本日のお題

実数 \(x\)\(y\) について,\(x^2 + 4y^2 = 4\) が成り立つとき,\(x + y\) のとり得る値の範囲を求めましょう

前回「領域における最大・最小」の中に出てきた問いです
図形と式 というカテゴリーからは少々外れるところもありますが,様々な解き方ができるという点で興味深い問いです

判別式を利用しましょう

\(x + y = k\) とおいて,\(y = -x + k\)\(x^2 + 4y^2 = 4\) に代入します \[\begin{array}{l} x^2 + 4(-x + k)^2 = 4 \\[2px] 5x^2 - 8kx + 4(k^2 - 1) = 0 \end{array}\]\(x\) は実数ですから,判別式をとると \[D/4 \begin{array}[t]{l} = 16k^2 - 20(k^2 - 1) \geqq 0 \\[2px] \qquad k^2 - 5 \leqq 0 \\[2px] \mbox{∴}\quad -\sqrt{5} \leqq k \leqq \sqrt{5} \end{array}\] したがって,\(x + y\) のとり得る値の範囲は \[-\sqrt{5} \leqq x + y \leqq \sqrt{5}\]

前回,図を用いて,領域における最大・最小を考えましたので,ここでも図を用いることにします

\(x^2 + 4y^2 = 4\) は だ円 を表しています

したがって,\(x + y = k\) とおいて,この方程式の表す直線がこのだ円と共有点をもてば,条件 \(x^2 + 4y^2 = 4\) の下で \(k\) はその値をとれることになります

少々工夫して,条件を円の方程式にしましょう

\(X = x\)\(Y = 2y\) とおくと,\(x^2 + 4y^2 = 4\)\(X^2 + Y^2 = 4\) となり,この条件の下で \(\displaystyle X + \frac{1}{2}Y\) のとり得る値の範囲を考えれても題意を違えません

\(\displaystyle X + \frac{1}{2}Y = k\) とおいて,円 \(X^2 + Y^2 = 4\) と 直線 \(2X + Y - 2k = 0\) が共有点をもつような \(k\) の値の範囲を求めれば宜しいので,中心から直線に下した垂線の長さと半径とを比較して

\[\begin{array}{l} \displaystyle \frac{|\,-2k\,|}{\sqrt{5}} \leqq 2 \\[2px] \mbox{∴}\quad -\sqrt{5} \leqq k \leqq \sqrt{5} \end{array}\]

媒介変数を使うこともできます

\(x^2 + 4y^2 = 4\) は媒介変数 \(\theta\) を使って \[x = 2\cos\theta,\ y = \sin\theta\quad(0 \leqq \theta < 2\pi)\] と書くことができます \[x + y \begin{array}[t]{l} = 2\cos\theta + \sin\theta \\[2px] = \sqrt{5}\cos(\theta - \alpha) \end{array}\]

\(\hspace{3em} -1 \leqq \cos(\theta - \alpha) \leqq 1\) ですから \[-\sqrt{5} \leqq x + y \leqq \sqrt{5}\] \(\cos\) の合成を使いました
勿論,\(\sin\) で合成しても結構です

ベクトルの内積を使いましょう

ここまでは,条件を だ円 または 円 の方程式と見なした解答でした
ある意味親戚と言えます
あと2つの解答を示しますが,これは今までと少々異なるものです
まず,ベクトルの内積を使います \[\vec{a\mathstrut} = (2,\ 1),\quad \vec{b\mathstrut} = (x,\ 2y)\] とおいて,さらに,2つのベクトルなす角を \(\theta\) とします

\(\vec{a\mathstrut}\)\(\vec{b\mathstrut}\) の内積 \(\vec{a\mathstrut}\cdot\vec{b\mathstrut}\) を考えます

\(\vec{a\mathstrut}\cdot\vec{b\mathstrut} = 2x + 2y = \sqrt{5}\cdot\sqrt{x^2 + 4y^2}\cdot\cos\theta\)

したがって \(|\,2x + 2y\,| = 2\sqrt{5}\cdot |\,\cos\theta\,|\)

\(0 \leqq |\,\cos\theta\,| \leqq 1\) だから

\(|\,x + y\,| \leqq \sqrt{5}\)

コーシー・シュワルツの不等式を使いましょう

上の解答とほぼ同じにはなりますが・・・

コーシー・シュワルツの不等式

\[(ax + by)^2 \leqq (a^2 + b^2)(x^2 + y^2)\]

この不等式の証明は,右辺から左辺を引いて \(0\) 以上を示す外,上のようにベクトルを使ってもできることが分かりますね

この不等式を用いると \[(x + y)^2 \begin{array}[t]{l}\displaystyle \leqq \left\{1 + \left(\frac{1}{2}\right)^2\right\}(x^2 + 4y^2) \\[2px] \displaystyle = \frac{5}{4}\cdot 4 = 5 \end{array}\] したがって \(-\sqrt{5} \leqq x + y \leqq \sqrt{5}\)

1つの問題を色々な角度から見ると,問いの見え方が違ってきます

Last modified: Tuesday, 12 April 2022, 2:14 PM