軌跡
本日のお題
次の点 \(\mbox{P}\) の軌跡を求めましょう
- 2点 \(\mbox{A}(1,\ 0)\) と \(\mbox{B}(0,\ 2)\) からの距離が等しい点 \(\mbox{P}\)
- 点 \(\mbox{A}(5,\ 0)\) があり,点 \(\mbox{Q}\) が原点を中心とし半径 \(2\) の円周上を動くとき,線分 \(\mbox{AQ}\) を \(1:2\) に内分する点 \(\mbox{P}\)
- \(m\) が実数であるとき,2直線 \(mx - y + m = 0\) と \(x + my - 1 = 0\) の交点 \(\mbox{P}\)
2定点からの距離が等しい点の軌跡
前回,前々回と,外心を扱ってきたので,垂直二等分線の求め方については理解できていますね
2定点からの距離が等しい点の軌跡は,2定点を結ぶ線分の垂直二等分線です
もう今さらという感じはしますが,念のために下のアプレットで確認しておきましょう
スライダーを動かすと,赤い点 \(\mbox{P}\) が \(\mbox{AP} = \mbox{BP}\) を満たしながら動き,「残像を表示する」にチェックすると点 \(\mbox{P}\) の残像を表示します
\(y\)
\(x\)
残像を表示する
それでは,点 \(\mbox{P}\) が描く軌跡の方程式を求めましょう
軌跡の問題では,1行目に書くことがほぼ決まっています
点 \(\mbox{P}\) の座標を \((x,\ y)\) とおく
この言葉から始まり
2点 \(\mbox{A}(1,\ 0)\) と \(\mbox{B}(0,\ 2)\) からの距離が等しい
を \(\mbox{AP} = \mbox{BP}\) という関係式に書き換えて,さらにこの式を \(x\) と \(y\) とで表します
そのとき,長さや距離は2乗して考えるというのが鉄則です\[\begin{array}{l} \mbox{AP} = \mbox{BP} \\[2px] \mbox{AP}^2 = \mbox{BP}^2 \\[2px] \left(x - 1\right)^2 + y^2 = x^2 + \left(y - 2\right)^2 \\[2px] ∴\quad 2x - 4y + 3 = 0 \end{array}\]
軌跡の方程式を求める問いでは,式の変形が必要十分であるか?に注意する必要があります
上から下は大丈夫だけど,下から上が OK かということです
求めた方程式の表す図形からある部分が抜けているということは,よくあります
得られた式の表す図形について,すべての点が条件を満たしているとは限らないということです
つまり,それぞれの式変形が同値変形か? を確認するということです
この問いで気になるのは,「\(\mbox{AP}^2 = \mbox{BP}^2\ \Rightarrow\ \mbox{AP} = \mbox{BP}\)」が言えるかですが,\(\mbox{AP}\geqq 0,\ \mbox{BP}\geqq 0\) ですから モーマンタイ ですね
以上から,点 \(\mbox{P}\) の軌跡は,直線 \(2x - 4y + 3 = 0\) であると求められました
アポロニウスの円
2. の問いも,まず,図を示してイメージをつかみましょう
操作の仕方は,前問と同じです
\(y\)
\(x\)
残像を表示する
この問いの特徴(前問との違い)は,動点が2つあるということ
点 \(\mbox{Q}\) が円周上を動き,\(\mbox{AP}:\mbox{BP} = 1:2\) で関連付けられた点 \(\mbox{P}\) の動きを考えるというものです
点 \(\mbox{P}\) の座標を \(\mbox{P}(x,\ y)\) とおくことは変わりません
もう一つの動点 \(\mbox{Q}\) の座標も決めましょう \(\mbox{Q}(u,\ v)\) や \(\mbox{Q}(s,\ t)\) などとおくことが多いので,ここでは \(\mbox{Q}(u,\ v)\) としましょう
そうしますと,問いの条件から次の2組の式が得られます
まず,点 \(\mbox{Q}\) が \(x^2 + y^2 = 4\) 上を動くので\[u^2 + v^2 = 4 \tag{1}\]
点 \(\mbox{P}\) は,線分 \(\mbox{AB}\) を \(1:2\) に内分しますから\[\displaystyle x = \frac{10 + u}{3},\ y = \frac{v}{3} \tag{2}\]
\((2)\) から\[u = 3x - 10,\ v = 3y\]となるので,\((1)\) に代入して\[\begin{array}{l} (3x - 10)^2 + (3y)^2 = 4 \\ \displaystyle \left(x - \frac{10}{3}\right)^2 + y^2 = \left(\frac{2}{3}\right)^2 \end{array}\]
