3点で決まる平面・三角形の面積・四面体の体積
今日のお題
空間に3点 \(\mbox{A}(2,\ 1,\ 4)\),\(\mbox{B}(-1,\ 2,\ 1)\),\(\mbox{C}(3,-2,\ 3)\) があります.
(1) 3点 \(\mbox{A}\),\(\mbox{B}\),\(\mbox{C}\) を通る平面の方程式を求めましょう.
(2) 三角形 \(\mbox{ABC}\) の面積を求めましょう.
(3) 四面体 \(\mbox{OABC}\) の体積を求めましょう.
(1) から参りましょうか.平面の方程式ですから\[ax + by + cz + d = 0 \tag{1}\]とおいて,3点の座標を代入しましょう.\[2a + b + 4c + d = 0 \\[4px] -a + 2b + c + d = 0 \\[4px] 3a - 2b + 3c + d = 0\]ですね.未知数が4つに式が3つ・・・決まらないじゃないか! と慌ててはいけませんよ.等式 \((1)\) は,各係数の比さえ決まれば,数値は無数に出てくるのですから.\(a\),\(b\),\(c\) を \(d\) で表すのが良いでしょう.では皆さん,頑張って解いてくれたまえ.私は,計算しても絶対に合わないので,maxima 先生に解いていただきます.\[a = \frac{5}{3}d,\quad b = d,\quad c = -\frac{4}{3}d\]となります.じゃなくて,なるそうです(笑).そうしましたら,得られた解を \((1)\) に代入します.\[\frac{5}{3}dx + dy - \frac{4}{3}dz + d = 0 \\[12px] ∴ \quad 5x + 3y - 4z + 3 = 0\]となります.
続いて,(2) です.三角形の面積の公式は沢山あります.その中でも\[S_{\triangle\mbox{ABC}} = \frac{1}{2} \times \mbox{AB} \times \mbox{AC} \times \sin\angle\mbox{BAC}\]は重要です.ここから,ベクトルの内積と \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) を考え合わせれば
ベクトルによる三角形の面積
\[S_{\triangle\mbox{ABC}} = \frac{1}{2}\sqrt{\left( \left| \vec{\mbox{AB}} \right| \left| \vec{\mbox{AC}} \right| \right)^2 - \left( \vec{\mbox{AB}}\cdot \vec{\mbox{AC}} \right)^2}\]
であることを暗算でも導くことができます.\(\vec{\mbox{AB}} = (-3,\ 1,-3)\),\(\vec{\mbox{AC}} = (1, -3, -1)\) ですから\[\mbox{AB}^2 = 19,\quad \mbox{AC}^2 = 11,\quad \vec{\mbox{AB}} \cdot \vec{\mbox{AC}} = -3 \\[4px] ∴ \quad S_{\triangle\mbox{ABC}} = \frac{1}{2}\sqrt{19 \cdot 11 - 9} = \frac{1}{2}\sqrt{200} = 5\sqrt{2}\]
最後に四面体の体積です.三角形 \(\mbox{ABC}\) のある平面は,ベクトル \((5,\ 3,-4)\) に垂直です.そこで,原点 \(\mbox{O}\) からこの平面に下した垂線の足を \(\mbox{H}(x_0,\ y_0,\ z_0)\) とおくと,\(t\) を実数として\[(x_0,\ y_0,\ z_0) = t(5,\ 3,-4)\]と書けるので,これを \((1)\) に代入します.すると\[25t + 9t + 16t + 3 = 0 \\[4px] ∴ \quad t = -\frac{3}{50}\]が得られます.よって\[\mbox{OH} = \frac{3}{50}\sqrt{5^2 + 3^2 + (-4)^2} = \frac{3\sqrt{2}}{10}\]以上から,四面体 \(\mbox{OABC}\) の体積 \(V\) は\[V = \frac{1}{3} \cdot 5\sqrt{2} \cdot \frac{3\sqrt{2}}{10} = 1\]と求められます.
下にヘッセの標準形を用いた解答を載せておきましたが,私は,まず,この解法をしっかり身に付けていただきたいと思います.ベクトルに関して重要な要素を含んでいると考えるからです.逆説的な言い方ですが,上の解法がしっかり身に付くと自然にヘッセの標準形を使った下の解法ができるようになります.
点 \(\mbox{O}\) から平面に下した垂線 \(\mbox{OH}\) の長さを求めるためには,ヘッセの標準形を用いるという方法があります.ヘッセの標準形は,平面上である点から直線に下した垂線の長さを求める式と,ほとんど同じなので覚えておく価値があります.使える場面もかなりある筈です.
ヘッセの標準形
空間の点 \(\mbox{A}(x_0,\ y_0,\ z_0)\) から平面 \(ax + by + cz + d = 0\)に下した垂線の足を \(\mbox{H}\) とすると\[\mbox{AH} = \frac{|\,ax_0 + by_0 + cz_0 + d\,|}{\sqrt{a^2 + b^2 + c^2}}\]が成り立ちます.
証明は,上で \(\mbox{OH}\) を求めた方法でできます.一般化するだけで,難しいものではありません.読んでくださっている皆さんにお任せしたいと思います.
これを使うと,このお題では\[\mbox{OH} = \frac{|\,3\,|}{\sqrt{5^2 + 3^2 + (-3)^2}} = \frac{3}{5\sqrt{2}}\]を求めることができます.なお,平面の場合のヘッセの標準形について こちら に掲載してあります.