2直線の交点を通る直線
本日のお題
\(k\) を実数の定数であるとし,直線\[(k + 2)x - (k -1)y - k - 5 = 0 \tag{1}\]を考えるとき,この直線が,\(k\) の値にかかわらず定点を通ることを示しましょう
「平面幾何」から「図形と式」に入って4回目,取り上げたいテーマが幾つかあります
どの順で話すのが良いか? そのようなことを考えつつ,今日のお題を選んでいます
話しの流れからすると,前回「軌跡」の3番とかかわりがあります
そして,放物線や円にも広がっていく話題です
\(k\) の値にかかわらず通る点があるというので,実際に直線を描いてみましょう
前回と同様に,GeoGebra をお持ちの方は GeoGebra で描いてみてください
下に GeoGebra への入力の仕方を示します
\(k = 1\) と入力して,スライダーを作ります |
\((k + 2)x - (k -1)y - k - 5 = 0\) と入力します |
すると \(k = 1\) のときの直線が表示されます |
\(k\) のスライダーを動かして直線の動きを見ます |
同じ動きをする図を表示しておきます(自分で描くから意味があるのですが f^^;)
\(x\)
\(y\)
画面の右上に表示されている数字が \(k\) の値です
確かに,\(k\) の値にかかわらず1つの点を通っていて,その点の座標はどうやら \((2,\ 1)\) のようです
この点がどのような点なのか? なぜ定点を通るのか? これを考えるのが今日のお題です
\(k\) の値にかかわらず となっているので,\(k\) に関して方程式 \[(k + 2)x - (k - 1)y - k - 5 = 0 \tag{1}\]が恒等的に成り立っているということです
まず,式 \((19\) を \(k\) について整理することから始めましょう\[2x + y - 5 + k(x - y - 1) = 0 \tag{2}\]となります
ということは \(2x_0 + y_0 - 5 = x_0 - y_0 - 1 = 0\) を満たす \((x_0,\ y_0)\) があれば,どのような \(k\) に対しても\[2x_0 + y_0 - 5 + k(x_0 - y_0 - 1) = 0\]が成り立つことになります
ところで,点 \((x_0,\ y_0)\) は2直線\[2x + y - 5 = 0,\quad x - y - 1 = 0\]の交点です
したがって,直線 \((k + 2)x - (k -1)y - k - 5 = 0\) は,2直線\[2x + y - 5 = 0,\quad x - y - 1 = 0\]の交点である点 \((2,\ 1)\) を必ず通ります
さて,逆のことは成り立つのでしょうか? つまり,点 \((2,\ 1)\) を通る直線はすべて方程式 \((1)\) で表すことができるか? 更に言い換えると,方程式 \((1)\) は点 \((2,\ 1)\) を通るすべての直線を表しているか? ということです
上の図では,\(k\) の値を \(-10\) から \(10\) まで変化させています
点 \((2,\ 1)\) を通る直線を概ね表していそうな気がします・・・が,これだけでは分かりません
最初からグレーで引かれている2本の直線は,\(2x + y - 5 = 0\) と \(x - y - 1 = 0\) です
この2本の直線について考えると,\(2x + y - 5 = 0\) は方程式 \((1)\) の \(k = 0\) の場合です
問題は \(x - y - 1 = 0\) を表せるか? です
結論を言ってしまうと,表すことはできません
なぜなら,方程式 \((2)\) を見れば,この式の \(k\) がど~んなに頑張っても \(x - y - 1 = 0\) になることはないからです
これで,逆が成り立たないことは分かりました
さらに,\(x - y - 1 = 0\) 以外の直線について考えると,方程式 \((1)\) は,点 \((2,\ 1)\) を通る直線のうち,傾き \(\displaystyle \frac{k + 2}{k - 1}\) の直線及び \(x = 2\) を表します\[\frac{k + 2}{k - 1} = 1 + \frac{3}{k - 1}\]ですから,傾き \(1\) すなわち \(x - y - 1 = 0\) 以外の直線を表せることが分かります
一般的に次のことが言えます
2つの直線の交点を通る直線
\(k\) を実数の定数として,\(x\) と \(y\) の一次式\[ax + by + c + k(a'x + b'y + c') = 0\]は,2直線 \(ax + by + c = 0\) と \(a'x + b'y + c' = 0\) の交点を通る直線のうち,\(a'x + b'y + c' = 0\) を除くものを表す
これを踏まえて,前回のお題の3番をもう一度見ます
前回のお題 3.
\(m\) が実数であるとき,2直線 \(mx - y + m = 0\) と \(x + my - 1 = 0\) の交点 \(\mbox{P}\) の軌跡を求めましょう
\(mx - y + m = 0\) は \(m(x + 1) - y = 0\) となって,\((-1,\ 0)\) を通る直線のうち \(x = -1\) を除くものを表します
\(x + my - 1 = 0\) は \(x - 1 + my = 0\) となって,\((1,\ 0)\) を通る直線のうち,\(y = 0\) を除くものを表します
したがって,点 \((-1,\ 0)\) の除かれることが分かります
次に,応用的な問題を1つ
例題
2直線 \(2x + 3y - 1 = 0\) と \(5x - 4y - 2 = 0\) の交点を通る直線のうち,点 \((1,\ 1)\) を通るものの方程式を求めましょう
上のことを使うと,題意の直線の方程式は\[2x + 3y - 1 + k(5x - 4y - 2) = 0 \tag{3}\]とおくことができます
点 \((1,\ 1)\) を代入すると,\(k = 4\) を得るので,\((3)\) に \(k = 4\) を代入して\[22x - 13y - 9 = 0\]2直線の交点を求めようとすると,分数になって計算がかなり面倒なものになります