関数の極限と微分係数
本日のお題
1 次の式が成り立つように,定数 \(a\) と \(b\) の値を定めましょう. \[\lim_{x \to 1} \frac{x^2 + ax + b}{x - 1} = 3\]
2 次の極限値を,関数 \(f(x)\) の \(x = a\) における微分係数 \(f'(a)\) で表しましょう.\[\lim_{h \to 0}\frac{f(a + 3h) - f(a - h)}{h}\]
高校で学ぶ微分積分は,厳密性に欠けています.と書いている私こそ,数学の厳密なところはさっぱり分かりません.分かっているのは,数学者を名乗る世の中の一握りどころか一つまみにも足らない先生方のみです.気にせず適当にやりましょう.
したがって,いつもどおりに「何となく分かる」や「ちょっと納得しちゃったかも?」を大切にしていきましょう.
まずは,お題の1です.「分からない」と言うより「知らない」方は,「え~?こんな式で \(a\) や \(b\) が決まるの?」と考えるかもしれません.当然です.でも,ここで覚えてしまえば大丈夫ですよ.ポイントは
不定形
なる言葉です.不定形というのは,分数の形で分子も分母も \(0\) に近づいてしまう,分子も分母も無限大に発散してしまうというような形です.挙げると
不定形とは・・・
\[\frac{0}{0},\quad \frac{\infty}{\infty},\quad \infty - \infty,\quad 0 \times \infty\]
などの形になる極限を不定形といいます.
そして,不定形に関して
関数 \(f(x)\) について,\(f(a)\) が明らかにある値をとる場合を除けば,\(x \to a\) のときに有限値の極限をもつためには,不定形になっていなければならない.
が成り立ちます.これ,感覚的に分かりますよね.
このことを用いて,解答を作りましょう.
【解答】
関数 \(\displaystyle \frac{x^2 + ax + b}{x - 1}\) について \(x \to 1\) のとき,分母である \(x - 1 \to 0\) より,この関数が極限値 \(3\) をもつためには\[\lim_{x \to 1} \left(x^2 + ax + b\right) = 0\]でなければなりません.したがって\[\begin{array}{l} 1^2 + a \cdot 1 + b = 0 \\ ∴\quad b = -a - 1 \end{array}\]が成り立ちます.与式に \(b = -a - 1\) を代入します.\begin{eqnarray*} & & \lim_{x \to 1} \frac{x^2 + ax - a - 1}{x - 1} = 3 \\ & & \lim_{h \to 1} \frac{x^2 - 1 + a(x - 1)}{x - 1} = 3 \\ & & \lim_{x \to 1} \frac{(x - 1)(x + 1 + a)}{x - 1} = 3 \\ & & \lim_{x \to 1}(x + 1 + a) = 3 \\ & & ∴\quad 2 + a = 3 \\ & & ∴\quad a = 1,\quad b = -2 \end{eqnarray*}
続いて2に参りましょう.これは,微分係数・導関数の定義が分かっていますか?を問う問題です.「定義に従って微分せよ.」では,当たり前過ぎますし,何よりマーク式の試験ではその出題ができません.言ってみれば,その代わりとなる問題です.
微分係数の定義・導関数の定義
\[f'(a) = \lim_{h \to 0}\frac{f(a + h) - f(a)}{h} \\ f'(x) = \lim_{h \to 0} \frac{f(x + h) - f(x)}{h}\]この問題で,ポイントなる点は2つあります.1つ目は,微分係数にせよ導関数にせよ,平均変化率の極限であるということです.したがって,上の定義式において,分母にある \(h\) と分子の式に含まれる \(h\) とが一致していれば,すべて同じ極限値になります.どういうことかと言いますと\[\lim_{h \to 0}\frac{f(a + 2h) - f(a)}{2h} \\ \lim_{h \to 0} \frac{f(a - h) - f(a)}{-h} \\ \lim_{h \to 0} \frac{f(a - \frac{h}{3}) - f(a)}{\frac{h}{3}}\]これらは,すべて \(f'(a)\) に等しいということです.
2つ目のポイントは,高校で学ぶ微分積分に限らず,微分積分学ではよく使われる変形があります.解答をしながら説明しましょう.
【解答】\begin{eqnarray*} & & \lim_{h \to 0}\frac{f(a + 3h) - f(a - h)}{h} \tag{1} \\ & = & \lim_{h \to 0} \frac{f(a + 3h) \textcolor{red}{- f(a) + f(a)} - f(a - h)}{h} \end{eqnarray*}同じ式を足して引く,逆に引いて足す,掛けて割るという場合もあります.いずれにしても,このような変形が所々に現れます.\[(1) = \lim_{h \to 0}\left\{\frac{f(a + 3h) - f(a)}{h} - \frac{f(a - h) - f(a)}{h} \right\}\]ですから,後は,上で見たように \(h\) の部分を平均変化率になるように工夫すれば宜しいのです.\begin{eqnarray*} (1) & = & \lim_{h \to 0} \left\{\frac{f(a + 3h) - f(a)}{3h}\times 3 - \frac{f(a - h) - f(a)}{-h}\times (-1) \right\} \\ & = & f'(a) \times 3 - f'(a) \times (-1) \\ & = & 4f'(a) \end{eqnarray*}となりまして,ミッション完了です.