2直線の平行・垂直と2直線のなす角
本日のお題
1 点 \(\mbox{A}\left( 1, 2 \right)\) を通って,直線 \(2x + 3y + 1 = 0\) に平行な直線と垂直な直線の方程式を求めましょう.
2 2直線 \(3x - y - 2 = 0\) と \(x - 2y + 1 = 1\) のなす角を求めましょう.
3 2直線 \(y = mx + n\) と \(y = m'x + n'\) のなす角が \(30^{\circ}\) であるとき,\(m\) を \(m'\) で表しましょう.ただし \(m > m'\),\(m' < \sqrt{3}\) とします.
直線の傾きと \(x\) 軸とのなす角
直線 \(y = mx + n\) と \(x\) 軸とのなす角を \(\theta\) とするとき,\(m = \tan \theta\) が成り立ちます.
2直線 \(y = mx + n\) と \(y = m'x + n'\) が平行,垂直になる条件が
平行 \(\Leftrightarrow\ m = m'\), 垂直 \(\Leftrightarrow\ mm' = -1\)
であることはご存じでしょう.平行の条件は兎も角として,垂直の条件を確認しておきたいと思います.数学の教科書では,直角三角形を使って説明することが多いと思いますが,お題を解く準備として三角比を使って説明したいと思います.
2直線 \(y = mx + n\),\(y = m'x + n'\) が \(x\) 軸の正の方向となす角をそれぞれ \(\theta\),\(\theta '\) とします.ただし,このとき \(-90^{\circ} < \theta < 90^{\circ}\),\(-90^{\circ} < \theta ' < 90^{\circ}\) の範囲で \(\theta\) と \(\theta '\) をとります.2直線が垂直になる条件は \(\displaystyle \left|\, \theta - \theta ' \,\right| = 90^{\circ}\) です.この両辺のコサインをとりましょう.\[\cos\left(\theta - \theta '\right) = 0\\[4px] \cos\theta \cos\theta' + \sin\theta \sin\theta ' = 0 \\[4px] \sin\theta \sin\theta ' = - \cos\theta \cos\theta '\]が成り立ち,2直線はともに \(x\) 軸に垂直ではありませんから,\(\cos\theta \ne 0\),\(\cos\theta' \ne 0\) です.したがって\[\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\cdot \frac{\sin\theta '}{\cos\theta '} = -1 \quad ∴ \quad \tan\theta \tan \theta ' = -1\]が成り立ち,\(mm' = -1\) となります.
お題1の解答
直線 \(2x + 3y + 1 = 0\) は \(\displaystyle y = -\frac{2}{3}x - \frac{1}{3}\) と変形できますから,傾きは \(\displaystyle -\frac{2}{3}\) です.2直線の平行・垂直条件から,平行な直線の傾きは \(\displaystyle -\frac{2}{3}\)であり,垂直な直線の傾きは \(\displaystyle \frac{3}{2}\) です.よって,直線 \(2x + 3y + 1 = 0\) に平行な直線の方程式は\[y - 2 = -\frac{2}{3}(x - 1) \quad ∴ \quad 2x + 3y - 8 = 0\]垂直な直線の方程式は\[y - 2 = \frac{3}{2}(x - 1) \quad ∴ \quad 3x - 2y + 1 = 0\]となります.
俺は \(a(x - x_0) + b(y - y_0) = 0\) と \(b(x - x_0) - a(y - y_0) = 0\) の公式を知ってるぜ! という向きもいらっしゃると思います.私は,覚えることはできるだけ少なくという主義です.単に楽をしたいというのが信条なだけですが.この種の問いに対しては,ベクトルを使います.ですから,上の式は,覚えようとしなくても自然に出てきます.という意味では,私の記憶の中に公式として入っていません
そうは言っても,入試では,穴埋めでどうしても傾きを考えなければならない問いが出題されることがあります.また,傾きで考えたいという方もいらっしゃるでしょう.随分間をおいて書きはじめた理由もそこにあります.
お題2の解答
2直線 \(3x - y - 2 = 0\) と \(x - 2y + 1 = 1\) の傾きはそれぞれ \(3\) と \(\displaystyle \frac{1}{2}\) です.したがって\[\tan\theta = 3,\quad \tan\theta ' = \frac{1}{2}\]とおいて,\(\theta - \theta '\) を求めれば良いことになります.\[\begin{eqnarray*} \tan(\theta - \theta ') & = & \frac{\tan\theta - \tan\theta '}{1 + \tan\theta \tan\theta '} \\[4px] & = & \frac{3 - \frac{1}{2}}{1 + 3\cdot \frac{1}{2}} = 1 \end{eqnarray*}\]おやおや随分簡単な値になりましたねぇ.ということは \(45^{\circ}\) ですね.
三角方程式や三角不等式と同様に,問題が限定されます.タンジェントの値から角の値を求められる場合が限定されるからです.このことは,2直線のなす角に限らず,とても不便なことです.大学以上では,\(\tan\theta = t\) となる \(\theta\) の値を表すとき,\(\tan\) の逆関数である \(\tan^{-1}\)(アークタンジェントと読みます)を使うことになります.\(\theta = \tan^{-1}t\) のように書きます.本来,タンジェントは \(1:1\) の対応でなく,逆関数が存在しない筈です.そこを,\(-90^{\circ} < \theta < 90^{\circ}\) に限定して,\(1:1\) の対応にします.特に,大学の理系学部に入学する方は,4月のうちに物理などで下の逆三角関数を目にすることになるでしょう.
\[\begin{array}{lclc}\sin\theta = t & \Longleftrightarrow & \theta = \sin^{-1}t & \quad\left(-\frac{\pi}{2} \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{2}\right) \\[4px] \displaystyle \cos\theta = t & \Longleftrightarrow & \theta = \cos^{-1}t & \quad\left(0 \leqq \theta \leqq \pi \right) \\[4px] \displaystyle \tan\theta = t & \Longleftrightarrow & \theta = \tan^{-1}t & \quad\left(-\frac{\pi}{2} < \theta < \frac{\pi}{2}\right) \end{array} \]
お題3の解答
\(\tan\theta = m\),\(\tan\theta ' = m'\) として \(\tan(\theta - \theta ') = \tan 30^{\circ}\) になる条件を求めれば宜しいということになります.\[\frac{m - m'}{1 + mm'} = \frac{1}{\sqrt{3}} \\[4px] mm' - \sqrt{3}\,m = -\sqrt{3}\,m' - 1 \\[4px] m(m' - \sqrt{3}) = -(\sqrt{3}\, m' + 1)\]\(m' < \sqrt{3}\) ですから,\(m' \ne \sqrt{3}\) であり \[\quad m = -\frac{\sqrt{3}\,m' + 1}{m' - \sqrt{3}}\]が得られます.