ここまでの変形は同値な変形ですから,点 \(\mbox{P}\) の軌跡は,点 \(\displaystyle \left(\frac{10}{3},\ 0\right)\) を中心として半径 \(\displaystyle \frac{2}{3}\) の円の全体となります
直行する2直線の交点
3. のような問いにこそ,PCを使いたいものです
本当は,下に与えられたものではなく,自分で式を入力して表示させたいのです
PCやスマホに GeoGebra が入っている方は,ぜひ自分で式を入れて図を動かしてみてください
下の図は,少々工夫がしてあります
\(m = \tan\theta\) として \(\theta\) を \(-90°\)から \(90°\)まで変化させています
その方が,\(m = 0\) 近辺の動きが自然になるので・・・問いを考える上では,全然関係ないことですが
\(y\)
\(x\)
残像を表示する
図の動きを見て気づきましたか?\[\begin{eqnarray} && mx - y + m = 0 \tag{3} \\[4px] && x + my - 1 = 0 \tag{4} \end{eqnarray}\]\((3)\) と \((4)\) の2つの直線は直交しています
式を見れば
\((3)\) は,\( y = m(x + 1)\) となり,点 \((-1,\ 0)\) を通って傾き \(m\) の直線です
\((4)\) は,\(m \ne 0\) のとき \(\displaystyle y = -\frac{1}{m}(x - 1)\) となり,点 \((1,\ 0)\) を通って傾き \(\displaystyle -\frac{1}{m}\) の直線です
2直線の傾きの積が \(\displaystyle m\cdot\left(-\frac{1}{m}\right) = -1\) となるので,2直線は直交しています
しかも,2直線はそれぞれ定点を通っていますから,2直線の交点は,2定点 \((-1,\ 0)\) と \((1,\ 0)\) を直径の両端とする円周上,つまり原点を中心とする単位円周上を動いていることが分かります
ところが,そのように言われなければ,なかなか気づけません
そこで,このような問いに対してどのように考えればよいか・・・を少し話します
これは,媒介変数表示された図形なのです
えっ?と思ったかもしれません
\((3)\) と \((4)\) を連立すると,\(1 + m^2 \ne 0\) ですから\[\displaystyle x = \frac{1 - m^2}{1 + m^2},\quad y = \frac{2m}{1 + m^2}\]これで,媒介変数と考えられることが分かります
そうなれば,ここから \(m\) を消去するのは鉄則です
ただし,ちょっと待ってください
ここまで変形して \(m\) を消去するのならば,上の \((3)\) と \((4)\) から直接 \(m\) を消去して,\(x\) と \(y\) の式を導いた方が早いですね
それでは,\((3)\) と \(4)\) を \(m\) について整理して\[\begin{eqnarray} && (x + 1)m - y = 0 \tag{5} \\[4px] && ym + (x - 1) = 0 \tag{6} \end{eqnarray}\]\((5) \times y - (6) \times (x + 1)\) より\[\begin{array}{l} -y^2 - (x - 1)(x + 1) = 0 \\[4px] x^2 + y^2 = 1 \end{array}\]ですから,点 \(\mbox{P}\) の軌跡は,原点を中心とする単位円です
この問いのイヤラシイところは,円全体ではないということ
最初に描いた図を見れば分かるように,\((5)\) と \((6)\) は,それぞれ \(x = -1\) と \(y = 0\) を表すことができません
また,\(\displaystyle x = \frac{1 - m^2}{1 + m^2} = -1 + \frac{2}{1 + m^2}\) と変形しても,\(x \ne -1\) であることが分かります
いずれにしても,点 \(\mbox{P}\) は,点 \((-1,\ 0)\) を通りません
以上から,点 \(\mbox{P}\) の軌跡は,原点を中心とする単位円のうち点 \((-1,\ 0)\) を抜いた部分となります
お分かりいただけたでしょうか?
ある図形が媒介変数表示されているとき,この図形を表す \(x\) と \(y\) の方程式は,媒介変数を消去して求めることができます
媒介変数を消去するタイミングは,その計算ができる限り容易なとき
ところで,実は \(\displaystyle x = \frac{1 - m^2}{1 + m^2},\quad y = \frac{2m}{1 + m^2}\) となったところで,この式が表す図形は円だと分かります…三角関数と関連して
その話しは,いずれいたしましょう
今日のお話しは,ここまでといたします