不等式の表す領域
本日のお題
次の不等式\[(x + y - 1)(x^2 + y^2 - 1) > 0\]が表す領域を図示しましょう
今日は不等式の表す領域を考えます
私事ですが,私はモノグサな人間です
簡単に済むことはできる限り簡単に済ませたいと考えます
沢山の事柄を覚えるのも嫌です
ですから,不等式といったら,どんな不等式でも同じように考えたい・・・ということで,2次不等式の話しから始めます
不等式の解法に関する考察
私は,2次不等式を解くとき,高校生にも大学生にも「グラフを描こう」と話します\[x^2 - 2x - 3 > 0\]この不等式ならば \((x - 3)(x + 1) > 0\) と因数分解して下のグラフを描きます

\(x\) 軸の上側を見て \(x < -1,\ 3 < x\) という解を得えます
勿論,自分でも,このように解きます
このように解いていると信じ切っています
でも,ホントかな? と疑ってしまうこともあります
解が分かっていて,グラフを描いているのでは・・・というような気のすることがあるのです
どういうことかと言うと,例えば,3次不等式\[x^2(x - 1) < 0\]を解くとき

このようなグラフを描いて \(x < 0,\ 0 < x < 1\) という解を求めます
しかし・・・何故,このグラフが描けるのでしょう?
その疑問から,自分の頭の中を分析してみました
2次でも,3次でも,多項式の不等式ならば,まず,因数分をしようとします
\(x\) と \(y\) の2変数の場合でも同じです
これは如何なる行為なのでしょうか?
零点を求めている
\(0\) は正の数と負の数の間にあります
つまり,正の数の国と負の数の国とを分ける境界です
当然,境界を越えれば隣りの国に入ります

数直線上に零点が2つあったとします
それを \(x = \alpha\) と \(x = \beta\) とすると,2つの零点により,数直線は3分割されます
シツコク言います・・・境界の向こう側は別の国です
このとき,例えば \(x < \alpha\) の部分が正の国の領土であれば,それぞれの国の領土(\(+\) と \(-\) で表します)は,下の図のように分割されます

\(x < \alpha\) の部分が負の国の領土であれば,数直線は

とそれぞれの国の領土に分割されます
ただし,例外があります
\((\mbox{・・・})^2\) となったところなどは,零点であっても,境界ではありません
超えても,隣りの国に入ることはできないのです
何故なら、この零点の右と左では符号が変化しないからです
上記のようなイメージをもっています
ですから \(y = x^2(x - 1)\) のグラフを

と描くことができる・・・のではないでしょうか?
自分の頭の中ほど分からないものはないのです!!
不等式を解けない学生さんと話していると,「\(0\) になるところは見つけられても,その後,符号を決めることができない」という方が少なからずいます

そのような方は,例えば \(x = 2\) のように具体的な値を式に代入すれば,その値が正と負のどちらの国に入るかが分かります
ただし私は,計算嫌いのモノグサですから,次のように考えます
\(x = 1\) の右側には境界がないので,\(x\) の値がとても大きい部分の符号を求めます
\(x^2(x - 1) > 0\) ですから,右から順に +→0→-→0→- と領土分けができます
ノートに描くときには、色付きの領土図は効率が悪いので,\(+\) を \(x\) 軸の上に,\(-\) を \(x\) 軸の下になるようにグラフを描きます
グラフは効率よく描け,しかも見やすいものですから
以上のように考えているような気がします
\(x\) と \(y\) の不等式が表す領域
次は,\(x\) と \(y\) の2元の不等式です\[x + y > 1\]を考えましょう
2変数の不等式の領域は,平面上に描くことになりますが,その求め方は上と同じです
与式を\[x + y - 1 > 0\]と変形して,左辺の零点 \(x + y - 1 = 0\) を考えます
これが正の国と負の国を分ける境界です
ここで,式 \(x + y - 1\) に原点 \((0,\ 0)\) を代入すると,\(x + y - 1 = -1 < 0\) となって「原点を含む領域は負の国であり,原点を含まない領域が正の国である」と分かります
あるいは,\(x\) と \(y\) が共に大きな数,つまり右上の方は正の国であると考えることもできます

このことが理解できましたら,次はこれです\[x^2 + y^2 < 1\]与式を \(x^2 + y^2 - 1 < 0\) と変形すると,左辺の零点は \(x^2 + y^2 = 1\),原点を中心とする単位円です
この円が,正の国と負の国を分ける境界です
不等式の表す領域はこの円の内側か外側か? 原点 \((0,\ 0)\) は負の国にあるので,円の内側が負の国ということになります・・・簡単ですね

最後に,不等式\[(x + y - 1)(x^2 + y^2 - 1) > 0\]の表す領域です
左辺の零点は\[x + y = 1,\quad x^2 + y^2 = 1\]となるので,領域の境界を図示すると下の図のようになります

円と直線によって平面が4分割されています
この4分割されたそれぞれの部分が,正の国の領土か,負の国の領土かの領土分けをします
\(x\) も \(y\) も大きい,つまり右上は正の国ですから,「境界を越えたら隣りの国」と併せて考えば,この不等式の表す領域を下図のように描くことができます

練習問題
次の不等式が表す領域を図示しよう。
- \(y \geqq x^2 + x + 1\)
- \(y < \sqrt{x - 1}\quad (x \geqq 1)\)
- \((x + 2y + 1)(2x - 3y - 5) < 0\)
- \((x + y - 2)(x^2 + y^2 - 4) \leqq 0\)
- \(|\, x + y \,| < 1\)
※解答は GeoGebra で確認してください
因みに、このページの図は全て GeoGebra で描いています
勿論、不等式が表す領域も、すべて、式を入力して描いたものです