本日のお題

平面上の三角形 \(\mbox{ABC}\) において,辺 \(\mbox{AB}\)\(2 : 1\) に内分する点を \(\mbox{D}\),辺 \(\mbox{AC}\)\(2 : 3\) に内分する点を \(\mbox{E}\) とし,線分 \(\mbox{BE}\) と線分 \(\mbox{CD}\) の交点を \(\mbox{P}\) とします.また,\(\vec{\mbox{AB}} = \vec{\mathstrut a}\)\(\vec{\mbox{AC}} = \vec{\mathstrut b}\) とします.

(1) \(\vec{\mbox{AP}}\)\(\vec{\mathstrut a}\)\(\vec{\mathstrut b}\) とで表しましょう.

(2) さらに,線分 \(\mbox{AP}\) の延長と辺 \(\mbox{BC}\) との交点を \(\mbox{Q}\) とするとき,\(\mbox{BQ}:\mbox{QC}\) の比を求めましょう.

ベクトルの定番問題から始めましょう.参考書などに載っている解答は\[\mbox{BP}:\mbox{PE}= (1 - t):t\, \quad \mbox{CP}:\mbox{PD} = (1 - s):s\]とおくところから始まります.これは,原点を \(\mbox{O}\) として,直線 \(\mbox{AB}\) のベクトル方程式が\[\vec{\mbox{OP}} = \vec{\mbox{OA}} + t\vec{\mbox{AB}} = (1 - t)\vec{\mbox{OA}} + t\vec{\mbox{OB}}\]と表されることに由来するものです.人それぞれ好みがあるので,どのようなやり方でも構わないのですが,私はこれが好きではないのですね.本質的には全く変わらないので,同じじゃないかと言われてしまいますけれど.

3点 \(\mbox{A}\)\(\mbox{B}\)\(\mbox{C}\) が同一直線上にないとき,\(\vec{\mbox{AP}} = s \vec{\mbox{AB}} + t \vec{\mbox{AC}}\) を満たす点 \(\mbox{P}\) が直線 \(\mbox{BC}\) 上にあるための必要十分条件は,\(s + t = 1\) である

こちらを使いたいのです.本質的に同じであっても,こちらの方が応用の範囲が広いと考えています.

解答

\(\vec{\mbox{OP}} = s \vec{\mathstrut a} + t \vec{\mathstrut b}\) とおきます.\[\vec{\mbox{AP}} = \frac{3}{2}s \left( \frac{2}{3} \vec{\mathstrut a} \right) + t \vec{\mathstrut b} = s \vec{\mathstrut a} + \frac{5}{2} t \left( \frac{2}{5} \vec{\mathstrut b} \right)\]と書くことができ,点 \(\mbox{P}\) は線分 \(\mbox{CD}\) と線分 \(\mbox{BE}\) の上にあります.したがって\[\frac{3}{2} s + t = 1\ ,\quad s + \frac{5}{2} t = 1\]が成り立ち,これを解くと\[s = \frac{6}{11}\ ,\quad t = \frac{2}{11}\] となります.よって\[\vec{\mbox{AP}} = \frac{6}{11}\vec{\mathstrut a} + \frac{2}{11} \vec{\mathstrut b}\]です.さらに,\[\vec{\mbox{AP}} = \frac{8}{11}\frac{6\vec{\mathstrut a} + 2\vec{\mathstrut b}}{8} = \frac{8}{11} \frac{3 \vec{\mathstrut a} + \vec{\mathstrut b}}{4}\]と変形できますから \(\displaystyle \vec{\mbox{AQ}} = \frac{3 \vec{\mathstrut a} + \vec{\mathstrut b}}{4}\) となり,\(\mbox{BQ}:\mbox{QC} = 1 : 3\) であることも分かります.

この種の問題は,メネラウスの定理やチェバの定理を使った方が早いと言われます.ん~!確かに! しかしまぁ,この問いは,ベクトルの演習として大切なものですから.そこんとこヨロシク!

ヨロシク!などと締めくくってしまいましたが,書き忘れておりました.この反対も解きたいのですよ.つまり.三角形 \(\mbox{ABC}\) と次の式\[\vec{\mbox{AP}} = \frac{1}{3}\vec{\mbox{AB}} + \frac{1}{2}\vec{\mbox{AC}}\]が与えられたとき,点 \(\mbox{P}\) の位置を知りたいということです.これも簡単にできちゃいますよ.\[\vec{\mbox{AP}} = \frac{5}{6}\cdot\frac{2 \vec{\mbox{AB}} + 3 \vec{\mbox{AC}}}{5}\] \[\vec{\mbox{AP}} = \frac{1}{2}\left(\frac{2}{3}\vec{\mbox{AB}}\right) + \frac{1}{2}\vec{\mbox{AC}}\] \[\vec{\mbox{AP}} = \frac{1}{3}\vec{\mbox{AB}} + \frac{2}{3}\left(\frac{3}{4}\vec{\mbox{AC}}\right)\]と変形すれば,点 \(\mbox{P}\) が何処にあるかは一目瞭然です.

( ) 内の数値はそれぞれの比を表しています.ここまでは,図をまったく描きませんでした.それには意図がありまして,ベクトルを用いると式だけで図形の処理ができることを知っていただきたいと思ったからです.勿論,問題を解くに当たり図を描くことは良いことです.

Last modified: Monday, 9 October 2023, 3:28 AM