法線ベクトル
本日のお題
1 平面の2直線 \(2x - y = 1\) と \(x + 3y = 1\) のなす角を求めましょう.
2 空間の点 \((1, 1, 1)\) を通っての2平面 \(x - y + z = 1\) と \(x + 3y + 2z = 2\) に垂直な平面の方程式を求めましょう.
法線ベクトル
点 \(\mbox{A}\left( x_0, \ y_0 \right)\) を通って,ベクトル \(\vec{\mathstrut n} = \left( a, \ b \right)\) に垂直な直線の方程式を考えましょう.下図のように \(\mbox{P}\left( x, \ y \right)\) をとります.
すると,点 \(\mbox{P}\) が直線上にあるための必要十分条件は「点 \(\mbox{P}\) が点 \(\mbox{A}\) に一致する.または\(\vec{\mbox{AP}}\) が \(\vec{\mathstrut n}\) に垂直である.」です.まとめると\[\vec{\mathstrut n} \cdot \vec{\mbox{AP}} = 0 \tag{1}\]と同値です.\(\vec{\mathstrut n} = \left( a, \ b \right)\) と \(\vec{\mbox{AP}} = \left( x - x_0,\ y - y_0 \right)\) を \((1)\) に代入すると
が現われました.逆に見れば,直線 \(ax + by + c = 0\) はベクトル \(\vec{\mathstrut n} = \left( a,\ b \right)\) に垂直であるとなります.直線や平面に垂直なベクトルを直線又は平面の 法線ベクトル といいます.
この議論は,空間の平面についても同様に成り立ちますから,点 \(\mbox{A}\left( x_0,\ y_0, z_0 \right)\) を通る,法線ベクトル \(\vec{\mathstrut n} = \left( a,\ b,\ c \right)\) である平面の方程式は
となります.
平面の直線に対しても,空間の平面に対しても,法線ベクトルは無限に存在します.向きは決まっていませんし,長さも決まっていません.その点は注意しましょう.
お題1の解答
2直線\[2x - y = 1,\quad x + 3y = 1\]は,それぞれ \(\vec{\mathstrut n_1} = \left( 2,-1 \right)\) と \(\vec{\mathstrut n_2} = \left( 1,\ 3 \right)\) に垂直です.したがって,2直線のなす角と \(\vec{\mathstrut n_1}\) と \(\vec{\mathstrut n_2}\) のなす角は一致します.一つ注意していただきたいのは,2直線のなす角は,通常 \(0^{\circ}\) から \(90^{\circ}\) までの角で答えますから,2ベクトルのなす角が \(90^{\circ}\) を超えた場合は \(180^{\circ} - \theta\) で答えることとします(勿論,\(90^{\circ}\) から \(180^{\circ}\) の角を答えても,間違えとは言えません).「一致する」と書いたのは,その意味も含めています.そこで,\(\vec{\mathstrut n_1}\) と \(\vec{\mathstrut n_2}\) のなす角を \(\theta\) とすると\[\vec{\mathstrut n_1} \cdot \vec{\mathstrut n_2} = \left| \vec{\mathstrut n_1} \right| \left| \vec{\mathstrut n_2} \right|\,\cos\theta \\[4px] \cos\theta = \frac{2\cdot 1 - 1\cdot 3}{\sqrt{4 + 1}\sqrt{1 + 9}} = -\frac{1}{\sqrt{2}}\\[4px] ∴ \quad \theta = 135^{\circ}\]よって,2直線のなす角は \(45^{\circ}\) です.
お題2の解答
まず,2つのベクトル \(\vec{\mathstrut n_1} = (1, -1,\ 1)\) と \(\vec{\mathstrut n_2} = (1,\ 3,\ 2)\) は,それぞれ平面 \(x - y + z = 1\),\(x + 3y + 2z = 2\) に垂直です.\[\vec{\mathstrut n_1}\cdot\vec{\mathstrut n_2} = 1 - 3 + 2 = 0\]となり,\(\vec{\mathstrut n_1} \perp \vec{\mathstrut n_2}\) が成り立ちます.したがって,2平面 \(x - y + z = 1\) と \(x + 3y + 2z = 1\) が垂直であると示されました.
続いて,\(\vec{\mathstrut n} = (a,\ ,\ b,\ c)\) として,\[\vec{\mathstrut n_1} \cdot \vec{\mathstrut n} = a - b + c = 0 \\ \vec{\mathstrut n_2} \cdot \vec{\mathstrut n} = a + 3b + 2c = 0\]が成り立っているとします.すると\[\frac{a}{5} = b = -\frac{c}{4}\]となるので,ベクトル \((5,\ 1,-4)\) は,2つのベクトル \(\vec{\mathstrut n_1}\) と \(\vec{\mathstrut n_2}\) 垂直です.よって,題意の平面の方程式は\[5(x - 1) + (y - 1) - 4(z - 1) = 0 \\[4px] ∴\quad 5x + y - 4z = 2\]となります.