長く感じるかもしれませんが,慣れてくるとほぼ瞬間的に求められるようになります
数学と物理は内容的に重なりが多く,相互に応用できるようになると,覚えなければならないことが少なくなって効率的です
練習問題
前々回のお題の1.と2.を,モーメントを用いて解いてみましょう
四角形 \(\mbox{ABCD}\) において,\(\mbox{AB} = 4\),\(\mbox{BC} = 2\) ,\(\mbox{DA} =\mbox{DC}\) であり,4つの頂点 \(\mbox{A}\),\(\mbox{B}\),\(\mbox{C}\),\(\mbox{D}\) は同一円周上にあります
対角線 \(\mbox{AC}\) と対角線 \(\mbox{BD}\) の交点を \(\mbox{E}\),線分 \(\mbox{AD}\) を \(2:3\) の比に内分する点を \(\mbox{F}\),直線 \(\mbox{FE}\) と直線 \(\mbox{DC}\) の交点を \(\mbox{G}\) とします
- 線分 \(\mbox{AE}\) と \(\mbox{EC}\) の長さの比 \(\mbox{AE}:\mbox{EC}\) を求めましょう
- 線分 \(\mbox{DC}\) と \(\mbox{CG}\) の長さの比 \(\mbox{DC}:\mbox{CG}\) を求めましょう
解答は省略します